宮崎大学
ニュースリリース

新型コロナウイルス「ラムダ株」に関する研究成果が発表されました

2021年12月22日 掲載

新型コロナウイルス「ラムダ株」に関する研究成果が、米国科学雑誌「Cell Reports」オンライン版に掲載されました。
この研究には、農学部獣医学科の齊藤 暁准教授が研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」(注1)メンバーとして参加しています。



SARS-CoV-2ラムダ株のウイルス学的・免疫学的性状の解明

1.発表のポイント:
◆ 今夏に南米で発見された新型コロナウイルス「ラムダ株(C.37系統(注2))」は、南米大陸諸国に伝播し、「注視すべき変異株(VOI:variant of interest)(注3)」に認定されている。
◆ ラムダ株のスパイクタンパク質(注4)は、T76IとL452Qというふたつの変異によって、ラムダ株の感染力が増強されていることを明らかにした。
◆ ラムダ株のスパイクタンパク質は、N末端領域に存在する変異によって、感染増強抗体(注5)による感染促進効果を受けやすく、かつ、中和抗体(注6)に抵抗性を示すことを明らかにした。

2.発表者:
佐藤 佳(東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野 准教授)
※研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」(注1)メンバー
木村出海(東京大学医科学研究所 システムウイルス学分野 大学院生)
小杉雄介(東京大学医科学研究所 システムウイルス学分野 大学院生)
徳永研三(国立感染症研究所 主任研究官)
上野貴將(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 教授)
高折晃史(京都大学 大学院医学研究科 教授)
本園千尋(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 講師)
齊藤暁(宮崎大学 農学部獣医学科 准教授)
中川草(東海大学医学部 講師)
佐藤佳(東京大学医科学研究所  准教授)

3.発表概要: 
東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤准教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」は、新型コロナウイルスの「注視すべき変異株(VOI:variant of interest)」のひとつである「ラムダ株(C.37系統)」が、従来株に比べて感染力が高いこと、そしてその高い感染力は、ラムダ株のスパイクタンパク質特有の、T76IとL452Qというふたつの変異によって規定されていることを明らかにしました。また、ラムダ株のスパイクタンパク質は、N末端領域に存在する変異によって、感染増強抗体による感染促進効果を受けやすく、かつ、中和抗体に抵抗性を示すことを明らかにしました。本研究成果は2021年12月18日、米国科学雑誌「Cell Reports」オンライン版で公開されました。

4.用語解説:
(注1)研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」
東京大学医科学研究所 システムウイルス学分野の佐藤准教授が主宰する研究チーム。日本国内の複数の若手研究者・研究室が参画し、研究の加速化のために共同で研究を推進している。現在では、イギリスを中心とした諸外国の研究チーム・コンソーシアムとの国際連携も進めている。
(注2)ラムダ株(C.37系統)
新型コロナウイルスの流行拡大によって出現した、顕著な変異を有する「注視すべき変異株(VOI:variant of interest)」のひとつ。今夏に南米ペルーで出現し、アルゼンチンやペルーなどの近隣諸国に流行拡大した。
(注3)注視すべき変異株(VOI:variant of interest)
新型コロナウイルスの流行拡大によって出現した、顕著な変異を有する変異株のこと。現在はまだひとつの大陸での複数の国々での流行に留まっているが、将来的に他の大陸にも伝播し、パンデミックの要因となる恐れがあると考えられる変異株がここに分類される。2021年12月現在、ラムダ株(C.37系統)とミュー 株(B.1.621系統)がここに分類されている。なお、パンデミックの主流となっている、あるいはその恐れがきわめて高い変異株は、「懸念すべき変異株(VOC:variant of concern)」に分類されている。2021年12月現在、「懸念すべき変異株」には、アルファ株(B.1.1.7系統)、ベータ株(B.1.351系統)、ガンマ株(P.1系統)、デルタ株(B.1.617.2系統)、そして、オミクロン株(B.1.1.529株)が分類されている。
(注4)スパイクタンパク質
新型コロナウイルスが細胞に感染する際に、新型コロナウイルスが細胞に結合するためのタンパク質。現在使用されているワクチンの標的となっている。
(注5)感染増強抗体
大阪大学の荒瀬尚教授の研究グループによって発見された、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を標的とし、その感染を促進させる機能を持つ抗体のこと。
(注6)中和抗体
獲得免疫応答のひとつ。B細胞によって産生される中和抗体による免疫システムのこと。

R1.jpg

本研究の概要:
(図左) 新型コロナウイルスラムダ株のスパイクタンパク質が持つ変異とその機能。RBD(受容体結合部位)に存在するL452Q変異が、HLA-A24を介した細胞性免疫からの逃避と、感染力の亢進を担う。一方、NTD(N末端部位)に存在する複数の変異が、中和抗体に対する抵抗性と、感染増強抗体からの影響を規定する。
(図右)ラムダ株出現から流行拡大までの経緯。昨年7月に出現し、その後、「RSYLTPGD246-253N」という特徴的な変異を昨年11月頃に獲得し、流行拡大した。



*新型コロナウイルス感染症COVID-19は、動物由来の感染症であると言われています。
 医学獣医学総合研究科のある宮崎大学では、「獣医学」から見た"ヒトへの感染症"の研究がしやすい環境が整っています。
 東進ハイスクール×宮崎大学「AI×農業・医学×獣医学!?分野を超えた学びに迫る!」【6分】

・プレスリリース 2021.12.22
https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20211222_01_press.pdf

〇研究者データベース
 齊藤 暁 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100002260_ja.html

・米国科学雑誌「Cell Reports

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