宮崎大学
ニュースリリース

アトピー性皮膚炎の増悪化を阻止する仕組みを発見 -樹状細胞がアトピー性皮膚炎の増悪化阻止に重要な役割を担う-

2021年07月27日 掲載

医学部医学科の佐藤克明教授(免疫学)と天野正宏教授(皮膚科学)の共同研究チームによるアトピー性皮膚炎に関する研究成果が発表されました。
本研究で得られた成果を応用することで、アトピー性皮膚炎に対する新たな治療法の開発につながる可能性が期待できます。
研究成果は、国際免疫学会連合学術誌『Frontiers in Immunology』のオンライン速報版で公開されました。

アトピー性皮膚炎の増悪化を阻止する仕組みを発見
-樹状細胞がアトピー性皮膚炎の増悪化阻止に重要な役割を担う-

本研究成果のポイント
■樹状細胞は免疫バランスの維持に働く
■樹状細胞はアトピー性皮膚炎の増悪化を阻止する
■アトピー性皮膚炎の新たな治療法開発へ手がかり

宮崎大学(池ノ上 克学長)は、白血球の一種である樹状細胞が免疫バランスを維持することよりアトピー性皮膚炎の増悪化を阻止する仕組みを明らかにしました。これは医学部医学科(片岡寛章医学部長)の佐藤克明教授(免疫学)と天野正宏教授(皮膚科学)の共同研究チームによる研究成果です。

アトピー性皮膚炎は強いかゆみを伴う湿疹が全身または部分的に発生する皮膚のアレルギー疾患で、よくなったり悪くなったりを繰り返すという特徴があります。アトピー性皮膚炎の原因は、これまでに完全には明らかにされていませんが、遺伝的・体質的な要因や環境要因、生活動作などの様々な要因が複雑に関わることで発症すると考えられています。アトピー性皮膚炎はわが国を含む先進国において、過去30年で患者数が急増し、先進国の小児の最大20%と成人の13%が罹患しております。アトピー性皮膚炎の治療方法は、主に適切なスキンケアと塗り薬(ステロイド、アトピー性皮膚炎治療薬など)による薬物治療ですが、根本的な治療法に至っておりません。

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下などを背景として、皮膚から入った無害な異物(アレルゲン)に対する過剰な免疫応答(アレルギー反応)により生じると考えられております。細菌やウイルスなどの病原性微生物に対する免疫応答はこれらを捕食した樹状細胞により開始されると想定されております。一方、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患における樹状細胞の役割については不明な点が多く残されております。

研究チームは、樹状細胞を欠損したマウス(樹状細胞欠損マウス)では野生型マウスとは異なり、アレルギー発症に寄与する複数種類の白血球が増加し、免疫バランスが喪失していることを認めました。さらに樹状細胞欠損マウスは野生型マウスと比較して、アトピー性皮膚炎が増悪化することを明らかにしました。

従来、樹状細胞はアトピー性皮膚炎の発症や増悪化にも重要な役割を担っていると考えられておりました。しかしながら、今回、樹状細胞の欠損状態におけるアトピー性皮膚炎を初めて検証することにより、樹状細胞はアトピー性皮膚炎の発症や増悪化には必要では無く、むしろ免疫バランスを維持することよりアトピー性皮膚炎の増悪化阻止に作用する重要な知見を得ることができました。この成果を応用することで、アトピー性皮膚炎に対する新たな治療法の開発につながる可能性が期待できます。

本研究成果は、2021727日(中央ヨーロッパ夏時間0700、日本時間0000)に国際免疫学会連合学術誌『Frontiers in Immunology』のオンライン速報版で公開されました。

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アトピー性皮膚炎における樹状細胞の意義



プレスリリース(2021.7.27)
http://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20210727_01_press.pdf

〇研究者データベース
佐藤 克明 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100001043_ja.html
天野 正宏 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/495_ja.html

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