施設利用案内

学外から利用の皆様へ

お問い合せ

住所 宮崎市大字島之内10100-1
TEL 0985-39-1034
FAX 0985-39-8277

共同教育利用施設としての要望

① 「食」と「農」のリスク管理技術者養成

現代社会では、食品の生産から消費までの経路が多様化・複雑化して管理困難となり、「食」の生産・加工・流通・消費の各ポイントにおける管理ミスが深刻な事態を引き起こして消費者の不安を招いています。「食」の安全確保のためには、事前のリスク管理が重要であることが国際的な共通認識となっており、食品加工分野ではHACCP(危害分析重要管理点)等の手法を用いた食品衛生管理が普及しつつあります。消費者の安心を得るためには、認証機関による規格に適合した品質保証が必要とされますが、生産現場である牧場等ではこれらの安全管理手法があまり普及していないため問題になっています。

そのため、農学部他、「食」に関係する学部の教育現場ではこれらの食品安全規格の導入が強く求められており、宮崎大学では、生産現場から「食」の安全管理を実践できる人材教育プログラムの開発【リンク】に取り組み、本学木花フィールド(農場)(リンク)は全国の大学附属農場で唯一のGAP認証農場となりました。住吉フィールドにおいても、これらの国際認証の取得に取り組んでおり、畜産関係者(農学部学生、生産農家、畜産技術指導者)や食品関係者(関連学部学生、加工・流通業者、消費者)に対して、畜産分野の国際認証規格や「食」の生産現場、そして「食」と「農」のリスク管理について学んでもらう牧場の整備を進めています。

三大学連携図

② 産業動物獣医師養成

現在、畜産における「食」と「農」の安全を担う上で最も重要な立場にある産業動物獣医師の不足は全国的に危機的な状況で、その教育施設の充実が緊急の課題とされています。しかし、多くの(特に都市部の)獣医系大学では、産業動物教育を行う事は事実上困難な状況となり、教育連携が進められています。

宮崎大学には産業動物に関する教員やカリキュラム、当フィールドを利用した実践教育が充実しているため、平成24 年度には全国獣医系大学の若手教員に産業動物研修を行うとともに、平成24年12 月に大坂府立大学(リンク)、平成25 年3 月には東京大学(リンク)と獣医学連携教育の協定を締結しました。すでに協定校学生による当牧場での実習も始まり、今後も多くの獣医系大学による産業動物教育施設としての利用が見込まれています。

体重測定

③ 畜産実践指導者養成

平成22年に宮崎県で発生した口蹄疫では、約30万頭の家畜(牛・豚ほか)が殺処分となり、多大な被害をもたらしました。口蹄疫の現場では、家畜の取り扱いに熟練した人材の不足や現場での防疫に精通した実践指導者の不足が感染拡大の一因となりました。座学中心で現場に対応することは困難であり、実践的な現場教育が緊急の課題として求められています。しかし、防疫上の理由もあり、そのような教育ができる牧場は減少しています。

当フィールドは、実際の家畜を豊富に用いながら、学生実習や畜産関係講習会・研修会等を実施している全国的にも希少な教育フィールドです。全国の学生・社会人を対象に、実践的な飼養管理と衛生管理教育を同時に推進しており、人材育成効果を波及できる教育の場として利用されています。

ハンドリング 放牧

④ 環境に配慮した資源循環型畜産技術者の養成

我が国では、BSEの問題に端を発した飼料の自給率向上を国家的な施策として実施しています。自給化に向けた牧草の生産から、その飼料を使った家畜の飼養管理、あるいは環境保全に配慮した糞尿処理などを一貫して学習できる教育の場が必要とされています。

当フィールドでは約200頭規模の牛を、14haの放牧地を可能な限り活用して放牧を行うとともに、25haの採草地にて栽培、収穫、乾燥保存または発酵貯蔵した牧草の給与を併用しながら飼養し、家畜の主食となる粗飼料はほぼ自給しています。家畜の排泄する糞尿は、敷地内に整備された堆肥舎やし尿処理施設にて完熟させた後、当フィールド内に全て散布・還元しています。複雑な環境問題が山積する中で、本来の畜産である、「土~草~牛」の良好な関係に基づく持続可能な農業の一例を提示しながら、資源循環や環境問題に対する理解を深める教育が実践できます。

行動観察 実習風景

⑤ 実践的畜産経営と家畜福祉の両立

これからの農業に対応できる人材を養成するため、実践的な現場教育を提供する必要性が高まっています。当フィールドでは飼養技術の向上に努め、平成25年には国内最高峰の霜降り肉となる脂肪交雑評価基準(BMS)No.12の肥育牛を生産しました。また、年間の生産売り上げが約5400万円、経費は4000万円ほどで運営しており、全国の大学附属牧場として売り上げおよび利益率においてもトップクラスの実績を上げています。机上の空論では立ち行かない「食」の生産現場を体験し、知識偏重・現実無視の無益さを体感することは、今後の社会における複雑な諸問題に対処せざるを得ない学生達にとって、非常に有益な経験となります。

一方、経済性を追求する上でないがしろにされてきた動物の福祉および快適性(カウ・コンフォート)が、実際には収益を上げる上で重要な役割を果たしていたことが明らかにされつつあります。当フィールドでは、黒毛和種牛における親子放牧や、牛舎内における1頭当たり面積の確保など、健康な家畜を生産するため国際的に必要とされるようになった「家畜の福祉」に配慮した飼養管理を実践的に学習することもできます。当フィールドにおける実習の過程で、「食」となる生き物と触れ合い、命の尊厳について考えることは、全国の学生・社会人に対して貴重な教育効果をもたらすでしょう。

肥育牛出荷前 乳牛放牧 和牛放牧