2023.07.03 掲載
宮崎大学延岡フィールドの村瀬敦宣准教授らの研究チームが、神奈川県立生命の星・地球博物館と鹿児島大学総合研究博物館との共同研究で、県南部のダイビングショップ「南郷のだいびんぐ屋さんBella Casa」の長友伸二郎氏が2005~2012年の間に撮影した水中写真を基に、日南市大島を中心とした宮崎市内海から串間市市木の沿岸でみられる魚類相の論文を発表しました。論文は鹿児島大学総合研究博物館が刊行する電子ジャーナルであるIchthy, Natural History of Fishes of Japan誌に掲載されています。
宮崎県の沿岸は南部から流れてくる黒潮と、北部から流れてくる瀬戸内海からの海流の両方の影響を受けていると言われており、瀬戸内海からの流れが届くと考えられる日向市以北の県北部の魚類相の概観は村瀬准教授の著書『新・門川の魚図鑑:ひむかの海の魚たち』で明らかになっていました。一方、宮崎市・日南市・串間市を含む県南部は黒潮の影響を強く受けるため、県北部よりも熱帯性の傾向が高くなるであろうことは予想されていましたが、それを示すための包括的な情報がこれまではありませんでした。
本研究は、宮崎県南部の魚類相を、スキューバダイビング中に撮影された写真資料を調べることにより明らかにしたものです。結果として、296種の魚類が記録され、県北部では熱帯性魚類の種数の割合が約50%であったのに対し、県南部では約70%を占めることがわかり、県南部は県北部よりも熱帯性の傾向が高いことが明らかとなりました。こちらの論文では、学術的なデータはもちろんのこと、長友氏が撮影した宮崎県南部の色とりどりの魚たち全種の写真をどなたにでも閲覧していただくことができます。
村瀬准教授は、「今回の論文をきっかけに、宮崎の海には多様な魚がいるということに加え、南北でも異なった海の生物多様性が見られる場所だということを皆さんに知っていただければ嬉しい限りです」と話していました。
宮崎県南部の水中景観。造礁性サンゴが多く、熱帯性と温帯性の魚が入り混じっている。
緒方悠輝也氏(宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士課程)撮影。