国内に侵入・拡大する豚熱、近隣諸国での爆発的に流行しているアフリカ豚熱、そして、宮崎県が経験した口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)などの重要家畜感染症への包括的な防疫対策確立は喫緊の課題である。 そのためには、家畜防疫に関する莫大な情報の集積とその多面的な視点からの解析が必要であり、その結果を効率的に活用し、防疫対策に応用する仕組み作りが不可欠である。 このような背景から、各大学センターの得意分野・地域の強みを有機的に活かした共同研究が、国内産業動物防疫基盤の強化に必要であると考えられた。 そこで、本事業期間内においては、HPAI防疫をモデルとして8大学産業動物防疫コンソーシアムにおける早期警報体制の構築することを目的とした。
渡り鳥が持ち込むHPAIウイルスを迅速に検出するために、渡り鳥飛来湖水から高感度にHPAIウイルスを検出する方法を開発し、8大学連携による全国的なHPAIの検出ネットワークを構築する。 さらに、地方行政や生産現場と連携し、正しい防疫対策情報を直ちに家畜生産現場に還元するシステムを構築し、産学官が一丸となった「先回り防疫」の実現を目指す。
口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザの発生を受け、獣医系大学に家畜感染症研究機関が設立された。 2020-2021年度にはJRA畜産振興事業「大学連携による家畜防疫に関する知の集積」において8大学産業動物防疫コンソーシアムを組織した。 本申請事業では、この大学連携を有機的に活性化し、高病原性鳥インフルエンザをモデルに新技術を用いた全国調査により早期警報ネットワークの構築に取り組む。 さらに、構築したネットワークの他の感染症防疫への展開を目指す。
本事業では、大学という研究・教育機関ネットワークを構築し、各大学が保持する地域・国際連携を活かした「知の集積」を行い、これらの情報を各地方行政と共有・活用することで、防疫体制の構築を目指す。 本コンソーシアムは有事の際の国家的な防疫対策を行う実施する組織を支援していくことを想定している。 そのため、本コンソーシアムで確立されるHPAIの早期警報発令システムをセカンドオピニオンとして国策に提言することを目指している。 これは「官学という垣根を超えた研究共同体制」によるオール・ジャパンでの産業動物防疫の実践となる。