のうがく図鑑

第70巻

画像情報を用いた肉用家畜の育種改良

畜産草地学科
徳永 忠昭 准教授

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SDGs:2"飢餓をゼロに"、12"つくる責任つかう責任"、15"陸の豊かさを守ろう"

 宮崎県は、先人達のたゆまぬ努力により、家畜の飼養頭羽数でブロイラー(肉用若鶏)が全国1位、豚が全国2位、肉用牛が全国3位(農林水産省畜産統計調査より)と肉用家畜の一大産地となり、「畜産王国宮崎」と呼ばれるほどです。私は、「畜産王国宮崎」にある宮崎大学で学生時代に実践的な畜産学について学び、現在は宮崎大学の教員として、"家畜が保有している肉量や肉質といったものを持続的に高めていくための選抜や改良手法"に関する研究(図1)について、研究室の所属学生と一緒に取り組んでいます。
 肉用牛の生産は、母牛と父牛を交配させ子牛を生ませることから始まりますが、日本ではほとんどが人工授精によって交配しています。この人工授精に用いられる精液は、各地域で造成された優秀な種雄牛(父牛)から採取したものが用いられますが、この優秀な種雄牛造成には、肉量や肉質に関する能力を評価する必要があるため、長い年月と多額の費用が必要となります。この問題点に対し、生体時に筋肉や蓄積脂肪量を評価し得る超音波画像情報(図2)や生体時の体型を評価し得る3D画像情報(図3)を活用することで、より効率的な種雄牛造成について研究しています。
 肉用家畜で用いる超音波診断装置は、妊婦のおなかにいる赤ちゃんの超音波画像を見たことがある方も多いと思いますが、原理としては同じもので、リアルタイムに筋肉や脂肪の状態を確認することができます。生体時で非破壊的に筋肉の大きさや蓄積脂肪を計測できることから、肥育途中の超音波測定値から屠畜時の枝肉形質(ロースの大きさ、脂肪の厚さ、霜降りの度合いなど)を推定するための技術として、畜産現場でのニーズも高まっています(図4)。
 私は、一般社団法人宮崎県家畜改良事業団(宮崎県内種雄牛の産肉能力検定機関)やキリシマドリームファーム株式会社(黒豚の愛称で親しまれているバークシャー種一大生産農場)等において、研究室の学生と各種測定を継続的に実施しており、畜産現場での応用を進めています。

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1. 画像情報を用いた育種改良に関する研究概要

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2. 牛の超音波画像と解析図

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3. 黒毛和種肥育牛の3D画像

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4. 畜産技術者を対象とした超音波診断講習会

 畜産は、私たちの「食」を支える上でとても重要ですが、"低い飼料自給率"、"安価な輸入畜産物との競争"、"放牧の衰退による草地の荒廃"、"従事者の高齢化"等、我が国の畜産をめぐる諸課題はたくさんあります。宮崎大学では、「Soil-Plant-Animal System」(土-植物-家畜を繋ぐ物質循環)と「from Farm to Table」(農場から食卓への農畜産物提供)を見渡すことのできる横断的な教育研究分野を置き、自給飼料に立脚した家畜生産と、安全で美味しい農畜産物を食卓に提供するための総合的な知識と技術を身につけることのできる教育環境とカリキュラムが整っています。
「畜産王国宮崎」にある宮崎大学で実践的な畜産学を学んでみませんか?


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