のうがく図鑑

第61巻

「世界でひとつだけの植物」をつくる

応用生物科学科
國武久登 教授

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 世界には27万種を超える植物が生息しています。人間はそのほんの一部を食物として利用し,栄養源だけでなく、今では生活を豊かにする素材としても使われています。まだまだ世界には私たちの知らない野生の植物がたくさんあります。野生植物には品種改良の過程で除かれてきた有用形質が残っています。ユニークな形や香り、そしてポリフェノールなどの多様な健康機能性成分などがそうです。私たちはこれまで以上に生物の多様性を維持し、それを利活用することが求められています。

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様々な特徴を持った世界の植物たち

 私の専門分野は「植物遺伝育種学」という領域です。特徴ある植物遺伝資源を収集・評価し、交雑、突然変異、染色体や遺伝子操作を介して、新しい作物を創造する学問です。その選抜の過程で様々な遺伝現象や形質発現のメカニズムを解析していきます。日頃は地道な調査が続きますが、世界に現存しないような新たな系統が作出できた時の喜びは何ものにも替えがたい感動です。まさに「びっくり箱の研究分野」です。

 ブルーベリー葉からの機能性食品の開発事例を紹介します。南九州の風土病とされるウイルス性発がん等の予防に効果のある宮崎の食材を探索しました。その結果、ラビットアイブルーベリーの果実ではなく、葉に様々な健康機能(抗脂肪肝効果など)があることを見いだしました。宮崎の強い日光をいっぱい浴びた夏の葉に含まれるプロアントシアニジンがその活性成分でした。この知見を基に、プロアントシアニジン含量の高い品種間で交雑を行い、「くにさと35号」という名前で、葉専用品種として宮崎大学から世界ではじめてリリースすることができました。現在、ブルーベリー葉はお茶だけでなく、サプリメントや化粧品に利用されています。まさに、「世界でひとつだけの植物」のできあがりです。

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ブルーベリー葉専用品種「くにさと35号」とお茶

 植物には私たちの知らない多様な機能があります。その機能を植物との対話(観察や育種技術の適用)の中から導きだし、新たな作物を作出することは、世界中の飢餓や栄養不良になくすことをゴールとしている「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成にも寄与することでしょう。ぜひ、植物育種サイエンスの分野に挑戦してきてください。


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