ニュースリリース
2021年08月05日 掲載
新規プロトン伝導性電解質に関する研究成果が発表されました。本研究成果により、プロトン伝導性電解質や中温動作固体酸化物形燃料電池の開発が大幅に加速されることが期待されます。本成果は、米国化学会の国際学術誌「ACS Energy Letters」のオンライン速報版で公開されました。論文の発表者には工学教育研究部の奥山勇治教授が含まれています。
AIモデルの開発により、たった1回の実験で新規プロトン伝導性電解質を発見! ~中温動作燃料電池に用いる電解質材料の開発加速化に期待~
九州大学エネルギー研究教育機構(Q-PIT)、稲盛フロンティア研究センターおよび工学府材料物性工学専攻の山崎仁丈教授は、九州大学稲盛フロンティア研究センターの兵頭潤次特任助教、九州大学工学府材料物性工学専攻博士後期課程の辻川皓太氏、岐阜大学工学部および理化学研究所の志賀元紀准教授、宮崎大学工学教育研究部の奥山勇治教授らと共同で、400℃程度で動作する固体酸化物形燃料電池(SOFC)に必要なプロトン(H+)伝導性電解質を探索する人工知能(AI)モデルを開発し、たった1回の実験で新規プロトン伝導性電解質を発見しました。これは、実験とデータ科学の融合により得られた研究成果です。開発したモデルを活用することで、プロトン伝導性電解質や中温動作固体酸化物形燃料電池の開発が大幅に加速されることが期待されます。
金属酸化物にプロトン伝導性を発現させるためには、構成元素の一部をアクセプター元素で置換し、酸素欠損欠陥δを生成、プロトン導入反応を誘起する必要がありますが、新規材料においてどのような元素を組み合わせればプロトン伝導が発現するのかわかっていません。材料を構成する元素の組み合わせは無限にあるため、新規プロトン伝導性電解質の開発は、従来、開発者の経験と勘に基づいて行われていました。
本研究グループは、アクセプター置換したペロブスカイト酸化物(ABB'O3-δ)を対象とし、これまでに見いだされたプロトン伝導性材料における構成元素の特徴やプロトン導入の物理化学的知見をAIモデルに学習させ、材料のプロトン濃度の温度依存性を予測させることで、未知材料SrSn0.8Sc0.2O3-δがプロトン伝導性電解質であることをたった1回の実験で発見しました(図1)。
本研究は、JST戦略的創造研究推進事業CREST(JPMJCR18J3)、科学研究費補助金(JP15H02287、 JP18H01694、JP16H02866、JP20H05884)、JST戦略的創造研究推進事業さきがけ(JPMJPR16N6)の支援を受けました。
本研究成果は、日本時間2021年8月4日(水)に米国化学会の国際学術誌「ACS Energy Letters」のオンライン速報版で公開されました。
研究者からひとこと:1981年にプロトン伝導性酸化物が発見されてから40年経ちましたが、プロトン伝導を示すペロブスカイトは100程度しか見つかっていません。本手法により、新規材料探索が大幅に加速されることを期待しています。
(図1)開発したAIモデルが未知材料SrSn0.8Sc0.2O3-δのプロトン伝導性を予測、それを実証しました。
〇宮崎大学プレスリリース URL: https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20210804_01_press.pdf
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