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Vol.6 3月17日を少し過ぎてSDGsを考える

企業の方へ
2022.3.28

『お気に入りの本や音楽と旅するように、このコラムを読みながら地域を旅してもらいたい』。そんな気持ちのまにまに綴る、Capa+部門長コラム。(不定期で掲載します)

なぜ3月17日?

皆さんは3月17日が「みんなでSDGsの日」ということを知っていますか。  17のゴールを目指した取り組みをみんな(3)でやっていきましょう!という意味で、3月17日はSDGsにとってとても大事な日なのです。
私は昨年4月1日に県内の産学金労官の主要な組織が集まって結成した「宮崎 SDGsプラットフォーム(外部リンク)」の設立に関わらせてもらいましたが、その記念すべき発起人会は2021年3月17日でした。

持続可能性とは何?

SDGsはSustainable Development Gols=持続可能な開発(発展)目標ですが、それでは持続可能性とは何でしょうか。

Capa+は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています


「今のまま、これまで通り続けられること」と説明される方や理解している方がたくさんいます。私は少し違った考え方をしています。
民俗学者の柳田國男さんが「豆の葉と太陽」の中で椎葉の山奥の吊り橋を描いています。谷川の両岸に4本の樹齢100年を超えた杉の木があり、それを使って見事な橋が架かっています。しかし柳田さんはその吊り橋の美しさを褒めているのではありません。
その4本の100年杉のすぐ横に樹齢10年未満の若杉が4本育てられているのです。今その若杉を育てている村人はその木を使った吊り橋を渡ることはないかもしれません、次の世代又はその次の世代の村人が谷川を渡って行き来することができるよう、今ある樹木を使い尽くすのではなく、しっかりと備え、育てている、柳田氏はこれを「悠久」という言葉で表現しています。私は、次の世代にために必要であれば今を抑制をすること、育てる努力をすることも含めて備えること、これが持続可能性ではないかと考えています。

SDGsの各目標は相矛盾している?

「SDGsの中で環境を大事にすれば経済が弱くなる、経済を頑張ると社会に影響が出てくるなど、相矛盾する内容が含まれている、きれいごとだ!」と批判される方がいます。
果たしてそうでしょうか?私はそう考えません。SDGsは、「社会」「経済」「環境」の三つの分野について統合的に取り組むことを定めた意欲的な取組です。確かに産業革命以降、特に新自由主義の台頭の中で、経済を最優先にした結果、地球環境の悪化や格差や不平等の拡大という環境や社会の面で課題が拡大してきました。
しかし「人間は知恵の動物」です。これまで三つの要素が対立していたことは事実であったとしても、私たちの次の世代の豊かな生活のために、社会、経済、環境のバランスの取れた社会を実現することは可能だし、従来の価値観にとらわれていては持続可能性はないと考えるべきだと思います。

「SDGsは大衆のアヘン」と斎藤幸一さんが言っているけれど?

 確かに斎藤幸平さんはその著書「人新世の資本主義」の中で、そのように述べています。私はその通りだと思います。というのは斎藤さんの指摘は現在の地球環境の加速度的な悪化を直視することなく、SDGsに取組んだフリをすることの危険性に警鐘を鳴らしたものだと考えます。
「SDGsウォッシュ」はいけません。でもそれぞれの立場でまたそれぞれのできる方法で、例えば食品ロス削減に取組んだり、海外の難民の支援を行うこと等はアヘンなどではなく、とても大切なことだと思います。

17の目標のうちどれが最も大事?

よくある質問です。そうですね、貧困や飢餓の解決のためにも教育が重要ですね、そして現在のリスクを考えると地球環境問題は喫緊の課題です、またジェンダー平等は普遍的な課題です。更に最近のウクライナ情勢等を見るにつけ「平和」の大事さを実感します。
もちろん17のゴールは全て大事です。ただ敢えて言わせていただければ、私は17番目の「パートナーシップ」が大事だと答えます。
「愚かな者は壁を築く、賢い者は橋を架ける」という言葉があります。今の社会、世界中で壁を築く傾向が広がっています。繰り返しますが私たちは知恵の動物です。この時代を生きている様々な地域の人のために、そして次の世代の方のために、隣の人と、隣の地域と、多くの国々と橋を架けていく、私はそんなたくさんのことはできませんが、でもそんな気持ちを持つ人でありたいと考えています。


この文章を書いている3月24日は宮崎大学の卒業式でした。皆さんにお祝いの言葉を贈るとともに、「持続可能な社会の実現のためにそれぞれの場所ややり方で頑張りましょう!」とエールを送ります。

文:永山 英也 Nagayama Hidenari
   Capa+部門長/宮崎大学長特別補佐