羽ばたいた事業

日吉先生の写真 日吉 健二
農学部
植物生産環境科学科
助教
共同研究・特許・応用分野など
  • 農業生産における機械化・自動化や小水力発電に関する研究に取り組んでいます。
    【共同研究】超小型水力発電装置,農機具や防除機の試作と性能試験
    【特許】水力エネルギー回収装置(特許第5359316)

研究テーマ

小さな流れで発電できる超小型水力発電装置
-養殖場や農業用水路などの未利用エネルギーを回収して生産コストの削減をめざす-

連携先:宮崎県工業技術センター、南九州向洋電機(株)、田中製作所 (株)ノアシステム、(株)興電舎、宮崎県工業会

研究概要

1.連携のきっかけ・必要性

CO2排出による地球温暖化や原子力依存の問題の対策として、化石燃料に頼りすぎない太陽光などの再生可能エネルギーの利用が注目されています。水資源の豊富な我が国の農業や水産業の現場には、用水路をはじめ多くの水の流れ(水力)が存在します。小規模ながらこの再生可能エネルギーを利用しないのは「もったいない」という考えから、身近な農業用水路や養殖場など水の流れの持つ「小水力エネルギー」を電気として効率よく取り出す『超小型水力発電装置』の研究がスタートしました。
 養殖場の経営者から「目の前をたくさんの水が流れているが、利用できないだろうか」という要望が寄せられたことがきっかけとなり、宮崎県工業技術センター、南九州向洋電機(株)、田中製作所、宮崎大学との連携研究が始まりました。その後、宮崎大学地域・産学連携センターの助言もあり、(株)ノアシステム、(株)興電舎、宮崎県工業会が加わり、超小型水力発電装置の高性能化・製品化を目指した研究が本格化しました(平成22年~平成23年度『新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業』)。

2.具体的な内容

先に述べたように、用水路や排水路には、小規模ですが水の流れ(小水力)がありますが、そのほとんどは未利用です。本研究では、この小水力で水車を回して電気を作り、農業施設における省エネルギー化、生産コストの削減を目指します。
実際の発電量は100W(エアポンプ1台分)から1kW(一般家庭に必要な電力の1/3)と小規模ですが、装置は小型軽量かつシンプルな構造のため、導入価格は安価です。このため、農業や水産業の経営者の支援に役立つと考えています。

概要図と装置の写真
3.現在までに得られている成果

①装置の要となる低コストで効率の良い回転羽根(ランナー)
回転羽根(ランナー)は水力を発電機に伝える装置の要です。開発したものは小型で直径は15cmしかありません。研究の結果、羽根の枚数が3枚だと、水の抵抗が少なく高回転で発電力が高いこと、羽根の取付角度やそり具合などの条件も明らかにすることができました。
②シンプルな装置の構造
開発したプロペラ式水車は比較的水車の軸の回転が速いため、増速器と呼ばれる装置が不要で、発電機と直結するシンプルな構造とすることができました。発電した電気はバッテリーに充電しておき、電気を使うときに一般家庭で用いる100Vに変換します。
③安定した発電能力
落差が3.5mであれば、水を約60L/s必要とし、常時400W発電できます。これは毎時400Wh発電でき、1日で9.6kWh、1年間で3,500kWh、単相100Vに換算すると約7万円に相当します。風力や太陽光と違って、水の流れは1日を通して非常に安定しています。

ランナー等の写真
4.今後の展望

①養殖場や中山間地域での利用
電気を売ることよりも発電した電気を自分のところで使用していただくことを想定しています。養殖場ではエアポンプや照明に使用できます。また、中山間地では動物による農作物への被害が深刻です。そのような地域では、動物の侵入を防ぐ電気柵の電源への利用が期待されています。
②海水や下水処理場での利用
トラフグやヒラメなど海水魚の養殖場では、水槽へくみ上げた水を海に戻す際に、小水力発電装置が活用できます。また、下水処理場でも、毎秒数百リットルの処理水が河川に投入されており、排水から電気が作られることになります。

メッセージ・インフォメーション

我が国において「小水力」はいたるところにあり、分散型のエネルギー供給システムといわれています。今後も、連携の絆を強くして、この事業を推進しエネルギーの地産地消を進めて行きたいと考えています。

その他の研究紹介、卒論・修論紹介