のうがく図鑑

第60巻

「大学演習林」

森林緑地環境科学科
高木 正博 教授

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 国内で「演習林」と呼ばれる施設を持つ大学は27あります。森林・林業について学ぶカリキュラムがある農学部は,演習林とよばれる山林を自前で準備して,学生の実習や教員の研究が実施しやすいようにしなさい,ということになってます。その演習林を使いやすいように維持管理する仕事が,演習林所属の教員として,私の教育研究以外の仕事の多くを占めています。

 日本の国土面積の約7割が森林です。日本は南北に長く気候が大きく違うので,それに対応して南と北では森林の種類が違います。そこで最近の森林に関する研究ではその違いを明らかにしましょう,その違いをうまく使いましょう,というプロジェクトが多くなってきています。ネットワーク研究といいます。私たちも積極的に関わっています。

 写真1はただ,木の太さを測っているだけですが,これでも毎年約2300本の木を測る作業を15年間続けて,しかも全国で19カ所の森林で同じことが行われているとなると立派な研究プロジェクトです。もちろん各地で測るのは別の人です。写真212年間稼働している土壌呼吸という現象を測る機械で,国内の6カ所で同様の測定が行われています。その結果,日本の森林は種類に依らず,地球温暖化が続くと二酸化炭素の放出量が増え続けてしまう,ということが明らかになっています。写真3は普段は丸太が転がっているだけですが,これも今年で4年目になる全国4カ所で行われているプロジェクトです。ナラ枯れという木の病気に罹った木が腐朽していく過程で森林の炭素吸収に与える影響を調べています。

 木は寿命が長いので森林の研究も長くなります。したがって,いくつもの研究プロジェクトを同時に抱えることができます,抱えることになります。時間的にも空間的にも技術的にも自分だけで出来ることには限りがあります。皆がそれぞれの場所でコツコツと採り続けた結果を集めて初めて分かることがあったり,各自の得意なことを各地で披露することによって全体の技術が上がったり(喜ばれたり),という楽しみがあります。一方で,自分の都合で止めることは難しいです(泣)。仕事としての研究のつらいところです。

 なおちなみに,演習林の建物は令和3年に改修されて,約50年ぶりにきれいに快適になりました写真4。全国27の大学演習林で今最も快適な宮崎大学田野フィールドで,森林林業について学びたい人,研究したい方,ぜひいらしてください。

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