羽ばたいた事業

吉田ナオト
農学部
応用生物科学科 
教授

共同研究・特許・応用分野など
  • アスベストは現在も多くの建材に存在しているため、倒壊家屋廃材等がれきの運搬、処理において、アスベストの飛散が懸念されます。
    本研究室は宮大法と呼ばれる独自のアスベスト検知法を開発し、手順の簡素化、測定時間の短縮化に取り組んでまいりました。
    宮大法は、土壌や建材中のクリソタイルアスベスト0.1%以上を検知します。 被検体1g程度をお送りいただければ、無償でアスベストの有無を判断いたします。 作業従事者の安全衛生等にお役立てください。

    問合せ先: 農学部 応用生物科学科 微生物機能開発学研究室
    E-mail: a04109uATcc.miyazaki-u.ac.jp(AT=@)
    FAX: 0985-58-7218

研究テーマ

新しいアスベスト検知技術(宮大法)の開発と地域貢献

研究概要

1.連携のきっかけ・必要性

寒天などのゲル上で細菌、遺伝子、微細針状物質の混合液に摩擦刺激を与えると、細菌の遺伝形質はいとも簡単に変化してしまうという不思議な物理現象が偶然見つかりました。この現象は後に「ヨシダ効果」と命名されました。ヨシダ効果とはゲルの摩擦場で穿刺中間体(ペネトロン)が形成される現象をいいます。ヨシダ効果の原理を利用することにより、これまでの技術思想を超越した画期的なアスベスト検知法が考案されました。
従来のアスベスト検知は、空気を吸引してフィルター上にアスベストを捕集、あるいは検体を粉砕し、特殊な顕微鏡で鉱物繊維数を計測することにより行われます。さらにX線回折像のパターンと強度からアスベストの重量を推定します。これらの機器はとても高価ですし、X線回折では他の粘土鉱物が共存していると回折像が重なってしまい、定量不可能になることがあります。ヨシダ効果を利用したアスベスト検知技術は宮大法と呼ばれ、安価かつ簡便に実施できる技術です。特に他の鉱物が共存しているような土壌や瓦礫、建材中のアスベストを検知するのに威力を発揮します。
※ 細菌細胞1個に微細針状物質1本が突き刺さった複合体

2.具体的な内容

宮大法は次の2点が明らかになったことより確立されました。
・ペネトロンは容易にプラスミド(抗生物質耐性遺伝子)を取込む。
・アスベストはヨシダ効果を発生させる微細針状物質である。
アスベスト検知に必要なものは、寒天ゲルの滑り摩擦、大腸菌、プラスミドです。アスベストが存在している場合、適切な条件下におくとヨシダ効果が発生し、ペネトロンが形成されます。ペネトロンは肉眼では観測することはできません。しかしペネトロンは容易にプラスミドを取込む性質があるので、抗生物質に耐性となった大腸菌を放出するようになります。抗生物質耐性になった大腸菌は抗生物質が存在しても活発に増殖し、肉眼で見えるようになります。つまりアスベストの存在を大腸菌がどれだけ抗生物質耐性に変化したのかということに置き換えて判断することができるのです。

3.現在までに得られている成果

アスベスト検知は常に標準物質(クリソタイルと呼ばれるアスベスト)と共に行われ、アスベスト含有量0.1%を見極めます。抗生物質耐性になったコロニー数が標準物質から得られるよりそれより多ければ、アスベスト有り。少なければ、アスベストなしと判断します。特にセメント、スレート、吹付け材、土壌中のアスベスト検知に威力を発揮します。わずかな訓練期間を経れば、誰でも検知できるようになります。

4.今後の展望

自然災害などによる被災地では、建築資材を含む多くのがれきが発生します。アスベストは現在も多くの建材に存在しているため、倒壊家屋廃材等がれきの運搬、処理において、アスベストの飛散が懸念されます。宮大法は災害復興などにおける作業従事者の安全衛生に役立てられます。
宮大法は、土壌や建材中のクリソタイルアスベスト0.1%以上を検知します。被検体1g程度をお送りいただければ、無償でアスベストの有無を判断いたします。作業従事者の安全衛生等にお役立てください。

関連リンク

その他の研究紹介、卒論・修論紹介