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トップ ニュース&イベント 研究 獣医学科3年の福嶋優莉さんと獣医学科・齊藤暁 准教授らの研究チームの研究成果が国際学術誌International Journal of Molecular Sciencesに掲載されました
2025.07.18

獣医学科3年の福嶋優莉さんと獣医学科・齊藤暁 准教授らの研究チームの研究成果が国際学術誌International Journal of Molecular Sciencesに掲載されました

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DCHBV(Domestic Cat Hepatitis B Virus)は、2018年にオーストラリアの猫で初めて報告されたB型肝炎ウイルス(HBV)に類似する新興ウイルスで、慢性肝炎や肝細胞がんとの関連が世界的に注目されています。


研究チームは、日本国内で初めてDCHBVを同定することに成功し、さらに世界で初めてこのウイルスがヒトのHBVと同様に、ナトリウム胆汁酸共輸送体(NTCP)を侵入レセプターとして利用することを明らかにしています。


本研究では、HBVおよびDCHBVを含む多様なヘパドナウイルスのXタンパク質に着目し、宿主細胞内の抗ウイルス因子であるSMC5/6複合体の分解機構を詳細に解析しました。
HBV Xタンパク質(HBx)はDDB1という細胞因子を介してSMC6を分解することが知られていますが(下図)、本研究ではDCHBV Xタンパク質がDDB1に依存せずにSMC6を分解することを初めて解明しました。さらに、赤色蛍光タンパクを利用した独自の高感度分解アッセイを開発し、分解活性を定量的に評価することにも成功しました。これにより、ウイルスと宿主の「進化的軍拡競争」における適応戦略の一端を示すとともに、DCHBV感染猫における病態理解につながることが期待されます。


この成果は、ヘパドナウイルス感染症の病態解明や新規治療法開発に貢献するだけでなく、動物と人の健康を守る「ワンヘルス」アプローチにも資するものです。

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▲(BioRender:https://www.biorender.com/)により作成

本成果については、2025年7月15日に国際学術誌International Journal of Molecular Sciences(IF:4.9)に掲載されました。今後、分子ウイルス学を基盤とした最先端の研究を通じて、人獣共通感染症の解明と制御に挑戦し、社会に貢献することを目指しています。

▼掲載された論文
https://www.mdpi.com/1422-0067/26/14/6786