2006.6.2
宮崎地域文化研究会ニューズレター(第11号)
§第11回研究会報告
2006年5月20日10時30分より、宮崎県における年少者に対する日本語教育支援の現状に関する研究発表がありました。発表者は宮崎大学非常勤講師の松井洋子氏です。松井氏は日本語教育の専門家であり、宮崎大学に限らず、宮崎公立大学、宮崎産業経済大学の留学生を一手に引き受けている、宮崎を代表する日本語教師です。長年にわたって実践中心の活動をしてこられた松井氏が、年少者に対する日本語教育の現状を改善しなければならないという使命感から行われたのが今回の研究です。第9回研究発表会では、外国人児童生徒の教育実態に関する井上佳代氏の報告がありましたが、それは学校側を中心に調査した結果でした。それに対し、今回は児童側を中心に調査した結果といえます。
近年、年少者に対する日本語教育に関する関心が高まっています。日本語教育学会の研究誌ばかりでなく、月刊『日本語』のような一般の日本語教師向けの雑誌でも特集が組まれています。しかし、報告のほとんどが、外国人児童生徒が多数いる地域や学校のもので、少人数の地域や学校での報告はほとんどありません。実は、このことには大きな問題があります。外国人児童生徒の全体の約8割は外国人児童生徒が5人未満の学校に在籍しています。松井氏は、1校に外国人児童生徒が少人数しかいない場合(少人数校)ほど教育支援が必要であると述べられています。それは、孤立しやすいこと、大した問題ではないと切り捨てられやすいことなどが理由です。宮崎の現状は、ほとんどが少人数校でまさにそのような状況です。その宮崎の実態を調査報告し、その改善策を分析しようとしたのが今回の発表です。
発表会当日は、公務のため数名の宮崎大学関係者が参加できない状況にありましたが、会場には14名の出席者があり、いつも通りの盛況な発表会となりました。質疑応答でも、学校教育・日本語教育・言語学など、それぞれに携わっている人たちからの質問や意見が積極的に出され、すばらしい研究発表会であったと言えます。 (早野慎吾)
◆当日スケジュール
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日 時 2006年5月20日10時20分−12時00分
場 所 宮崎大学サテライト・オフィス(「カリーノ宮崎」8階 シアタールーム)
研究発表 宮崎県における年少者に対する日本語教育支援の現状
−宮崎地区の現状と課題−
発 表 者 松井洋子(宮崎大学非常勤講師)
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◆研究発表会
1 宮崎県における年少者に対する日本語教育支援の現状
2004年に行われた「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受け入れ状況に関する調査」によると、日本の公立小・中・高等学校・中等教育学校・盲・聾・養護学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒数は、19,678人(2003年度19,042人)で、前回より3.3%増加している。在籍人数別学校数では、「5人未満」の学校が全体の約80%を占めており、在籍別市町村数においても、「5人未満」の市町村が全992市町村のうち564市町村と全体の過半数を占めている。その一方で、「30人以上」在籍する学校は56校で、前回より27.3%増加し、市町村数は159で、14.4%の増加となっている。このような状況下ににあって、日本語指導が必要な児童生徒の在籍数が多い地域、市町村、学校とそうでないところとでは、こうした外国人児童を取り巻く社会、制度、また子ども自身や親が抱えている問題についての意識や関心に違いが見られる。大都市圏や外国人居住者の多い市町村においては、その実態が調査され、それに基づいた適切な取り組みが行われている。宮崎県における児童生徒数は、2004年5月1日現在で56人、在籍学校数は、11校である。全国的に見ても在籍数の多い地域に比べその数は少なく、外国人児童に対する支援は日本語教育支援のみならず、社会的、心理学的な面からも決して十分とはいえない。しかし、もっとも支援が必要とされるのは、宮崎県のような在籍数の少ない各地域の市町村に居住している子どもたちである。本稿では現在の宮崎県の現状を調査し、今後の日本語指導や子どもにとって何が問題で、何が必要であるかを考察する。
2 調査概要
2006年2月から4月にかけて、宮崎地区の小学校3校(5人)とと中学校2校に在籍する外国人児童生徒(6人)に対して、アンケート調査と面接調査を実施した。調査内容は、質問項目1「日本語学習について」および、質問項目2「学校生活について」である。質問項目1については、子どもたちの日本語や教科学習に対する意見や希望を、さらに質問項目2では、毎日の学校生活の中での友だちとの関係や子ども自身の学びへの姿勢などについて質問した。調査結果から、現在子どものおかれている状況や、直面している問題点が明らかになった。しかし、これらの問題点は、子どもを取り巻く環境や年齢、文化背景、日本の社会制度などとの関係と複雑に絡み合っており、簡単に解決できるものではない。今回の調査で特に目立った特徴は、「友だち」の存在が大きく、毎日の生活の中での問題解決に、「友だち」が重要な役割をになっていることである。また、高学年になるほど日本語の重要性に気づき、さらに学力向上を目指したいと考えていることである。
3 調査から得た今後の課題
一般的に子どもの言語習得については、目標言語環境の中で育っていれば、自然に習得できるものと考えられている。しかし、せっかくそのような環境の中で生活していても、それを効果的に利用、活用しなければ意味がない。しかし、単一民族社会の中で育った我々日本人はこのような多言語社会の環境で育つ子ども側の視点に立って考えることに慣れていない。したがって、再度外国人児童生徒側の視点に立ち、宮崎県内の全ての外国人児童生徒在籍校での実態を正確に調査、把握し、その上で、何が必要とされているか等、問題点を整理、検討した上で、より効果的な対策を講ずるべきである。 (松井洋子)
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今回は第9回の井上佳代氏に続き、今回は松井洋子氏が年少者の日本語教育について発表がありました。宮崎における外国人児童生徒の教育支援に関する研究が順調に進んでいるということです。すばらしいことです。年少者の日本語支援は国際化と切っても切れない要素であり、宮崎国際化に大いに貢献する研究といえるでしょう。宮崎地域文化研究会としても松井氏の、今後の研究活動に大いに期待しています。
さて、次回の例会は2006年6月17日に開催されます。内容は宮崎南部方言に関する調査報告です。これは、昨年度の宮大チャレンジプログラムで採用された研究(58万円の補助金を受けた)を発展させたものです。 (早野慎吾)
第12回研究発表会は以下の日時に開催されます。
【研究発表】
1 都城方言の言語動態に関する研究 重信吉秀 早野慎吾
2 宮崎南部の地域につい−方言区画論− 比和谷恭子 永田剛 早野慎吾
日 時 2006年6月17日10時30分−12時00分
場 所 宮崎大学サテライト・オフィス(「カリーノ宮崎」8階 シアタールーム)
〒880-0805 宮崎県宮崎市橘通東4丁目8番1号
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