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獣医学科6年 久永草太さんの歌壇賞受賞作を読む

歌壇賞(主催:本阿弥書店)は未発表作の短歌30首を募る新人賞です。第34回は348篇の応募があったなか、久永草太さん(獣医学科6年、宮崎大学短歌会)の「彼岸へ」が受賞。同社刊行の「歌壇」2023年2月号に受賞作が掲載されました。

今回はその中からいくつか歌をご紹介したいと思います。

 糞尿も牛の身体も湯気たてる朝の直腸検査あたたか

「彼岸へ」は獣医学生の日々を描いていて、この歌は実習中の場面。直腸検査なので、牛の肛門から腕を入れているところです。その身体の何とあたたか、と感じ入っている作者。牛の体温やにおい、湯気の描写など鮮明で、命への慈しみが伝わってきます。

 ラーメンの味は何派か話しつつ解剖進む塩と答える
 笹舟を浮かべて彼岸へ押しやれど止まる 軽口ばかりの僕ら

解剖中にラーメンの話で盛り上がっていて楽しげですが、どこか実習に身が入っていない感じも残します。その辺りの態度に対して「軽口ばかりの僕ら」という自省につながるところが深いです。

 気を付けて刑法上は器物でもそいつ吠えたり愛したりする

犬のことでしょう。一読クスッとなりますが、動物をたんなるモノではなく、「吠えたり愛したりする」、つまり心がある存在として尊ぶ。獣医を学ぶ身として、そのことを忘れてはいけない、という作者にとっての自戒のようにも読み取れます。

 鳥を診る医者になりたし我を背に乗せくれるほどの巨鳥の医者に

「鳥を診る医者になりたし」と最初にズバッと言って、結句「巨鳥の医者に」に向かって迫力を増していく歌です。「なりたし」で一度切れるので、より言葉が強く響くよう。作者はなりたいものになれるのか。「彼岸へ」のその後が楽しみです。

▼獣医学科の久永さんが歌壇賞受賞を学部長に報告(2022.12.05)
 https://www.miyazaki-u.ac.jp/agr/news/award/post-157.html
▼市広報みやざき1月号で獣医学科6年の久永草太さんが紹介されました P11
 https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/fs/7/4/2/9/3/3/_/2023_1all.pdf


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