大学院共通必修科目の工夫と改善課題について
(2007年度「現代の教育問題」FD懇談会のまとめ)
07.9.20
大学院教育学研究科の学校教育専修および教育臨床心理専修では,2007年8月28日,本年度前期に行った共通必修科目「現代の教育問題」について,受講生による授業評価をもとにFD懇談会を行いました。その結果を以下のようにまとめましたので,ここに公表いたします。
1.授業実践における工夫と問題
(1) 「現代の教育問題」の目的および運用
@ この授業科目は,現代教育の諸問題のなかからいくつかのトピックを取り上げ,それを概観することによって,今日のわが国の教育が直面する課題についての多面的な理解を深めさせることをねらいとする。
A 授業の運用は,担当講座としての学校教育専修および教育臨床心理専修の教員を3つのグループに分け,各グループから年度ごとに担当者を選出するという方法で行ってきた(昼間と夜間の担当者をどのようにするかは各チームの判断に委ねた)。具体的なトピックは実際の担当者の専門に応じて自由に取り上げられた。成績評価は各担当者の評点にもとづいて行った。
(2) 本年度の授業の概要および授業評価の結果
@ 本年度は,昼間部では,「教師の学校ストレス」,「子どもの行動の理解と対応:認知行動的アプローチ」,「教育問題への社会学的アプローチ」というトピックが取り上げられた。また夜間部では,「病気をもつ子どもの心理的支援」,「学力問題」などが取り上げられた。
A 授業における工夫としては,シラバスを呈示し,受講生に授業の見通しを与えるよう配慮した。また,夜間部は少人数である利点を生かして,各自で調べたことを発表させたり討論したりする工夫を行った。昼間部については,比較的大人数であり,しかも1トピック4回なので,討論を設定することが難しかった。
B 授業評価は,昨年度の授業についての予備的調査をもとに,本年度初めて,昼間部の学生を対象に本調査を行った。調査は,数値評価および自由記述からなる。本年度調査の結果は,全体的には肯定的評価が多かったが,自由記述には多様な意見が現れていた。なお,授業評価の概要は次のとおり。
〇実施時期:2007年7月9日
〇配 布 数:2007年度入学の院生35名のうち,昼間の院生31名を対象
〇回 収 数:30部(回収率 96.8%)
[内訳](所属専攻)学校教育 12名,教科教育 18名
(現職経験)あり 7名,なし 16名,不明 7名
〇共通科目「現代の教育問題」授業評価の結果
|
評 価 項 目 |
当ては ま る |
や や 当 て は ま る |
あ ま り 当 て は ま ら な い |
当 て は ま ら な い |
無 答 |
(1) 授業の中身は現代日本の教育問題を理解するのに有意義な内容だった。 12
11 6 1 0
(2) 異なったテーマを複数の教員が交代で担当するオムニバスのやり方は,
対象を多面的にとらえるのに役立った。
12 12 4 2 0
(3) 授業内容は自分の専門分野に関わる課題を理解するのにも役立った。 6 10
13 1 0
(4) 担当教員の具体的な題材の取り上げ方や解説の仕方などは適切だった。
9 17 3 1 0
(5) 担当教員の授業態度は意欲的で信頼できるものだった。
15 10 3 1 1
(6) 担当教員は,受講者とのコミュニケーションを図りながら授業をすすめ
た。
8 17 4 1 0
(7) 私はこの授業に満足した。 9 12 8 1 0
(8) 大学院の共通科目としてこのような授業科目が設定されているのは有意
義なことだ。
10 12 7 1 0
*
数値は実数(人)
2.懇談の内容
(1)
本年度の授業をめぐる問題
まず,授業評価の結果および本年度の授業担当者の経験から,この授業科目について次のような問題がクローズアップされた。
@ 本年度の授業評価によれば,取り上げられた上記3つのトピックについて,今日の教育問題を多面的に見るのに有効だったという趣旨の記述があった反面,内容に重複があったという記述があった。
A 各担当者ごとにレポートが課され,都合3回になったことについて,負担が大きすぎるという声がいくつか寄せられていた。
B この授業科目は唯一の共通必修科目であり,教育学研究科の全学生が受講するが,受講生の専攻や大学院で学ぶ目標が多岐にわたるためか,受講するものとしての熱意や態度には受講生によって大きな違いが見られた。
(2)
浮かび上がった問題
上記の問題点をめぐって,懇談の中では次のような意見が出された。
@ 授業ではできるだけ現実の問題を取り上げたが,現職の院生は全般に熱心であった反面,ストレートマスターは必ずしもそうではなかった。これは,現場経験の有無と関係しているのかもしれない。
A 教育学研究科とはいえ教員を目指さない院生もおり,そうした院生は必修科目だからしかたなく受講しているということが,受講態度にも反映しているかもしれない。関連して,欠席がやや目立ったという指摘があったが,これもこうした事情と関連があるかもしれない。
B 3回のレポートについては,1科目の授業で3回程度のレポートを課するなどは,本授業科目のようにオムニバス形式ではない他の授業科目でもあることで,それほど過重な負担とは思われない。
3.今後の課題
以上のように,「現代の教育問題」に対する受講生の受け止め方は多様であり,必ずしも十分に評価されているとは言えない。このような実態を踏まえて,大学院教育学研究科における共通必修科目のあり方そのものを根本からとらえなおすことが求められる。
とくに,教職大学院が発足すれば,新設の教職実践開発専攻(教職大学院)では共通必修科目が格段に増えるので,その内容および方法について一層の改善充実が必要となる。そのさい,教職大学院では,一方で高度な実践力・応用力を備えた新人教員を養成するとともに,現職教員を対象としてスクール・リーダーを養成することが目標とされていること,他方で従来以上に多様な学生が入学してくると予想されることを踏まえて,共通必修科目の創造的な改善充実に取り組むことが求められよう。他方,新設の学校教育支援専攻(教育臨床心理専修および日本語支援教育専修)についても,対象学生の属性がこれまでと異なることを踏まえて共通必修科目の内容と方法を工夫することが求められよう。