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キャビア生産の効率を上げるチョウザメの新規成長促進法を確立

チョウザメ卵であるキャビアは,宮崎県の重要な特産の一つである。キャビア生産の大きな課題の一つは,抱卵するまでに孵化後510年程度の長い年月を必要とし、キャビア生産を行う養殖業者の一番の課題である。この課題に対し、農学部海洋生物環境学科・宮西弘助教は、チョウザメの成長を促進する画期的な飼育法(「海水経験法」と命名)を確立した。

「海水経験法」とは
本来淡水で飼育するチョウザメに、一時的に適正な海水濃度で海水刺激を加え,再び淡水飼育を行う方法で、成長促進の効果がある。成長を促進することができれば、魚体が大きくなることによる魚卵数が増加することが分かっており、成長促進により魚体が大きくなれば採れるキャビアの増量が期待できる。また、成長が良くなれば、キャビアを持つようになるまで早く大きくできる可能性があり、キャビアを得るまでの期間の短縮が期待できる。

「海水経験法」による成果
最も世界的に養殖されている種である、ロシアチョウザメ(Acipenser gueldenstaedtii)とシベリアチョウザメ(Acipenser baerii)に、海水経験法を行い試験した結果、通常飼育に比べ、海水経験法を行ったロシアチョウザメでは15%程度、シベリアチョウザメでは26%以上の成長促進が可能であることを示した。
ロシアチョウザメからキャビアを得るためには、6年以上を要する。海水経験処理により15%以上の成長が望めることから、採卵できる期間を1年程度は短縮できる可能性がある。シベリアチョウザメは成熟が速い種であるが、それでも5年程度は要する。海水経験法により26%以上の成長促進が得られることから、12年の短縮が期待でき、3年程度でキャビアを得ることができれば、新たにチョウザメ養殖を始めることへのハードルが下がると考えられる。

ロシアチョウザメ.pngシベリアチョウザメ.png





           ▲ロシアチョウザメ                           ▲シベリアチョウザメ

今後の展望
この海水経験法に用いるのは、"塩"だけである。食品としても安全な処理であり、簡単な方法であることから、広く普及することが見込める。チョウザメ養殖における大きな課題を解決できるブレークスルーとなると期待できる。この方法は、世界的にも前例がなく宮崎キャビアの国際的・国内的競争力の向上に寄与でき、チョウザメ種苗を生産する宮崎県水産試験場、技術提供を行う宮崎大学、そしキャビア生産・加工を行うジャパンキャビア株式会社との産学官連携を進めている。また、本研究内容は特許出願を行っている。今後は、成長促進のメカニズムや、実際にキャビアを早く持つか?といった課題に対し、研究を進める予定である。

本研究成果を、8/9(水)に國武久登農学部長に報告しました。

DSC06518.JPG*本研究成果は、宮崎日日新聞、日本経済新聞、宮崎放送MRT等で報道されました。
宮崎日日新聞▼
https://www.the-miyanichi.co.jp/kennai/_72571.html
日本経済新聞▼
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC076JE0X00C23A7000000/
宮崎放送MRT
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/mrt/546357?page=2


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