宮崎大学
ニュースリリース

効果は4年以上!?接種後長期にわたり免疫の持続が期待される口蹄疫ワクチンの開発に関する研究成果が発表されました。

2021年09月22日 掲載

口蹄疫ワクチンの開発に関する研究成果が発表されました。
本研究成果は、接種後長期にわたり免疫の持続が期待される口蹄疫ワクチンの開発につながるものと期待され、英国免疫学会国際学術誌 『Immunology』のオンライン版で公開されました。
論文の発表者には、農学部獣医学科 乗峰 潤三教授、獣医学科 三苫 修也研究員も含まれています。



長期持続型口蹄疫ワクチンの開発とその評価

本研究成果のポイント
口蹄疫ウイルスに対する新たな抗原決定基(エピトープ)の同定に成功
口蹄疫ワクチン接種後4年以上の牛で口蹄疫ウイルス特異的な免疫細胞が存在
口蹄疫だけでなく牛ウイルス感染症における長期持続型の免疫賦与が出来る次世代型ワクチンの開発への手がかり

≪発表概要≫
宮崎大学(産業動物防疫リサーチセンター・農学部獣医学科 乗峰 潤三教授、獣医学科 三苫 修也研究員ら)と英国のパーブライト研究所の研究者らが共同研究で、細胞性免疫が認識する口蹄疫ウイルスの部位を新たに同定しました。この同定には牛で初めて牛MHCクラスIIテトラマーという技術が使われることで可能となりました。また、彼らは口蹄疫ウイルス特異的な免疫細胞が口蹄疫ワクチン接種から4年以上経過した牛に存在することを証明しました。これは口蹄疫ワクチンが免疫のために長期間働いていたことを示唆するものです。
口蹄疫は11年前の宮崎でも猛威を振るった悪性越境性動物感染症の一つであり、牛、豚、羊等、様々な家畜や野生動物に影響を与える感染症でもあります。その被害額は国によっては約二兆円にものぼります。口蹄疫のコントロールには効果的なワクチンが必要ですが、ワクチンの評価に重要な、免疫反応増強の引き金となる部位の同定は今までの技術では非常に難しい状況にありました。英国パーブライト研究所との共同研究の中で、宮崎大学の乗峰教授及び英国パーブライト研究所のSeago主席研究員らは、口蹄疫への免疫反応に対してヘルパーT細胞という免疫細胞に注目しました。このヘルパーT細胞は口蹄疫感染時に他の免疫機構を活性化させて戦わせる免疫の司令塔のような細胞で、口蹄疫ウイルスのある部位を特異的に"記憶"することが出来ます。日英共同研究グループは口蹄疫ウイルス構造蛋白の断片を搭載させた人工の牛MHCクラスIIテトラマー(テトラマー)と呼ばれる分子を作製し、四ヶ所の口蹄疫ウイルスの宿主認識部位を同定しました。このうち、三ヶ所は新しい宿主認識部位であることがわかっています。これは口蹄疫ウイルスの断片とテトラマーがうまく組み合わさることで、口蹄疫ウイルス特異的ヘルパーT細胞に接着する"分子マグネット"のような性質を利用した研究成果です。また、口蹄疫ワクチンを接種して四年以上経っている牛においても口蹄疫ウイルスに対する獲得免疫をテトラマーにより定量を行えることを示しました。これ、今後ワクチンの効果を高める研究に活かされていきます。
今回の共同研究者でもあるJulian Seago主席研究員はこのように語っています、
「テトラマーという"マグネット"が無い状態でウイルスの各部位にどの細胞が反応しているのかを明らかにすることは、干し草の山の中から針を手作業で見つけるようなものです。このテトラマーを作製できたことで我々は本当の意味で口蹄疫に対する免疫反応という長い旅路における地図作りを始めることが出来、またワクチンによって長期的に持続する免疫を賦与するために、どのウイルスの部位が重要かということを明らかにすることが出来ます。」
本研究成果は、2021年5月18日付で英国免疫学会国際学術誌 『Immunology』においてオンライン先行公開されています。

★★★2021.11.6宮崎日日新聞朝刊の1面に掲載されました!★★★



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上図:口蹄疫ウイルスの断片を牛MHCクラスII分子に搭載し、正しい組合せの分子複合体(テトラマー)のみ、口蹄疫ウイルスに対する免疫記憶細胞にマグネットのように接着する。テトラマーによって補足された細胞は、テトラマーに蛍光標識がついているので、一つ一つ検出することが出来る。

下図:今回の研究でもう一つの発見は、4年7か月以上もの間維持されてきた口蹄疫ウイルス特異的な免疫記憶細胞の存在を証明できたことである。これらの細胞はヘルパーT細胞といいインターフェロンガンマ等ウイルス感染細胞に対抗する物質を出しながら、他の免疫細胞も活性化させる獲得免疫の司令塔のような役割を果たす。



〈原著論文情報〉
Shuya Mitoma, Brigid Veronica Carr, Yongjie Harvey, Katy Moffat, Satoshi Sekiguchi, Bryan Charleston, Junzo Norimine and Julian Seago
"The detection of long-lasting memory foot-and-mouth disease (FMD) virus serotype O-specific CD4+ T cells from FMD-vaccinated cattle by bovine major histocompatibility complex class II tetramer" Immunology, https://doi.org/10.1111/imm.13367

★☆2021.11.6宮崎日日新聞朝刊の1面に掲載されました!☆★
https://www.the-miyanichi.co.jp/kennai/_57865.html

プレスリリース(2021.9.22)
https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20210922_01_press.pdf

〇研究者データベース
農学部獣医学科 乗峰 潤三 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100000802_ja.html

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