猫ヘパドナウイルスの感染受容体の同定に成功！ －猫の健康維持ならびに慢性肝炎の治療法開発に貢献－

2023年08月03日 掲載

 

B型肝炎ウイルス（HBV）はヒトにおける慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌の原因ウイルスの一つで、2002年の世界保健機関(WHO)の推計では、HBV感染者は世界中で20億人、HBV持続感染者は3.5億人、年間50-70万人の人々がHBV関連疾患で死亡していると報告されています。
近年、B型肝炎ウイルスに遺伝的に近縁で、猫の慢性肝炎との関連が疑われる猫ヘパドナウイルスが海外の複数の国で報告されており、日本国内においても猫ヘパドナウイルス感染が報告されています。一方で、猫ヘパドナウイルスについてのウイルス学的解析はほとんど進んでおらず、特に、ウイルスが細胞に感染する際に用いるレセプター分子は不明でした。

猫ヘパドナウイルスの感染受容体の同定に成功！
－猫の健康維持ならびに慢性肝炎の治療法開発に貢献－

大学院医学獣医学総合研究科博士課程3年Maya Shofaさん、農学部の金子泰之准教授（動物病院研究室）、農学部および産業動物防疫リサーチセンターに所属する齊藤暁准教授（獣医微生物学研究室）らの共同研究チームは、ヒトのB型肝炎ウイルスに近縁で、猫の慢性肝炎との関連が疑われる猫ヘパドナウイルスの感染受容体（レセプター）を初めて同定しました。本研究成果により、猫ヘパドナウイルス感染ネコの新規治療法開発に役立つことに加え、猫の健康維持ならびに慢性肝炎の治療法開発に貢献できると考えられます。
本研究成果は、2023年8月1日に国際学術誌『Antiviral Research』のオンライン速報版で公開されました。

主なポイントは以下のとおりです。
●ヒトのB型肝炎ウイルス（HBV）に近縁な猫ヘパドナウイルスの感染受容体の同定に成功
●HBV、猫ヘパドナウイルスはいずれもヒト、ネコのNTCPを感染受容体として用いることを示した
●ヒトのウイルス性肝炎の治療薬として用いられている薬剤が猫ヘパドナウイルスの感染も阻害することを示した
●猫ヘパドナウイルス感染ネコの新規治療法開発に役立つことに加え、猫ヘパドナウイルスが新たなHBV動物モデルとしての可能性を持つことを示した

▽詳細はこちらから▽
・プレスリリース 2023/8/3
　https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20230803_01_press.pdf

【原論文情報】
　掲載誌：『Antiviral Research』
　　DOI：https://doi.org/10.1016/j.antiviral.2023.105695
　論文タイトル：Conserved use of the sodium/bile acid cotransporter (NTCP) as an entry receptor by hepatitis B virus and domestic cat hepadnavirus