「ありがとう」の声を医療従事者に伝え、医療に優しさの循環を

  • 坂田 鋼治
  • 出場時の所属:宮崎大学医学獣医学総合研究科2年
  • R1年度開催:第3回みやだいビジコン出場
「ありがとう」の声を医療従事者に伝え、医療に優しさの循環を

患者さんの「ありがとう」のメッセージを医療従事者に伝えるアプリ「Tegami」。感謝のメッセージを現場に直接届けることで、医療従事者を応援することを目的としています。発案者は宮崎大医学部付属病院循環器内科の医師坂田鋼治さん。第3回みやだいビジコンでは、このアイデアが評価され宮崎大学長賞を受賞しました。奇しくもコロナ禍において疲弊かつ緊迫している医療現場に、優しい風を吹かせています。

ビジコンに参加するきっかけ

医師である坂田さんがビジネスに興味を持ったきっかけは、2017年に宮大講師の土屋有先生が開いた社会人向けマーケティング講座「よるゼミ」に参加したことでした。元々ビジネスというよりは、医療以外の分野のすごい人に会ってみたかったという坂田さん。夜ゼミで土屋さんをはじめとした個性揃いの方々に出会い、ビジネスへの興味が湧いてきたと言います。

「同じ研究室に山城くんという学生がいて、彼に土屋さんの話おもしろいから宮大ビジコン出てみたらって薦めてたら僕が出ていました(笑)。Tegamiのアイデアは以前から持っていて、山城くんが賛同してくれて形にすることができました。エンジニアの渡部くんも頑張ってくれて、伴走してくれる人の大切さを身に沁みて感じています。」

「トライアンドエラーは当然」ということを学んだ

人の命を預かる医療現場で働いてきた坂田さん。ビジコンに参加し人生の価値観が変わったと言います。

「最初は挑戦することに少し怖さもありましたが、ビジネスはトライアンドエラーが当然なんだということを学びました。医療現場において失敗はまず許されません。でもそれ以外では、失敗から学ぶことがある、失敗から学ばないと失敗は失敗で終わってしまうと分かったのが大きな収穫でした。物事に対する見方が変わりましたね。

以前は臨床現場で会社の社長が体調を崩しても、自分の命や魂が会社に宿っているということまでは考えが及びませんでした。今は医療の視点からただ注意したり怒るだけではなくて、『仕事が大事なのも分かるけど健康も大事にしていきましょう』というような患者さんに寄り添った考えができるようになりました。」

ビジコンに参加し視界が開けた

坂田さんは宮崎大学医学部附属病院で心臓の研究を続けながら「Tegami」の活動を続けています。現在は、都城市郡医師会病院、宮崎大学医学部附属病院、上原内科の3院が「Tegami」を導入し、日々患者さんからの感謝のメッセージが届けられています。

「ビジコンで賞をいただいてから、学長をはじめ病院長や事務部長からかなり心強いお言葉をいただきました。これまでは僕一人で悩んで、こうなったらいいなとぼんやり思っていたことを、病院や大学の強いバックアップをもらえるようになって視界が開けましたね。改めて学生やって良かったです。学生じゃないと宮大のビジコンには参加できませんでしたから。」

医療現場で働く人の心の支えになるようなサービスにしたい

「医療業界には誰の目にもとまらないような小さなドラマがたくさんあります。それはフォーカスされることなく日々流れていくのですが、患者さんと医療者が共に病気と戦い、支えあい乗り越えることができた一つ一つの奇跡のストーリーなんです。

今大学病院内の待合室に 「Tegami」で集まった感謝の声を出力して貼っています。休憩中に看護師さんが見てくれたりしていて、試行錯誤ですが医療者の方の約7割がやりがいに繋がったと答えてくれてます。中には数人でしたけど、これで辞めるのやめた、辞めずに良かったという声もありました。患者さんの温かい言葉で病院の雰囲気がさらにアットホームになり、医療現場で働く人が自分の存在意義を思い返し励みにできる。そんなサービスにしていきたいです」

「Tegami」では現在運営の仲間を募集中。全国の病院に「Tegami」が導入され、当たり前に患者さんが医療者に感謝を伝えられる未来を作るべく、坂田さんたちは走り続けます。