のうがく図鑑

第50巻

植物を改良する遺伝子組換えのおもしろさ

フロンティア科学実験総合センター・畜産草地科学科(兼)
権藤 崇裕 助教

 皆さんは、何かに思いを巡らせて眠れないことはありますか?私は、よくあります。実験や研究のことを考えると、これを研究したらどうだろうか?もしこの実験がうまくいったらどうなるだろうか?そこからどの様な可能性が生まれるだろうか?そういうことを考えるとワクワクして眠れません。まるで小学生の時の遠足前の状態と同じですね。
 私は、植物、特に作物の組織培養(植物を無菌的に増殖する技術)や遺伝子組換え(植物に遺伝子を導入して改良する技術)について研究しています。対象とする作物は、家畜の餌である牧草類、緑化植物であるシバや世界的に重要な穀類であるダイズなどです。牧草類やシバでは、牧草の品質を向上する遺伝子、乾燥および低温に強い遺伝子の探索や導入を行っており、ダイズでは、収量に関する遺伝子について、マメ科のモデル植物であるミヤコグサを用いて、基礎から応用にわたる研究をしています。
 下の写真は、我々研究室で確立した牧草類の遺伝子組換え系ですが、研究当初は、世界的に見ても初めての試みであり、遺伝子導入装置(パーティクルガン)から自分自身で作製しました(図1)。実は、このパーティクルガンの作製が私の卒業論文になっていますが、本当にゼロからの出発でした。最初の遺伝子組換えに成功するまでに(図2)、約8年もの歳月を要しましたが、現在では、他の牧草類にも応用でき、私の研究の基盤となっています(図3, 4)。皆さんは、遺伝子組換え作物と聞くと危険なものと敬遠しがちですが、しっかりと科学的に安全性が評価されたものが、流通しており、二重三重のチェックが行われ、安全性が確保されています。今や食糧問題は、世界レベルで大きな問題になりつつありますが、食糧増産の解決策として、我々の基礎研究が少しでも役に立てればと考えています。

 
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図1.自作の遺伝子導入装置

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図2.バヒアグラスの遺伝子組換え

 
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図3.ローズグラスの遺伝子組換え

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図4. ネピアグラスラスの遺伝子組換え


 毎年、夏休みの時期に、高校生を対象とした「ひらめき☆ときめきサイエンス」(日本学術振興会)を開催しており、植物の遺伝子組換えについて体験実習を行っています(図5)。遺伝子組換えの原理、安全性について、実習を行いますが、今年(2018年)で10年目を迎えます。植物に遺伝子を導入して、それが発現する。それは、簡単そうで実はかなり難しく、神秘的なものです。サイエンスは美しい!楽しい!なるほど!と皆さんに感じてほしいと思います。最後に、私の自慢の一枚もご覧ください(図6)。

 
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図5.発光遺伝子(GFP遺伝子)が導入された植物細胞(カルス)

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図6.カルスで作った九州地図
(ひとつひとつがカルスで、地図を作るのに6時間かかりました。)


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