地域の種

山崎正夫准教授の写真 山崎 正夫
農学部
応用生物科学科
准教授
共同研究・特許・応用分野など
  • 機能性食品、医薬品分野への応用を目指しています。

研究テーマ

宮崎発 糸巻きダイコンの機能性探索
連携先:宮崎県総合農業試験場 薬草・地域作物センター

研究概要

1.研究のきっかけ・必要性

 冬場の切り干しダイコンを干す風景は宮崎の風物詩であるように、宮崎県は有数のダイコン生産県です。私たちはダイコンのもつ健康機能性(病気にかかるリスクを減らし、体調を整える作用)に着目をして、そこに含まれる辛み成分の解析を進めてきました。本県には一般的な青首ダイコンの他にも赤みのある「糸巻きダイコン」という品種があります。この品種は、西米良地方で小規模に栽培されてきたものですが、見た目に特徴があり、今後、宮崎を代表する商品作物になることが期待されています。

収穫の様子
2.具体的な内容

 糸巻きダイコンはその赤さが大きな特徴の一つですが、中には白いものもあり、形も丸いもの細長いもの様々で、色と形から大きく4つのタイプに分けることができます。しかし、実際に栽培をしてみるとこの4つのタイプのうち、どのタイプが生育してくるかを事前に完全に見分けることはまだできません(品種の形質が安定していないといいます)。そこで、宮崎県総合農業試験場薬草・地域作物センターでは形質安定を目指した栽培を実施しています。また、宮崎大学では糸巻きダイコンから「辛みの成分」のみを取り出す方法の研究や、絞り汁を粉末化して健康機能性の評価を行っています。

写真提供:宮崎県総合農業試験場 薬草・地域作物センター
3.現在までに得られている成果

 体の中に異物が侵入したり、異物が生じたりすると、それを排除しようという働きが起こります。この働きが過剰に起こり、自らの体に傷害(赤くなる、痒くなる、痛くなるなど)を起こす状態を炎症といいます。このような役割を担うのは白血球であり、白血球を用いて調査した結果、糸巻きダイコンの辛み成分や絞り汁に炎症を抑制する効果があることがわかりました。ダイコンの辛み成分は「イソチオシアネート」という化合物ですが、糸巻きダイコン中のイソチオシアネート含量は青首ダイコンとほぼ同程度であることがわかりました。

4.今後の展望

 炎症というのは実は様々な病気の発症に関わることがわかってきています。肥満が基盤となって発症する生活習慣病もそのひとつです。今後は、生活習慣病の予防や改善作用を中心に様々な糸巻きダイコンの機能を探索し、付加価値の高い農産物としての展開を目指します。また、先に書きましたように、糸巻きダイコンにはいくつかの種類があるようです。今後は形質の安定を目指すとともに、最も高い機能を持つ形質を選ぶことができればと思います。

メッセージ・インフォメーション

 私どもの研究室で、採取した糸巻きダイコンをいろいろな方法で試食してみました。煮物などにしてしまうとよくわかりませんが、サラダや大根おろしにすると非常に鮮やかな赤色となり、まるでお正月用のおめでたい食材のように見えます。これが体に良いとなれば、宮崎県の輩出している様々なブランド農産物の中に糸巻きダイコンが加わってくれる日も近いのではないでしょうか。

関連リンク

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