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障害の特性と配慮や支援のポイント

視覚障害

特性
障がいの程度によって、大きく「盲」と「弱視(ロービジョン)」に大きく分けられます。
「盲」とは、視覚的な情報を得られない、あるいはほとんど得られない状態ですが、光を感じたり、目の前の手の動き、指の数が分かる場合もあります。
「弱視(ロービジョン)」とは、視力が低い状態の他に、見える範囲が狭い状態、光をまぶしく感じる状態、明るいところではよく見えるのに、夜や暗いところでは見えにくくなることもあります。
盲と弱視(ロービジョン)は必ずしもはっきりと区別できるわけではなく、重度の弱視者の中には、学習の効率や将来の視力の見通しなどから、点字を使っている人もいます。また白杖についても、普段から持っている人もいれば、不慣れな場所や混雑した場所、暗い場所でのみ使うという人もいます。
障がいをもつことになった時期、障がいの状況や程度は様々で、見え方や困難を感じる事項についても、大きな個人差があります。
配慮や支援のポイント
  • 戸惑っている視覚障害のある方を見かけたときは、まず、声をかけて援助を求められたらどのようにすればよいか確認して下さい。(声をかけるときには、自分の立場や氏名を名乗り、そばにいって前から声をかけて下さい。例:学生の宮崎です。お手伝いしましょうか?)
  • 移動の介助をするときには、介助する側の腕などを持ってもらい、障がい者の半歩前を歩いて下さい。また。障害物などの路面の変化についても具体的に知らせてください。
  • 点字ブロックは、移動の際に大事な情報です。周辺に障害物をおいたり、立ち止まったりしないでください。
  • 教科書や資料などについて、そのまま読むことができない場合もありますので、視覚障害者が読めるよう提供する必要があります。具体的には、点訳、拡大、電子データの提供、印刷物のテキストデータ化、対面朗読が考えられます。
  • 最近は、タブレット端末を活用し情報を得ている障がい者も増えていますので、その学生にあった支援を行う必要があります。
  • 弱視には、照明環境の整備が特に重要で、多くの場合には、明るい照明を必要とするため、机上に個別照明器具を設置することが必要な場合があります。一方で明るい場所では、目を開けていられないほどまぶしさを強く感じ、室内でもサングラスが必要な場合もあります。
  • 重要な連絡がある場合には、本人に直接メール等で知らせてください。
  • 申請書類の記載や押印など、本人が記載ができないこともありますので、代筆の手伝いをお願いします。
  • 慣れない場所については、丁寧なオリエンテーションが必要です。いったん地理的環境を理解すれば、一人で目的地まで移動することも可能となりえます。

聴覚障害

特性
音をきく、または感じる経路になんらかの障害があり、話し言葉や周囲の音がきこえなくなったり、ききづらくなる状態を「聴覚障害」といいます。聴覚障害のある学生は、話し言葉のきき取りに困難を示すことが多いため、大学生活においては授業中に先生の話がわからないなどの問題が生じます。聴覚障害があると音がゆがんだり途切れたりすることが多く、補聴器や人工内耳を用いても明瞭に聞こえるわけではありません。障害の程度のみで学生の抱える困難を把握することは難しいですが、一般的には聴覚障害の程度が重くなるほど視覚的な手がかりが重要とされます。
配慮や支援のポイント
  • 聴覚障害のある学生とのコミュニケーション手段には、口話(こうわ)、筆談、手話等の他、身振りや空書(くうしょ・そらがき)など様々な方法を用いることができます。一般的に聴覚障害イコール手話と思われがちですが、高校まで特別支援学校等に通わず、地域の学校で教育を受けた学生の中には、手話を用いずに口話や筆談を主なコミュニケーション方法としていることも少なくありません。
  • 聴覚障がいのある学生に口元が見える状態で母音アイウエオの形を見分けられるように口を大きく開けてはっきりと話をし、内容が伝わったかどうか確認しながら話し合いを進めます。状況に応じて筆談を併用したり、ポイントを紙に書くなどの工夫があるとより確実にコミュニケーションがとれます。
  • 筆談を用いる場合には、口話を併用しながら部分的に書く場合と、話を全部書きながら伝えた法が良い場合があります。
  • 手話は、他の言語と同様に習得に長い時間がかかりますが、身につけることでコミュニケーションの幅が広がり、手話で話せるコミュニティがあると、聴覚障害のある学生の心理的安定につながります。
  • 「FM補聴器」や「FM送信機」などの組み合わせによる補聴援助システムを用いてきこえを補ったり、「ノートテイク」や「パソコンノートテイク」「手話通訳」などの視覚的な情報を用いて授業の内容を伝えるなど、本人の困難さに応じた支援が必要です。

肢体不自由

特性
肢体不自由とは、身体の動きに関する器官が、病気やけがで損なわれ、歩行や筆記などの日常生活動作が困難な状態をいう。肢体不自由の程度は、一人一人異なっているため、その把握に当たっては、学習上又は生活上どのような困難があるのか、それは補助的手段の活用によってどの程度軽減されるのか、といった観点から行うことが必要です。
配慮や支援のポイント
  • 両上肢の障害か一側(片側)の障害かによって、あるいは上肢のどの部分の障害かなどによって、生活の困難が異なります。ノートテイク、機器操作、図書館利用、資料整理、ドアや鍵の開閉、荷物の持ち運び、食事等の面で配慮が必要です。特に両上肢に障害がある場合には、配慮すべき場面が多くなり、介助者の配置を行う必要となることがあります。
  • 下肢の障害については、移動場面のバリア(段差、斜面等)や、利用設備が合わないこと(机の高さが違う、入れない等)、空間が十分確保されていないこと(入れない等)によって生じることが多くあります。移動、部屋の入退室・利用、エレベーター、自転車、段差・溝、駐車場、電車・バス、実験室・実習室や特殊施設の利用、通学等の面で配慮が必要です。
  • 移動しやすい一階の講義室を利用する、車椅子でも着席できる机を準備する、実験室・実習室では、他の学生との動作交差が少ない配置の検討することで、リスクの軽減を図ることができます。

病弱・虚弱

特性
病弱・虚弱では疾患や障害の種類が多様であるとともに、同じ疾患や障害のある学生が少ないのが特徴です。本人が障害を積極的に明らかにしないケースも多く、自分の障害が周囲の人々に理解されないこともあるため、精神的に孤独な状況に陥ることのないような環境づくりが望ましいと言われています。内臓の疾患等による慢性の機能障害が永続していて、社会生活あるいは家庭生活、さらに重症になれば日常生活に著しい制限をきたしている場合があります。病弱・虚弱では障害の種類が多様であるため、必要とされる配慮事項も個々のケースによって大きく異なります。障害が外からわかりにくかったり、ネガティブなイメージを恐れて、本人があえて自己申告しない場合もあります。
配慮や支援のポイント
  • 免疫が低下している場合もありますので、手洗い・うがい・マスク着用等で感染を防ぎ、感冒(風邪など)やその他の感染症に対しての配慮が必要になります。また、蚊などの害虫のいる場所、たばこの煙やホコリも避けるようにします。
  • 体調や診療方針、医療機関の都合で学生本人ではどうすることもできない制約が生じてきますので、履修方法を工夫する必要があります。
  • 急激な症状の悪化により、時に生命の危機にさらされる場合もありますので、どのような緊急事態に陥る可能性があるか、緊急時対応マニュアル、連絡網を作成しておくことが重要となります。また、急に具合が悪くなり、処置のために個室的空間が必要になる場合があることも考慮しておく必要があります。

発達障害

特性
発達障害は、学習の問題にとどまらず、周囲の人との対人関係や普段の行動など、生活上に様々な困難が生じますが、身体に器質的な障害があるわけではないため、障害に起因した問題とはわかりにくい、また障害と健常の境界が明確でなく、どこまでが障害でどこからが本人の個性や能力の問題であるのか区別がつきにくい、同じ発達障害でもその問題の表れ方は一人ひとり違い、障害があるかどうかが周囲あるいは学生本人にさえ自覚しづらいのが特徴で、その困難さに応じた支援が必要です。
  1. 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(旧自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害)
    他人との意思や情緒の疎通、適切な関係を築くことに問題を示すといった社会的コミュニケーションと社会的相互作用の困難さに関する特徴、同じ状況や決められたことへのこだわりが強く柔軟な対応ができないといった行動や興味、活動が限定されて、反復的なパターンを有する特徴を幼小児期から継続してもち続けている障害です。その他にも、特定の感覚刺激に対して、過敏であったり、鈍感であったりするといった感覚異常の人もいます。自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害は、本質的には同じ病理に基づいた連続する障害であるという見解から、DSM-5において全て自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder、以下ASD)に一元化することとなっています。
  2. 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(旧注意欠陥多動性障害)
    注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder、以下ADHD)は、注意力に障害があり困難を生じたり、多動や衝動的な行動をコントロールできない障害です。注意力には、持続すること、いくつかの対象に注意を分配できること、状況に応じて転換できることの三つの側面があり、それぞれの障害から、提出物が期限に間に合わない、とんでもないミスをしてしまう、遅刻が多い、複数の課題をこなせない、やたらと物を失くす、また、落ち着きがない、待てない、並べない、衝動的で余計なことをついしてしまうなどの行動上の問題を示します。下位分類では、注意力の障害が主である人、衝動性や多動が主である人、両者がある人に分類されますが、多動は成長すると目立たなくなり、大学生になると注意力に問題がある人が多くみられます。
  3. 限局性学習症/限局性学習障害(旧学習障害)
    定義は複数あります。主に医療分野では知能など他の能力に問題がないのに「読む」、「書く」、「計算する」のいずれか一つ、あるいは複数に著しい困難がある場合を限局性学習症(Specific Learning Disorder)とします。一方、教育分野では、上記に加えて「聞く」、「話す」、「推論する」のどれか、あるいは複数に著しい困難がある人も含み、学習障害Learning Disabilities)とします(以下限局性学習症及び学習障害の両方を全てLD)。困難が文字の読みに起因するDyslexia(失読症、読字障害)などもこれらのカテゴリーの中に含まれています。しかしながら、「成績が振るわない、単に勉強ができない学生」と思われることもあり、発達障害と認識されず、見逃される場合があります。
配慮や支援のポイント
  • 文字から情報を読み取ることに困難が大きい場合には、文書を音声化する技術の利用が有効です。文書が電子化されれば読み上げソフトが使えます。
  • 聞いて理解することが難しい場合、ノートを取ることが難しい場合には、教員の話に注意を向け続けることが困難であるとか、なかなか記憶に残りにくいといった理由が考えられます。また、聞いて理解することができても、聞く作業とノートを取る作業の二つを同時にこなすことが困難な場合があります。このような場合、ノートを取ろうとすると話の内容についていけなくなる可能性が高くなりますので、できるだけ聞いて理解することを優先すべきです。講義内容についてできるだけ詳しい配付資料を準備すると、話を聞いて理解できることに集中できるようになります。資料を配付すると発達障害のある学生だけでなく、すべての学生にとって学びやすい授業になります。授業を録音し、あとで聞き逃した部分を確認できるようにするのも有効です。
  • 一般的な暗黙のルールが理解しにくいため、トラブルが生じる場合があります。
  • 演習形式の授業は、コミュニケーションが苦手な学生にとって力を発揮しにくい授業形態です。資料をまとめて発表することはできても、自分の考えを述べたり、質問に答えたりといった部分がうまくいかない場合もあります。漠然とした質問だと答えにくいことがあります。
  • 学外実習など、学生にとっては慣れない環境でどう振る舞うべきかよくわからないという場面に直面することがあります。実習に先立ち、実習場面でやるべきこと、やってはいけないことを他の学生以上に詳しく伝えておきます。重要事項は文書にまとめて渡すのも有効です。
  • 単位取得がうまくいかない理由として、遅刻や課題遂行の困難といった問題が見られる場合には、時間管理スキルの指導が必要です。
  • 発達障害のある学生への支援で必要なのは「問題があったら対応する」というスタンスではなく、「問題が起きていないか確認する」という予防的スタンスで、そのためには定期的に面接を行ない、本人に問題が生じていないかを常に確認する必要があります。

精神障害

特性
大学生の年代にあっても精神疾患はもはや珍しいものではありません。大学生の年代に見られる精神疾患の多くは医学的治療によってかなりの程度まで回復が期待できます。しかし、必ずしも通常のレベルで修学や生活に取り組めるとは限らず、症状が残遺したり知的作業の能力が十分に回復していなかったりします。このように平均的な状態から多少とも偏りが認められる精神状態が続くようであれば、精神障害のある学生として修学上の配慮や環境調整が必要となります。
配慮や支援のポイント
  • 服薬が長期間必要となることが多いため、通院や服薬への配慮が必要です。また、症状悪化を短期的に抑制するために頓服薬が必要となる場合があります。
  • 強い不安・恐怖が生じた場合に、容易に退室できること、不安や感覚過敏によって、周囲の雑音が非常に気になってしまい、講義に集中できない場合があります。こうした場合には、周りが比較的空いていて静かな席や、出入口や壁に近い最前列の席を優先的に確保することが有効です。
  • 大勢の前で発表したり議論することが困難な場合は、教員が個別に聴いたり、可能なら代替手段で理解度を評価することを検討します。
  • 朝方の不調が目立つ場合や夜間の睡眠障害が持続していると、午前中の授業に出席することがしばしば困難となります。また、通院中に治療薬の効果が安定するまでの期間や処方が変更された直後など、睡眠のリズムや体調が不安定になって寝起きに影響することがあります。
  • 統合失調症や気分障害のうつ状態が継続する場合は、集中力の低下や思考力の抑制をきたすことがあり、授業に出席しても通常のテンポで内容を理解することが難しくなります。
  • 症状により、あるいは服薬している薬の影響により、注意力や集中力が低下する場合がありますので、危険物質や有害な薬品などを取り扱う場合は、TA等に事情を説明し配置することが必要です。