【概要】 宮崎大学(鮫島浩学長)は、ヒトのB型肝炎ウイルスに近縁で、猫の慢性肝炎との関連が疑われる猫ヘパドナウイルスを日本で初めて同定しました。これは農学部(國武久登学部長)に所属する、髙橋和暉獣医学科5年生(獣医微生物学研究室)、農学部附属動物病院の金子泰之准教授(動物病院研究室)、獣医学科の齊藤暁准教授(獣医微生物学研究室)らと、複数の獣医師の共同研究チームによる研究成果です。 B型肝炎ウイルス(HBV)はヒトにおける慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌の原因ウイルスの一つで、2002年の世界保健機関(WHO)の推計では、HBV感染者は世界中で20億人、HBV持続感染者は3.5億人、年間50-70万人の人々がHBV関連疾患で死亡していると報告されています。 近年、B型肝炎ウイルスに近縁で、猫の慢性肝炎との関連が疑われる猫ヘパドナウイルスが海外の複数の国で報告されていますが、日本国内では未だ同定の報告はなく、その感染状況は不明でした。そこで、今回、日本国内における感染状況を明らかにするため、国内の複数動物病院の協力のもと、128匹のネコ血液サンプルを用いて猫ヘパドナウイルスのウイルスDNAの検出を試みました。解析の結果、128検体中1検体(全検体の0.78%)がウイルスDNA陽性でした。また、ウイルスゲノム配列の解析の結果、ポリメラーゼ蛋白質、表面蛋白質およびコア蛋白質の配列については、海外のウイルス株と類似していていましたが、X蛋白質については他の株との相違が大きいことがわかりました。このことから、今回日本で初めて同定された猫ヘパドナウイルスは日本独自の株であることが示唆されました。猫ヘパドナウイルスの進化過程や、猫の健康状態に与える影響については今後のさらなる解析が必要です。 本研究成果は、2022年3月24日に国際学術誌『Journal of Veterinary Medical Science』のオンライン速報版で公開されました。