のうがく図鑑
第77巻
 
2026.03.06 掲載

花もいろいろ、人もいろいろ

農学部附属次世代農学教育研究センター(木花)
中村 薫 特別教授

花にも人と同じように「クセ」があります。例えば、カーネーションでも品種ごとに、それぞれにいろいろな「クセ」があります。この「クセ」とは、どんな環境を好み、どう育とうとするか、その花ならではの特徴です。

・     水をたくさんほしがる
・     朝日が一番に当たる東側に植えるとよく育つ
・     西日が当たるところでは疲れやすい
・     肥料をあげてもなかなか効かない
・     ちょっとちやほやすると(かわいがって水や肥料をあげると)、すぐに調子に乗って勢いよく伸びだして手に負えなくなる。
  
まるで、皆さんの周りにいる人のようだと思いませんか?

こうしたクセは、花そのものだけでなく、育つ環境によっても大きく変わります。花の育つ場所の土の性質(日当たり、水もち、土質)や、周囲の環境(施設の場合はハウスの環境)にも影響されます。

また、花を育てる農家の方にもそれぞれ「育て方のクセ」があります。肥料をやりたがる人、少しいじめ気味で作り上げる人などなど。本当に「いろいろ」です。

私はこれまで、花の新しい品種を作ったり、より良い育て方を探ったり、花農家の方が安定して生産できるようにお手伝いをする仕事をしてきました。花の種類や品種のクセや土地のクセを感じ取り、特に展示栽培などではきれいに育てあげることも研究者の仕事です。「これまでばっちりやってきた」、などとはとても言えませんが、日々の観察が最も大事だと感じています。

そんなお花ですが、食糧ではないこと以外に、野菜やお米と大きな違いがあります。流行や見映えがとても大事ですので、どれだけ作りやすく、品質も優れた品種でも時代が変われば新しい品種に入れ替わっていきます。さらに求められる色や形も様々です。そのため、一つの畑にいくつもの品種を育てるのが花づくりの特徴です。花の価値はそれぞれの品種の個性や多様性に支えられているのです。

私は、花づくりは「適地・適作・適人」だと考えています。花のクセ、土地のクセ、人のクセ。それらをうまく組み合わせられる生産者は、どんな作物を作っても大きな失敗が少ないものです。

それでも農業は「産業」です。目に見えない「クセ」を感じ取って育てる昔ながらの感覚では、これからの花づくりは難しくなっていくでしょう。これからの花づくりでは、花の「クセ」をどう読み解き、どう活かすかがますます重要になると感じていますし、実際に技術革新によってそういう技術が日々発展しています。

しかし、どれだけ技術が進んでも、花の「クセ」を感じ取り、AIに学ばせ、その結果とどう向き合うかを判断するのは人の役割です。また、相手が生き物ですし、最終目標は一つではありません。だからこそ花づくりは人の感性が重要だと思います。

花づくりは、花を愛でる人の感性と技術が合わさって初めて成り立つ仕事だと思うのです。私はそんな花づくり(花産業)を支えうる栽培技術の開発や品種の特性把握を栽培の面から研究しています。

そんな花づくりの世界をいっしょに考えてみませんか。

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花にはそれぞれ個性があります(写真左:スイートピー、写真右:ラナンキュラス)

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育成に関わった品種たちを東京の生花店がフェアをしてくれています。(写真提供 大花園)