のうがく図鑑

第47巻

動物にとっての栄養学

畜産草地科学科
高橋 俊浩 准教授

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 今回このコラムを担当する高橋は、宮崎大学農学部の畜産草地科学科で動物栄養学の研究 をしています。皆さんは普段、肉や卵、牛乳などの畜産物をよく食べていると思います。このような畜産物は、家畜と呼ばれる動物を人が飼育して育てることによってしか手に入れることはできません。 そのため、動物が子を産み、成長し、体に肉を蓄え、卵や牛乳を生産するために、動物達も食べることが重要なことは、すぐに想像がつくと思います。 わが国では、人が食べる食料自給率がカロリーベースで約40%であることを聞いたことがあるのではないでしょうか。一方で、国内で飼育している家畜の飼料自給率は約26%なのです。 生産効率やコストの削減のために多くの飼料を輸入することになっていますが、世界的な穀物需 要の増加や異常気象による飼料価格の変動はとても大きな問題です。また、私たちは食に恵まれているため、世界中から大量な食品を買って消費しています。 その中で、消費期限や販売期限の制約のために無視できない量の食料資源を廃棄しています。もったいないことですよね。写真1のように、弁当工場では、パンのミミも大量に出てきます。 これはそのまま食べられそうなパンです。豚の飼料に加工すれば良質なでんぷん質としてとても良い飼料原料になります。そこで、人が食べる食品の製造段階や流通段階で発生する副産物や廃棄食材を、安全な形で家畜の飼料として利用するための研究としてエコフィード研究があります。 宮崎は農産地帯ですから、飼料用に栽培する飼料作物や、農産副産物などを取り入れて エコフィード研究を行うことで、家畜の飼料にも地産地消が実現出来たら素敵だと思いま せんか?人は毎日違ったものを食べますが、家畜は一定期間安定した栄養価の飼料を食べ 続ける必要があるため、飼料に対する動物の反応は結構繊細です。そのため、色々な規模で の実験に取り組んでいます。写真2では、大型機械を使って、言わばウシの給食を作ってい るところです。配合飼料と草を別々に与えるやり方よりも飼育の省力化に繋がり、この研究 では地域の未利用資源を組み合わせることで飼料の自給を目指しています。動物相手です から、楽しさも難しさも兼ね備えていますが、動物の食について興味があったらこんな研究 分野もあります。写真3のように、研究室で肉の評価をすることもあります。お肉や卵を食 べる時に、「この動物は何を食べて育ったのかな?」と思ってもらえたら嬉しいです。


写真1 食品工場から排出されるパンの耳
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写真2 ウシのTMR(給食のようなもの?)作り
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写真3 研究室で飼育したブタ肉の評価と化学分析 写真3.jpg


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