2016.10.17 掲載
農学部6学科の最後の学科となります、獣医学科の順番が回ってきました。(ん?6学科なのに7巻目?・・・サボったわけではありません。第5巻をご参照下さい。)ともあれ、これまでの6巻すべてを読破された方も、初見の方もいらっしゃると思いますが、農学という分野に興味を持って頂いたことをまずは感謝申し上げます。
さて、農学部の研究内容を紹介する「のうがく図鑑」ですが、今回の記事を担当する私の研究内容は何かと言うと、「MRIを中心とした伴侶動物の獣医神経病の診断法や予後評価法に関する研究」です。簡単に言うと、「動物の頭の中を覗こう!」ということです。と言っても、心理学的なことではなく、一昔前に流行った(?)頭の中の考えを暴き出すアプリでもありません。(ちなみに私は「金」と「食」が「休」を挟んで詰まっている、という休日の食べ歩きみたいなものでした。)もう少し詳しく述べると、MRIを利用して、動物の脳や脊髄を描出し、いかに神経系の状態(正常〜病的状態まで)を詳細に、かつ正確に捉えることが出来るか、ということを研究しています。
MRIという言葉はご存じかと思いますが、どのような原理で、体の中を映し出しているのかをご存じの方はほとんどいないのではないでしょうか。私もその原理の詳細を全て理解しているとは到底言えません。また、日進月歩で新しい撮像方法が開発されており、その全てに精通することは限りなく不可能に近いのでは、とさえ感じています。そんな私がMRIの研究をしている、とここで述べるのは大変おこがましい気さえしますが、簡単に理解できないからこその面白さを感じています。例えば、体の中の水分子の運動性(動きやすい、動きにくい)を捉えることで、一つ一つの細胞の形態を反映した画像を描き出してもくれるのです。よく分からなくても、面白そうじゃないですか?
ここに示した画像はほんの一部に過ぎませんが、単に解剖学的な構造を微細に示してくれるだけでなく(それだけでも十分役に立つのですが)、含まれる物質や組織の状態を推測し、さらには組織あるいは細胞レベルでの活動や機能までも計測し、私たちに多くの情報を提供してくれるのです。それらの情報(サイン)を専門書や文献、過去のデータなどと照らし合わせながら、時に画像に映らないものまでを想像しながら、日々パソコンの中の画像とにらめっこし、動物の頭の中で何が起こっているのかを覗いているわけです。(もちろん、すべてに答えを出せるわけではなく、悔しい思いをすることもあります。)
そんなとき、もしかしたらたくさんの「自己満足」と「好奇心」に挟まれるように、(神経病で苦しむ動物たちを助けるために私の研究が役立ちますようにという)ささやかな「願い」が私の頭の中に覗き込めるかもしれません。