地域の種

大澤先生の写真 大澤 健司
農学部
獣医学科
教授
共同研究・特許・応用分野など
  • 牛の繁殖障害の診断治療および予防に関する研究に取り組んでいます。
    【特許】哺乳類(雌)の発情時期のスクリーニング方法(特願2004-012414)、吐出装置(特開2010-279497)
    【共同研究】夏季における乳牛の受胎率向上に関する研究、牛の子宮疾患に関する研究
北原先生の写真 北原 豪
農学部
獣医学科
助教
共同研究・特許・応用分野など
  • 家畜の繁殖分野における臨床バイオマーカーの探索に取り組んでいます。
    【特許】なし
    【共同研究】家畜の性腺機能評価に関する研究、肉牛の周産期とその後の繁殖性に関する研究

研究テーマ

牛の繁殖効率向上のための技術開発
連携先:宮崎県畜産試験場 家畜バイテク部

研究概要

1.研究のきっかけ・必要性

 宮崎県の基幹産業である畜産は、肉用牛の飼養頭数で全国3位、5年ごとに開催される“和牛のオリンピック”と呼ばれる全国和牛能力共進会では2007年、2012年に全国一位と2連覇を達成しました。 畜産業を営む上で、一定期間に子牛が誕生する数、すなわち繁殖の効率性は、畜産経営に深く影響を及ぼします。この効率の指標の一つに、分娩間隔(牛が分娩し、再び次の分娩を迎えるまでの期間)があります。宮崎県では2013年に畜産新生プラン(口蹄疫災禍からの復興後の新たな施策)として、この分娩間隔を従来の414日(平成21年度)から365日に短縮し1年1産とする目標を掲げています。この目標の達成には、個々の牛の繁殖性を適正に評価する方法など、繁殖効率を向上させる技術開発が望まれています。

2.具体的な内容

 繁殖に関わる雌性器官として、子宮と卵巣があります。本研究室には、これらの器官の状態を診断する基礎技術(子宮において「子宮内膜細胞採取器と細胞診」、卵巣において「抗ミューラー管ホルモン(AMH)の臨床バイオマーカー」)があります。しかし、この技術は、本県の繁殖牛の主要な黒毛和種への応用展開が十分ではありませんでした。そこで、宮崎畜産試験場家畜バイテク部と連携し、黒毛和種を対象にシーズの研究開発を行い、黒毛和種における繁殖性の適正な評価法の確立を目指しています。

3.現在までに得られている成果

 黒毛和種における繁殖性評価に有効な指標を解明 牛において、細菌感染などによる子宮における炎症の存在は、子宮内膜細胞採取器(図1)による細胞診で多形核白血球(PMN、図2)の割合で評価できます。乳用牛であるホルスタイン種では分娩後の子宮の修復に伴うPMNの動態がすでに明らかになっていましたが、今回、肉用牛である黒毛和種の動態を明らかにし、ホルスタイン種と異なることがわかりました。また、卵巣年齢を示す血液中のAMHレベルは、卵巣にある卵胞の数をよく反映しているといわれています。これまでに、黒毛和種におけるAMHの動態(図3)を明らかにし、牛の体内で受精卵を多く生産する際の有用な指標となることがわかってきました。

図1~3
4.今後の展望

 これまでは、黒毛和種に対して両シーズの有用性を探るための基礎的な研究を中心に行ってまいりました。今後は、多様な病態を示す動物を対象とした応用研究、さらに必要に応じて既に報告されているシーズを組み合わせた開発研究を行い、黒毛和種における繁殖性の適正な評価法を確立させ、生産現場での実証試験を行いたいと考えております。

メッセージ・インフォメーション

 私どもの研究室では、週の半分以上に亘って、生産現場で研究の材料採取や臨床を行っております。生産現場で求められているニーズを直接、肌で感じつつ、本開発を含め、実験室内でわかったことと臨床の橋渡しとなる研究ができればと思っております。

関連リンク

その他の研究紹介、卒論・修論紹介