塩田先生の論文がCell Reportsに掲載されました

塩田拓也准教授は、大腸菌が効率よくタンパク質を外膜に組込み安定化させるためのシステムの一端を明らかにしました。以上の成果は、オーストラリアMonash大学との共同研究として、2018年5月29日発行のCell Reports誌に掲載されました。

  • (発表論文)Gunasinghe, D. S.§, Shiota, T.§, Stubenrauch, C. J, Schulze, K. E., Webb, C. T., Fulcher, A. J., Dunstan, R. A., Hay, I. D., Naderer, T., Whelan, D. R., Bell, T. D. M., Elgass, K. D., Strugnell, R. A.,and Lithgow, T.* (2018) The WD40 protein BamB mediates coupling of BAM complexes into assembly precincts in the bacterial outer membrane. Cell Rep., 2018 23 (9), 2782-2794.
    §These authors contributed equally.
  • URL: https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(18)30671-5

 大腸菌等のバクテリアには、外側にさまざまなタンパク質を持っています。これらは栄養や老廃物を通したり、人体に悪影響を与える毒素の排出に関わったり、感染を開始するために人体に接着する等、重要な働きをします。これらタンパク質はバクテリアの内部で作られますが、外側で機能するためには、バクテリアの外部に運ばれ、正しく機能できる形に組立てられる必要があります。このタンパク質の輸送、組立ては、BAM複合体とよばれるバクテリア外側に存在するタンパク質でできた分子機械によって行われます。これまで、BAM複合体がどのようなパーツから出来上がっているか、それらがどのような形をしているかについての研究は行われていましたが、大腸菌の外側にどのような分布で存在するか?また、どのように効率的にタンパク質の輸送、組立てを実現しているかは不明でした。
 私たちは、BAM複合体の分布を調べるためdSTORM超解像度顕微鏡という、生物中に存在する分子を非常に詳細に解析できる機械を使って調べました。その結果、BAM複合体は複数が集まりクラスターを形成していることが分かりました。またクラスターを形成するためにはBAM複合体のパーツのひとつである、BamBというタンパク質が必要であることを突き止めました。
 次に、大腸菌がなぜBAM複合体のクラスターを形成しているかを、EMMアセンブリーアッセイという新しい研究方法を開発し調べました。バクテリアの外側には、3つで1組(トライマー)になるタンパク質が存在します。EMMアセンブリーアッセイでの解析の結果、BAM複合体によるクラスターは、効率よくトライマーを作るのに重要であることが分かりました。すなわち、3つのパーツがそれぞれ近いBAM複合体で、輸送、組立てられることで、素早くパートナーを見つけトライマーになれることが分かりました(図参照)。私たちは、このBAM複合体のクラスターをAssembly precinct(タンパク質アセンブリーのための区域)と名付けました。以上の成果は、近年拡大する薬剤耐性菌等の問題に対し、バクテリアの性質を理解するという基礎的な知見を蓄積する重要な成果です。

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