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2026.02.25

2025年度宮崎大学学生農学特別賞(研究部門)表彰式を開催しました

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令和8220日(金)、宮崎大学農学部では、農学分野における顕著な研究業績を残した学生を表彰する宮崎大学農学部表彰式(研究部門)を開催しました。

本制度は、学部学生および大学院生の研究意欲向上を図るともに、宮崎大学の研究成果の国際発信力を高めるため、国際的に評価の高い学術誌等に論文を掲載した学生を顕彰するものです。

今年度は9名が選ばれ、國武久登農学部長より賞状と記念品が授与されました。

その後、國武久登農学部長からお祝いの言葉が述べられ、続いて片岡寛章理事(研究・企画担当)からも祝辞が述べられました。

受賞した学生の皆さんおめでとうございます。今後より一層のご活躍を期待しています。

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△國武 久登 農学部長   △片岡 寛章 理事

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のうがく図鑑:https://www.miyazaki-u.ac.jp/agr/bo

受賞者の論文とコメントを紹介: ※後日掲載予定

各受賞者の論文概要

・氏名:米田 幸誠

論文名:Role of salicylic acid in low CO response in Arabidopsis

 受賞論文の発表誌名等:Plant and Cell Physiology

葉緑体における光合成CO2固定反応は、地球上の生命を支える最も重要な化学反応のひとつである。人類による化石燃料の使用により大気CO2濃度が上昇しているが、現在のCO2濃度は多くの植物が分類される「C3植物」にとっては十分ではない。施設栽培で用いられる「CO2施肥」は、植物にとって実際に大気CO2濃度が十分ではないことを示す好例である。本研究では、CO2不足の際に植物細胞内で起こる変化を調査した。まず、シロイヌナズナが低CO2条件下でサリチル酸(SA)を高蓄積することを見出した。さらに、突然変異体を用いた解析により、蓄積したサリチル酸はイソコリスミ酸合成酵素を介して合成されていることも明らかにした。このサリチル酸の蓄積は低CO2条件下での光合成関連遺伝子の発現抑制を引き起こすこと、さらに細胞死関連遺伝子の発現を調節することも明らかにした。以上の結果により、植物ホルモン・サリチル酸が植物の低CO2応答において重要な役割を果たすことを示した。



・氏名:小阪 天音
 論文名:Divergent Effects of Circoviridae Capsid Proteins on Type I Interferon Signaling
 受賞論文の発表誌名等:Pathogens


サーコウイルス科のウイルスは哺乳類や鳥類に感染した際重篤な症状を示す場合がある。豚サーコウイルス2型(PCV2)は、離乳後多臓器性発育不良症候群、豚呼吸器複合病、豚皮膚炎腎症症候群などの豚サーコウイルス関連疾患を引き起こし、畜産業に大きな影響を与えている。さらに、オウム嘴羽毛病ウイルス、イヌサーコウイルス、レース鳩におけるハトサーコウイルスは免疫抑制を引き起こし、その後、これらの宿主に二次感染を引き起こす。PCV2カプシドタンパク質はI型インターフェロン(IFN)シグナルを阻害することが証明されているが、サーコウイルス科による免疫抑制の分子機構はほとんど不明である。本研究では、これらの機能がサーコウイルス科のカプシドタンパク質間で保存されているかどうかを調べた。その結果、カプシドタンパク質の核局在は保存されているが、IFN-βシグナル伝達に対する作用は種によって異なり、免疫応答の調節におけるサーコウイルス科カプシドタンパク質の多様な役割が明らかになった。



・氏名:福嶋 優莉

 論文名:Conserved Yet Divergent Smc5/6 Complex Degradation by Mammalian Hepatitis B Virus X Proteins

 受賞論文の発表誌名等:International Journal of Molecular Sciences

本研究は、イエネコヘパドナウイルス(DCHBVXタンパク質によるSmc5/6複合体分解を初めて示したものである。B型肝炎ウイルス(HBV)はヒトに慢性肝炎や肝癌を引き起こすオルソヘパドナウイルス属のウイルスで、抗HBV因子であるSmc5/6複合体をHBxによって分解し、ウイルスRNA転写を促進する。このSmc5/6分解能は属内で保存されているとされる。2018年にはオーストラリアで猫のDCHBVが発見され、HBVと近縁と報告されたが、DCHBV Xタンパク質が同様のSmc5/6分解能を持つかは不明であった。

本研究では、霊長類およびネコ由来細胞を用いてオルソヘパドナウイルスXタンパク質のSmc5/6分解活性を比較し、DCHBV Xタンパク質が複数の細胞でSmc5/6を分解すること、さらにその活性が細胞種により異なることを明らかにした。また、DCHBV Xタンパク質はHBVに必須の宿主因子DDB1非依存的にSmc6を分解できることを示し、新規の高感度アッセイにより分解活性の定量化にも成功した。これらの成果はDCHBV感染症の治療研究だけでなく、ウイルスと宿主の進化的競争の理解にも寄与すると期待される。



・氏名:今川 匠

 論文名:Seasonal changes in the body size and nutritional components of Trichiurus sp. 2 and Trichiurus japonicus from the Miyazaki coast in Japan

 受賞論文の発表誌名等:Journal of Food Measurement and Characterization

日本近海には、「テンジクタチ(Trichiurus sp. 2)」と「タチウオ(Trichiurus japonicus)」という2種類のタチウオ類が生息している。宮崎県では、直近に実施した市場調査ではテンジクタチの方がタチウオよりも多く漁獲されていることが確認されている。本研究では、テンジクタチとタチウオの違いを明らかにするため、約2年間にわたり両種の栄養成分やうま味成分を分析し、その特徴を比較した。分析の結果、脂質含量から見たテンジクタチとタチウオの旬は、いずれも冬から春にかけてであり、味に深く関わるアミノ酸の分析では、テンジクタチは冬から春にかけてうま味成分が豊富になる傾向が見られた。これらの結果から、テンジクタチはタチウオに比べて脂のりが良く、栄養価の面でも優れた特徴を持つ魚であることを明らかにした。本研究により、宮崎で水揚げされるテンジクタチは栄養成分が豊富で、冬から春にかけて旬を迎えることを明らかにした。



・氏名:田中 里奈

 論文名:Evaluation of Phylloquinone Content in 42 Species Algae Inhabiting the Japanese Coast and Relationship between Phylloquinone and Chlorophyll Contents

 受賞論文の発表誌名等:Journal of Nutritional Science and Vitaminology

ビタミンKの一つであるフィロキノン(PK)は陸上植物に豊富で、そのPK含量はクロロフィル含量と高い相関性を持つことが知られている。しかし、藻類のPK含量とクロロフィル含量との相関性については知られていない。本研究では藻類におけるPK含量とクロロフィル含量との相関性について評価を行った。褐藻類(18種)、紅藻類(17種)、緑藻類(7種)を含む藻類のPKとクロロフィル含量を測定した。その結果、褐藻類にはPKが豊富に含まれていたが、紅藻類と緑藻類は少量であった。PKとクロロフィル含量において紅藻類と緑藻類は高い相関性は見られたものの、褐藻類では相関性は見られなかった。この結果は、陸上植物および海藻の紅藻類と緑藻類ではPKはクロロフィルを有する葉緑体で生成されるため相関性を示したが、褐藻類は、他の機構によってPKを生成することを示すものであり、褐藻類が他の藻類とは異なる進化を遂げていることに起因することを明らかにした。

 

・氏名:齋藤 江連

 論文名:A case of ectopic hepatocellular carcinoma around the common bile duct in a dog

 受賞論文の発表誌名等:The Journal of Veterinary Medical Science

胆石症の既往歴を有する去勢済み10歳齢雄のパグ犬において、超音波検査により肝尾状葉近傍に腫瘤が検出された。CT検査に続き開腹手術を実施したところ、腫瘤は赤色~暗赤色を呈する多結節性病変で、大きさは約3×3×4 cmであり、肝臓との連続性は認められなかった。病理組織学的には、軽度の異型性を示す肝細胞様の多角形腫瘍細胞がシート状に増殖し、門脈域構造は確認されなかった。免疫組織化学的検索では、腫瘍細胞はHepPar-1陽性、サイトケラチン7陰性を示した。以上の所見から、本症例は異所性肝臓組織由来の肝細胞癌と診断された。犬において異所性肝臓組織が腫瘍化した報告は極めて稀であり、本症例は2例目に相当する。さらに、本報告では既報では示されていなかった免疫組織化学的手法による詳細な病理学的解析およびCT検査による画像所見を提示しており、今後の診断および病態理解に資する重要な基礎的知見を提供するものである。



・氏名:赤池 友樹

 論文名:The effects of patch age and edges on understory tree distribution in an uneven-aged conifer plantation formed by small-scale clearcutting

 受賞論文の発表誌名等:Landscape and Ecological Engineering

本論文は、小面積皆伐により形成されたスギ・ヒノキ異齢林が下層広葉樹の多様性の保持に有効であるかを、下層広葉樹集団の林齢依存性と異齢パッチ間の林縁効果に基づいて評価したものである。下層広葉樹集団は、自然林における一斉攪乱後の林分発達と概ね同様の発達過程を示した。また、老齢スギ林の光透過性の高いスギ林冠が、隣接する若齢スギ林の林床の光環境を改善することによって幹の排除による多様性の低下を緩和するとともに、老齢スギ林下層の発達広葉樹集団が種子を供給することで下層の再侵入による多様性回復を促進する可能性を明らかにした。本研究は、主目的が木材生産でありながら、生物多様性の保全が重要視されている針葉樹人工林において、木材生産を持続しながら本来の樹木種多様性を維持・回復させる上での有効な管理方法を示した結果であり、小面積皆伐が持続的森林管理の1つとして活用されることが期待される。



・氏名:中田 彩斗

 論文名:Adaptive Responses to High‑fructose Corn Syrup Intake Under Energy Restriction in Early Middle-aged Female Mice

 受賞論文の発表誌名等:IN VIVO

女性ホルモンであるエストロゲンはインスリン感受性の維持に関与しており、閉経後にその分泌が低下すると糖尿病を発症しやすくなる。また、ショ糖に代わる甘味料として開発されたHigh Fructose Corn SyrupHFCS)の過剰摂取は、肥満や2型糖尿病のリスクに関連があると報告されている。そこで本研究では、閉経前の壮年期に相当する雌マウスを使用し、エネルギー制限下でのHFCS過剰摂取が女性に及ぼす耐糖能への影響を調べた。壮年期に相当する雌マウスには通常餌と脱イオン水を自由摂食させた(Control群)。比較対象として、10%HFCS水を自由摂水させ通常餌でControl群とペアフィードを行った群(HFCS群)を設定した。16週間の飼育後、経口ブドウ糖負荷試験およびインスリン負荷試験において血糖値に両群間で差はなかったが、インスリン分泌量はHFCS群で低下した。一方、血中のレプチンおよびインスリン様成長因子IHFCS群で上昇傾向を示し、グルカゴン様ペプチド-1は有意に増加した。以上のことから、雌マウスにおけるHFCS過剰摂取は、膵臓外ホルモンがインスリンに代わって血糖値を調整し、耐糖能を維持した可能性があると示唆された。



・氏名:銅坂 悠

 論文名:Distribution of domestic cat hepatitis B virus in cholangiocarcinoma and non-neoplastic liver tissue

 受賞論文の発表誌名等:The Journal of Veterinary Medical Science

本研究は、猫B型肝炎ウイルス(DCHBV)に感染した猫に発生した胆管癌の症例を病理学的および微生物学的に解析したものである。症例は猫、17歳避妊雌であり、エコー検査にて腹部に多発性の低エコー像を認めた。予後不良により安楽殺が行われ剖検に供された。肝臓腫瘤はびまん性に分布し、組織学的に腺房状に増殖する腫瘍細胞を認めた。免疫組織化学的染色(IHC)において腫瘍細胞はサイトケラチン7陽性およびHepPar-1陰性を示し、胆管癌と診断された。また、PCRでは肝臓組織から、IHCRNA in situ hybridization では腫瘍組織および非腫瘍肝組織内にDCHBVの存在を確認した。本症例は、DCHBV感染猫における胆管癌発生に関与する可能性を示唆する初の報告であり、猫における肝胆道系腫瘍の病態解明およびウイルス感染と発癌の関連理解に貢献するものである。