のうがく図鑑
トップ のうがく図鑑 獣医学科 犬にも白内障?
第72巻
 
2025.04.14 掲載

犬にも白内障?

獣医学科
黒田 晃平 助教

目標③.png

犬の白内障ってご存知でしょうか?

白内障と聞くと、「眼が白くなるやつでしょ」と多くの方がご存知かと思います。またご家族の誰かが手術受けましたという方もおられるかもしれません。犬の白内障も同じです。眼が白くなるやつです。ですが、犬の白内障手術って知ってますか?と尋ねると「はい」や「うちの子は手術しました」とお答えされる方はかなり少ないのではないかと思います。

白内障は水晶体と呼ばれるピントを調節する構造(図1)が白く濁ってしまうことで視力が低下する病気です。しかし、犬たちは初期の白内障(図2)では視力の低下を我々に全く感じさせません。見た目も少し白いかな程度なので飼い主様も白内障に気付かないことが多いです。しかし、濁りがひどくなり白内障が進行すると重度の視力低下をおこします(図3)。大体そのくらいで眼が白い!と白内障が発見される事が多く、物にぶつかる、ボール遊びをしなくなったなどの症状とともに来院されることが多いです。

写真1.png 写真2.png 写真3.png

現在の獣医療では、白内障治療は手術しかありません。しかし進行した白内障は手術が難しく、また合併症の発症によりすでに視覚を失っている可能性もあります。そのため、私達は様々な検査機器を駆使して、手術によって本当に視力を取り戻すことができるのか慎重に検討してから手術に臨みます。人は点眼麻酔で実施可能ですが、動物たち大人しくすることができないので全身麻酔をかけることになります。手術が始まれば手術用顕微鏡を使用しながら専用の器械を眼の中に挿入し、濁った水晶体を超音波で砕きながら除去していきます。数ミリ単位の緻密な操作が必要になり、非常に気を張った時間が続きます。濁った水晶体を全てキレイに除去したあとは水晶体の代わりとなる眼内レンズを挿入し手術終了です(図4)。

写真4.png

白内障は命には関わらないかもしれませんが、視力を失い生活の質を確実に低下させる病気です。そして、手術によって視力を取り戻した犬たちは大きく生活の質が向上することは間違いありません。あれ、眼が白いかな?と思われたら、一度病院でご相談してみてください。