• 2023.9.4

瀬川ゼミ(経済地理学研究室)一期生が研究報告書を刊行しました

 令和5年8月、瀬川ゼミ現4年生3名が昨年度からのゼミ活動約1年間の集大成として、「宮崎県内自治体における空き家対策の現状と都農町における居住生活環境に関する実態調査」をまとめ、研究・活動報告書として刊行しました。

 研究活動の開始は令和4年夏、都農町での研究で取り組む課題テーマを探す中、町の中に散見される空き家に関心を持ったことから始まりました。文献レビューで全国の空き家に関わる研究や社会における課題認識の状況を学びながら、フィールドワークによる調査を主体に複数の角度から課題を分析調査した内容となっています。

【章立ての紹介】

第1章 はじめに P.1~6
第2章 調査対象地域の概況 P.7~18
第3章 全国・宮崎県の空き家問題及び対策の状況 P.19~30
第4章 宮崎日日新聞から見る宮崎の空き家問題:空き家問題に対する認識の変遷 P.31~72
第5章 宮崎県内自治体の空き家対策事業の現状 P.73~102
第6章 都農町における住居と生活環境に関する実態調査結果 P.103~194
第7章 宮崎県都農町における空き家問題の対応策・予防策ー課題と提言ー P.195~199

報告書は下記よりPDFデータで全文ダウンロードしてご覧いただけます。

PDF全文ダウンロードはこちら

 都農町での「住居と生活環境に関する実態調査」では、夏休み期間中の9月、調査対象地区2,460世帯に調査票を学生が全戸配布。7項目31設問からなる調査票の返送式でのアンケート調査ながら、18%という高い返送率の465世帯より返答をいただきました。また、調査票回答者の中からヒアリングに協力くださった17世帯の皆様からは個人的な内容にもかかわらず、たくさんのお話をお聞かせていただき、大変貴重な都農町の一次データを取得できました。都農町での初めての実態調査の結果と学生の分析を是非ご覧ください。
 なお本報告書は、国立国会図書館、宮崎県立図書館、都農町民図書館、宮崎大学附属図書館のほか、調査で訪問した自治体の公立図書館にも所蔵しています。学術機関リポジトリデータベースでの公開も予定しています。

6章の都農町実態調査の対象地区を示した地図

6章、7章のみのPDFダウンロードはこちら

刊行にあたり、著者である瀬川ゼミ4年生3名に本調査研究の感想などをインタビューしました。

Q: 初めての研究活動の感想、良かったこと、大変だったことは?

A: 町民ヒアリングで、家のことを考えるきっかけになった、悩みを聞いてもらってすっきりしたなどの声を聞き、この調査が誰かのためになっていると思えたことが良かったです。住民の声を行政に届ける中間役に自分たち学生がなれたことで、自分たちの役割を果たせた気がしています。

A: とにかく長かった。テーマが地域の生活に密着した、地域にとって重要で深刻な社会問題でだっただけに、取り組みをまとめ終えた達成感があります(成果物の出来は良くないかもしれないですが)。大変だったのは、昨年夏の調査票配布です。初めての研究で分からないことだらけで焦りがありました。精神的なものや体力的な疲れや色々なものが詰まったパンク事件(※)もありキツかったです。(笑)

※配布のため(家族の)車を借りて運転中、操作ミスでパンク、ホイール損傷した(トホホな)事件

A: 体力的、精神的にもハードでした。全部が大変だったけれど、執筆・校正で人に見せる形にするための報告書作成が特に大変でした。瀬川先生がはじめて鬼にみえました(笑)。

Q: 発見や印象的だったことは?

A: 調査票の回収率の高さです。町民の方々の協力を得られたことが驚きでした。そして自分たちよそ者に対して協力しようとしてくださる町民の方の姿勢が嬉しかったです。
 また、実態調査の前に取り組んだ文献調査では、空き家の発生が、子との同居や別居の状況(近くに住んでいるかどうか)に強く影響を受けていることなどを学び、調査票では同居の家族構成だけでなく子どもの居住についての設問を設けるきっかけにもなりました。都農町だけでなく自分たち(いまの若い人たち)の将来にも大いに関係することなので、色々なことを考えさせられました。

A: 空き家について調べると言っても、どう手を付けてよいのか分からなかったのですが、
都農町の特徴を調べることから始まり、地元新聞の記事や文献調査、自治体・町民ヒアリングなど、色々な角度から課題をみつめる方法を研究の中で学べだことが新しい発見でした。
 見てスゴイなと思うだけで見過ごしていた日常風景が研究対象になり、深く丁寧に調べることで研究課題がみえてくることを、身をもって学びました。

A: 自分にとっての発見は、地域の人の話を聞かないと地域の実態は分からない、地域や地域の問題は語れないということです。2年生までは、座学で地域資源創成学部の様々な分野の授業を受けて地域のことが分かったように感じていました。しかし、今回の調査で初めてテーマを持って地域の人の生活の話をじっくりと聞くことで、扉が一つ開いて一歩足を踏み込むと、空き家一つとっても様々な問題がぶら下がり根のように奥が深いことに気づかされました。座学だけでは決してわからない地域の実態を知ることが、今回の提言にもつながったと思います。

Q: チームで一つの研究に取り組んでの感想は?

A: 得意分野がそれぞれ違った(言語化がF君、分析がO君、体裁構成ビジュアルがK君)ので、補い合いながらできました。

A: 3人で試行錯誤しながら、報告書という完成物を自分たちの手で作り上げたことは大きな達成感でした。自分たちの成長を感じられました。

A: 3人それぞれ違う考え方がある中、一つのゴールに向かっていくことの難しさを、身を持って体験しました。日程調整から役割分担、話をまとめる事など、とにかくまとまることが難しかったです。僕が調整役でしたから人一倍頭を悩ませました(^^;;)。良い経験でした。

Q: 一期生として後輩へのメッセージは?

A: ハードルが高そうなプロジェクトでも、基本的には細かい作業ステップの積み重ねなので、こつこつ積み上げていけばできる。大学生と言う立場を生かして活動してほしい。

A: 自分たちの活動を通して、都農町内でも学生活動への理解が得られたと思うので、より発展的な活動にしていってほしい。

A: 一番伝えたいことは、事前調べの大切さです。ヒアリングをする際に、事前にどれだけ自分の知識レベルを相手と同じレベル近くまで高めて、同じ目線に立って話ができるかで、ヒアリングの内容の濃さや深さが大きく変わることを経験しました。初めは、知識不足のために自分の知りたいことを聞けなかったり、発展した話にならなかったりしました。特に自治体の方とのヒアリングで痛感しました。事前調べはしっかりやるだけ自分に返ってくるので、手を抜かずに頑張ってほしい。

 最後に、本研究活動にあたってご協力をいただきました都農町の皆様、ヒアリングにご協力いただいた自治体の皆様はじめ、関わっていただきました全ての方々に研究室一同御礼申し上げます。

活動の様子

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