国産の飼料で牛を育てる
私は家畜(特に牛)の栄養について研究をしています。大学に入学するまで牛に触れたことはありませんでしたが、実際に牛に携わってみると、クリっとした目とのんびりした性格、そして意外と人懐っこいところに惹かれました。たまに暴れることもありますが、人から牛が嫌がるようなことをしなければ、おとなしい動物です。

牛は4つの胃をもつ反芻動物といわれる動物で、最も大きい第一胃(焼き肉店では「ミノ」と呼ばれる部位)に、多くの微生物が住んでいます。この微生物は牛が食べた飼料(栄養素)を発酵させ、牛が利用できる栄養素を作り出しています。このような微生物の力によって牛は、人が利用できない食べ物(草)から人が利用できる食べ物(乳・肉)を作り出します。

研究内容を紹介する前に、「飼料(エサ)」についてお話します。牛をはじめとする家畜の飼料は、輸入に大きく依存しており、飼料の自給率は約27%と低い状況です。そのため、家畜の飼料は、世界情勢(為替相場や情勢悪化等)の影響を受けるため、飼料代の変動は、牛を飼育する畜産農家の経営悪化を招き、畜産物供給の不安定化をもたらします。
そこで、海外依存している飼料を国産の飼料に置き換えていくために、牛が飼料として利用できる資源を国内で見つけて、牛に給与し、牛の反応を見る研究をしています。これまで、草(飼料用トウモロコシや牧草)と食品製造副産物(食品の製造過程で発生するもの)のうち焼酎粕やビール粕、時には木材を使って、牛の栄養が満たせるような組み合わせを検討してきました。しかし、相手は動物なので、期待していた結果とは違う結果がでることもありますが、期待以上の結果(たくさん食べたり、たくさん牛乳を生産したり、大きくなったり)が得られたときは、達成感があります。そして、研究に参加してくれた牛たちにも感謝です。

宮崎県は、全国でも有数の畜産県です。畜産県にある宮崎大学農学部で新しい飼料資源の発見をしてみませんか?