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トップ のうがく図鑑 動植物資源生命科学コース 現場の疑問から始まる牛の研究
第76巻
 
2026.05.26 掲載

現場の疑問から始まる牛の研究

動植物資源生命科学コース
邉見 広一郎 助教

大学卒業後から現在まで、宮崎大学住吉フィールドで技術職員として現場の仕事を続けてきました。住吉フィールドでは、黒毛和種や乳牛の飼養管理を行っており、分娩管理や人工授精、哺育、放牧管理など、日々さまざまな作業に携わっています。毎日牛と接していると、「なぜだろう?」と思う場面が数多くあります。「放牧中の牛は何を考えているのだろう?」「放牧は本当に牛にとって快適なのだろうか?」「元気に育つ子牛や繁殖成績の良い母牛は、他と何が違うのだろう?」

そんな日常の疑問をきっかけに研究を始め、研究計画を立て、データを集め、結果をまとめることを繰り返してきました。研究のスタートは、特別な発想ではなく、現場で牛を見ている中で感じた素朴な疑問でした。その積み重ねの中で、いつのまにか博士号を取得することができました。

現在は、放牧環境下における牛の行動や体温変化、繁殖成績との関係などについて研究を行っています。例えば黒毛和種では、春は牧草の草丈が短いため、牛は多くの草を食べるために放牧地を歩き回ります(写真1,2)。一方、夏は草丈が長く、少ない移動で十分な採食ができるため、春の方が、体温が高くなることが分かってきました(図1)。

また、乳牛では、夏季の放牧地で実際に採食している草量は意外に少なく、放牧地で横になって休息している時間が長いことも観察されました。放牧というと「たくさん草を食べている」イメージがありますが、実際には季節や草地条件によって、牛たちの行動は大きく変化しています(写真3,4)。

牛たちの行動には、その時の暑さや草量といった直接的な理由だけでなく、生き残るための本能的な意味も隠れているのかもしれません。そのような「なぜその行動をするのか」を、現場で観察しながら考えることも研究の面白さの一つです。

このように、牛たちは環境に合わせて行動や生理反応を変化させながら生活しています。牛たちにとって、どのような環境が最も快適なのか。これからも現場で生まれる疑問を一つずつ研究につなげながら、明らかにしていきたいと思っています。もし「ソロモンの指輪」があれば、牛たちの気持ちをもっと早く理解できるかもしれません。

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写真1. 黒毛和種の放牧風景
久しぶりの放牧地で歩き回ってます。

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写真2. 黒毛和種の放牧風景
サギは牛の放牧が始まると寄ってきます。

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写真3. 乳牛の放牧風景
牛たちが落ち着いていて理想的

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写真4. 乳牛の放牧風景
夜間放牧です。人間に気づき緊張してます。

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図1. 春と夏の体温変化