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国際学会派遣

2010/04/07

国際学会派遣助成 平成21年度 前田 幸重さん

平成21年度国際学会派遣事業採択者レポート


助成事業「女性研究者支援のための国際学会派遣」の採択者よりお話をうかがいましたのでご紹介いたします。

工学部材料物理工学科 助教 前田 幸重 さん

国際学会の学会名(大会名)と開催地・開催期間は?


大会名:19th International IUPAP Conference on Few-Body Problems in Physics (第19回少数系物理国際会議FB19)
開催地:ボン大学(ドイツ)
開催期間:2009/8/31 〜 2009/9/5

どういう内容の学会だったのですか?


私が研究している「原子核」というのは、数個〜数百個の核子(陽子・中性子)、電子などの粒子から構成される、有限量子多体系です。今回出席した国際会議は、多体系を扱う原子核・原子分野の中でも特に"少数系"の研究にスポットを当てたもので、3年おきに世界各国で開催されています。今回はドイツで開催されましたが、前回(2006年)はブラジル、そして次回(2012年)は福岡で開催される予定です。
私の研究テーマは「核力の三体力効果」と呼ばれている現象です。この効果を研究するために、私は核子3つが関与する散乱実験を行っています。これは典型的な"少数系"問題です。
その他にも、例えば炭素12は陽子と中性子6個ずつから成る原子核ですが、この原子核は、全ての核子が1つにまとまっている描像と、ヘリウム4を塊とするクラスター3つから成るという描像の二面性を持っていて、クラスター描像的には"少数系"の範疇になります。

国際学会までの旅の印象やエピソードを教えてください。


今回は国際学会の直前に、ドイツのGSI研究所で実験を行いました。(この実験でも女性研究者支援事業から研究費助成を受けています。)実験終了後に、研究所のあるダルムスタットから会議の開催されたボンへ移動しました。移動途中はライン川下りに乗船し、甲板からの眺めを楽しみました。下船後は電車に乗って移動したのですが、ドイツの電車システムはわかりやすかったです。
会議期間中のボンはちょうどベートーベンフェスティバルの最中で、コンサートが開催されたり、広場にある本物のベートーベン銅像の周りにカラフルなオブジェが並べられていたりしました。会議の空き時間にはケルンを訪れ、世界遺産の大聖堂に登塔してきました。建物外部を飾る無数の像も建物内部のステンドグラスも圧巻でした。
そして毎晩、研究者達とお店ごとに異なる数々のヴァイツェンビールを堪能しました。ドイツでの実験は今後も続くので、またヴァイツェンビールを飲める機会が楽しみです。

国際学会に参加した感想をお願いします。


今回の学会は開催地がドイツだったということで、ヨーロッパからの参加者が半数以上を占めていました。
私の研究は、共同研究している理論研究者やライバル関係にある実験研究者にヨーロッパの人々が多いため、会場で会った彼らと非常に活発な議論をすることができました。
また、今回私が口頭発表した実験結果に関しても、理論研究者から非常に高く評価して頂き、今後もさらに研究を進めていくことを勧められると共に、新しくどのような実験をしていくのが良いか、色々なアドバイスを貰い議論を深めることができました。

国際学会派遣公募の制度について感想をお願いします。


東京で院生・ポスドクをしていた頃は、自由に海外へ実験や発表に行っていました。
何より研究会等が近場で開催される事も多く、情報収集や成果発表の機会に恵まれていました。
しかし宮崎大学に助教として着任してからは、業務の合間を縫って意識的に学会へ参加し、自らをアップデートする必要性を強く感じるようになりました。
着任して日が浅く旅費の工面が難しい時に、国際学会派遣制度を利用させて頂けた事は大変助かり、研究の励みになりました。