のうがく図鑑

第51巻

ペットの皮膚の火事を消すために

獣医学科
阿野 仁志 助教

 私は宮崎大学農学部獣医学科で獣医内科学研究室の「教員」として勤務していますが、同時に農学部附属動物病院の「獣医師」として動物の診療業務も行っており、主に犬や猫の皮膚病を専門として診察しています。
 人と同様に、皮膚病は動物でも頻繁に起きる病気で、特に皮膚炎は多くの動物とそのご家族を悩ませる病気であると言えるかと思います。
 ひとくちに皮膚炎と言ってもその原因はアトピー、細菌感染、カビ、寄生虫、腫瘍や薬物など様々で、毛が抜けたり、皮膚が赤くなる、フケが増えたり色々な病変が見られますし、痒くなったり痛みが出る場合もあります(図1)。

 
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図1 皮膚病の犬の1例


 皮膚炎はその名の通り、皮膚が「火事」を起こして燃えている状態によく例えられますが、その火事を止めるには火事を消すこと、火事が燃え広がる炎症ならぬ延焼を防ぐことが必要です。
 私たちの仕事は皮膚の火事となる色々な原因を突き止め(診断)、その火事を消す(治療)ことが中心です。それに加え、原因をより詳しく調べるために皮膚炎の原因となるアレルゲンを調べる検査法や(図2)、皮膚炎を起こす菌を培養してその正体を明らかにしたり(図3)、より効果的に治療するために培養した皮膚炎の原因菌に対する薬の効きやすさ、効きにくさを詳しく調べる薬剤感受性検などについても研究してきました(図45)。

 
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図2 アレルゲンに反応するか調べる検査

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  図3 皮膚にいる酵母菌の培養検査


 
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図4 抗真菌薬に対する感受性試験1

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図5 抗真菌薬に対する感受性試験2


 また、最近では皮膚の表面にもともと存在している細菌や酵母菌などが皮膚を守り、皮膚のコンディションを保っていることが知られるようになってきました。私たちも動物の皮膚炎を治療するだけでなく、皮膚に常在している細菌や酵母菌のバランスや、その回復などに注目して診療、研究に取り組んでいます。
 細菌が皮膚炎を起こすこともありますが、一方、常在菌は色々な物質を分泌し、皮膚のpHや皮膚の持つバリア機能を保ってくれ、皮膚に付着してくるより悪質な菌類等が皮膚に定着したり、アレルゲンが侵入して病気を起こさせることを防ぐといった役割を持っています。実際に常在菌が変化した皮膚炎の犬を前述の検査を行いながら治療を続けている例もあります(図6)。

 
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図6 皮膚炎治療中の犬の例


 このように、私たちは動物たちとともに時にはなかなか治らない病気に悩み、苦しみながら、時には元気になってブンブンと尻尾を振ってくれる姿に勇気付けられながら日々動物の病気に向かい合っています。


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