のうがく図鑑

第56巻

食や生活習慣と健康を"科学的"に見るオモシロさ

応用生物科学科
小川 健二郎 准教授
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 皆さんは毎日「健康」と向き合う時間がありますか?「肌が荒れやすい」とか「風邪をすぐこじらせやすい」といった健康の問題、若い方なら「カッコいいスタイルになりたい」など体づくりでも良いです。健康は財産であり、歳を重ねると失われて初めて大切さに気付きます。そんな貴重な「健康」をより長く保つために、日々生活で何に気を付けたらよいでしょうか?
 "科学"や"研究"と聞くと「難しい学問」と感じるかもしれませんが、実際は日常生活の素朴な興味や疑問を探求する"オモシロイこと"です。私は幼少期から視力が低く、アトピー体質で肌荒れがひどいのが悩みでした。でもお陰で自分の体に合わない食べ物や、逆に体調が良くなる食べ物を経験的に学べましたし、他にも紫外線の浴びすぎやシャンプー、整髪料の使用を控えれば皮膚炎もかなり落ち着くと気づきました。そんな風に、身の回りの食や環境が体に及ぼす影響を"科学的"に分析すれば、誰でもより健康的な生活を得られるようになります。

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図1.身体を構成し守る食の力で病気を減らす

 大学院に進学した私は、目に良いと言われるブルーベリーを研究しました。あの独特の紫色が「アントシアニン」というポリフェノール成分で、目に良いと信じられてきました。そこで、他にも"ベリー"と呼ばれる果実を集めて分析装置で成分を調べてみたのです。すると、アントシアニンと一言で言っても様々な種類があり、果実毎で特色があり、特に目のサプリメントでよく使用するブルーベリー(正式名、ビルベリー)にはアントシアニンの種類も量も多く、抗酸化力も高いという特徴がありました。だからサプリメントの原料として使用されているのですね。

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図2.学生時代に調べた10種類のベリー系果実とアントシアニン分析の結果

 健康のためには、「目に良い要因」と同時に「目に悪い原因」も研究します。よくゲームやパソコン、スマートフォンが目に悪いと言われますが、これらは目の筋肉の不調による視力低下を引き起こします。一方であまり意識されない紫外線やブルーライトは、目の病気に繋がります。私は様々な光刺激が目に及ぼす影響を調べるとともに、目を守る食品としてビルベリーを調べましたが、確かに光刺激による細胞ダメージが減少しました。このように、食品の成分を調べたり、健康を害する環境要因を研究したりすると、自分自身の日常生活でも役立つのでとてもオモシロいものです。これが"科学"や"研究"の醍醐味ではないでしょうか。

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図3.青色光は本当に目に悪いのか?細胞実験で調べている様子

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図4.光刺激が目に及ぼす影響と、食品成分による目の健康作用

 因みに、私は高校や大学では勉強ができない方でした。ただ、健康や食品への興味関心は強く、気持ちだけで大学院まで進学して、より深く食品機能を研究したいと願った結果、今は"研究者"になり毎日充実しています。"科学"や"研究"は身近な存在ですから、誰でも始めればきっとそのオモシロさを感じていただけると信じています。ぜひ、一緒に研究しましょう!


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