ASEAN諸国は、「Kitchen of the world 世界の台所」として、2050年までに世界における畜産生産量30%を支えるという目標を掲げており、そのリーダー国であるタイへの期待が集まっています。しかし、現在、タイ及び周辺国には、悪性伝染性疾病の発生による畜産物への輸出制限、感染症による畜産資源自体の生産性低下、そして食中毒関連病原体による食肉汚染といった課題が残されており、タイにおける家畜感染症が及ぼす畜産経済への影響は非常に大きなものとなっています。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDG)」として17の目標が掲げられました。我々は、SDGの目標2、12、17を達成すべく、本プロジェクトに取り組んでいます。
2050年までに世界における畜産物生産量の30%を支える"Kitchen of the world"
タイおよび周辺国の現状と課題
年間1億タイバーツ(約3億5200万円)(Perry et al, 1999)
年間20万人、医療費は年間9億タイバーツ(約31億6800万円)(Treeprasertsuk et al, 2016)
年間10億ドル(約1119億2000万円) (Sriwichailamphan, 2003)
ASEAN経済回廊が開通したために、ASEAN諸国(ミャンマー、ラオス、カンボジア)内での家畜・畜産物の流通が増大しています。そこで、その中心に位置するタイで家畜・畜産物の移動による感染症の拡散を防ぐため対策が必要となっています。
この数十年で大きく経済発展したタイは、大メコン地域(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイ)の地政学的・経済的中心国であり、タイ経済とのリンクを念頭においた戦略作りが必須です。
タイやその周辺国では、現在、口蹄疫の清浄化が達成されていません。そこで、タイ政府によるバンコク東部に位置するチョンブリ県周辺の口蹄疫フリーゾーン形成を支援し、その活動をASEANの清浄化モデルとして、ASEAN諸国での口蹄疫の清浄化を目指します。
カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナムにおいて、JICA家畜疾病防除計画地域協力プロジェクト(2008年~2011年)が実施されてきました。プログラムの実施にあたり、その基盤を活用することができます。
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2012~2014 | JICA口蹄疫対策上級専門家育成プログラム(タイDLDの中堅行政官3名を招聘) |
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2014~2021 | 文部科学省・産業動物防疫リサーチセンターの教育基盤強化による産業動物防疫の地域・国際教育拠点の創成とグローバル人材育成事業(タイとの国際共同研究、学生交流) |
2014~2018 | JST・さくらサイエンスプログラム(タイの若手研究者・学生40名を招聘) |
2015~2017 | 文部科学省・国費外国人留学生の優先配置を行う特別プログラム「アジアの感染症研究・対策を先導する人材育成 医学獣医学融合プログラム」(タイから5名の大学院生受入れ) |
2016~ | CADICが全国共同利用・共同研究センターとして運用開始 |
2017~ | アジア地域獣医師等総合研修事業(タイ・カセサート大学、DLDから研修生受入れ) |
2017~2019 | 日本学術振興会研究拠点形成事業(バンコクでジョイントセミナー開催、若手研究者受入れ) |
2018 | チュラロンコン大学獣医学部にコラボレーションラボ開設機器を設置して、共同研究開始 |
2018~ | 国内4大学と産業動物防疫コンソーシアムを構築(2019年7大学、2020年8大学に規模を拡大) |
2019 | SATREPS採択(2020~2025) |
チュラロンコン大学・カセサート大学・マヒドン大学・獣医学部/熱帯医学部・コンケン大学獣医学部・チェンマイ大学獣医学部・農業協同組合省畜産振興局(DLD)
CADICでは、これまで大学・企業との研究協力や情報共有を通じて、日本国内における家畜防疫ネットワークを構築し、その拠点としての役割を担ってきました。
本プロジェクトでは、タイ側の家畜防疫拠点である農業協同組合省畜産振興局(Department of Livestock Development: DLD)とDLDに協力する複数の大学によるネットワークとの国際的な家畜防疫コンソーシアムを構築し、目標の達成を目指すと同時に、シンポジウムやセミナーを通じて人材交流・情報共有を行っていきます。