宮崎大学
大学案内

令和5年度卒業証書・学位記・修了証書授与式告辞(令和6年3月22日)

告辞

本日ここに、学部卒業生、別科修了生、研究科修了生、関連各位をお迎えし、令和5年度の卒業式、学位記授与式を挙行出来ることを心から嬉しく思います。
卒業生の皆さん、あらためまして、卒業おめでとうございます。心から祝福の言葉を贈ります。
この日を待ち望んでおられたご家族の皆様はじめ、関係者の皆様も、さぞかし、お喜びのことと存じます。重ねて、お祝い申し上げます。

新型コロナウイルス感染症が落ち着きつつある今年度は、コロナ前と同様の式典を挙行することができました。われわれ教職員一同も本当に喜ばしく思っています。

今回、総計1,297名が卒業・修了を迎えられました。
学士課程では教育学部114名、医学部167名、工学部346名、農学部262名、地域資源創成学部84名に卒業証書・学位記を授与いたしました。
大学院修士課程では教育学研究科22名、看護学研究科13名、工学研究科156名、農学研究科85名、地域資源創成学研究科5名、医学獣医学総合研究科13名に、そして、大学院博士課程では医学獣医学総合研究科博士課程17名、農学工学総合研究科博士後期課程12名に学位記を授与いたしました。
さらに、畜産別科でも1名の修了生に修了証書を授与いたしました。

本日、卒業式を迎えた1,297名の皆さんは、大学生活の多くを新型コロナウイルス感染症によって様々な影響を受けました。さまざまな困難があったと思います。それを乗り越えて、本来の目的を達成した皆さんの努力に心から敬意を表します。この経験を人生の糧として、是非、活かして下さい。

さて、大学における卒業は、学業を終えるという意味と共に、人生の新たな旅立ちを意味するcommencementでもあります。今日の卒業式、この人生の新たな門出にあたり、私からメッセージをお伝えします。

最初は、学問の自由と平和に関して、です。
大学では学問の自由が保障されており、同時に、自律した責任ある行動も求められています。この学問の自由こそが新たなイノベーションの源であり、独創性を育む母体であり、より良い社会を作る機動力です。
ただ、残念なことに、学問の自由を脅かす事態が世界各地で起こっています。平和な社会無くしては、学問の自由は達成困難でしょう。

日本は、約80年に亘り平和を維持していますが、平和こそが、最も重要な社会基盤であるということを、この卒業にあたり、認識していただきたいと思います。平和を維持し、平和をもたらすために自分に何ができるのか、この機会に一度、じっくりと考えてください。平和のバトンを皆様に託します。

2番目は、歴史に学ぶことの重要性について、です。
人口に膾炙された文言ですが、賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ、という箴言があります。個人の経験は限られていますが、4,5千年の歴史的記述の中には、事実の顛末が数多く述べられています。人類は、長い歴史の中で同様の局面に繰り返し遭遇し、いかに成功したかも、いかに失敗から立ち直ったか、歴史が明示しています。困難な時局には、個人の経験ではなく、歴史に学ぶことが重要です。
現代社会は不確定要素に満ちており、しかも急速に変化し続けています。このような社会は、歴史上、未経験のものかもしれません。ではこの複雑な社会に入っていく皆さんには、何が求められているのでしょうか。
その一つは、精神的な強かさ、心の平静さ、打たれ強いレジリエンス、ある種の鈍感力です。このためには是非、歴史に学び、先人たちがどのように立ち向かったのかを、振り返ってください。洋の東西を問わず、有用な書籍が沢山あり、必ず自分を励ましてくれる本に巡り合うことができます。そのような書物を書斎に置き、座右の書として時局に合わせて活用してください。

3番目に、独創性です。
独創性は特別な人にのみ与えられた才能なのでしょうか?そうではない、と考えます。誰もが大なり小なり、独創性を持っています。独創性は、言い換えると、それぞれの個性に繋がる考え方、とも言えるでしょう。例えば大学時代にまとめた卒業論文も、レポートも、試験答案の記述も、それぞれの独創性に裏打ちされたものであったはずです。物事を多面的に見て、自分の考えをもう一歩深く考察することで、独創的な見方が浮かび上がってきます。大学生活の中で経験した、それぞれの個性的な考え方、すなわち独創性を、これからの実社会で活かしてください。そのためには、社会で起きていることに対して、自分はどう考えるのかを常に問い続けることです。自分なりの見方の中に潜む独創性を大きく展開してください。

 最後に、楽しむことの重要性について話します。
先人の言葉に、これを知る者はこれを好むものに如かず、これを好むものはこれを楽しむものに如かず、という言葉があります。
言うまでもなく、知識を持っているということは重要です。ただ、知っているだけの人と、その内容を知った上でそれを好きである人を比較すると、好きである人に軍配は挙がります。
この、好む、好まないは、実は感情の問題です。一方、楽しむか、楽しまないかは、理性が関与します。すなわち、たとえ感情的には好まないことであっても、それを理性で楽しむことができれば、それが最も良い状態と言えるでしょう。
世界情勢が複雑であっても、社会の流れが激流であっても、自分なりにそれを楽しむことが重要で、その過程に独創性が存在し、そこに人生の真理もある、と言えます。これから、さまざまな役目を担うに当たって、まず知ること、そして可能であれば好きになること、さらにそれを理性として楽しむこと、が大切です。社会の変化に応じて、自分の仕事を楽しむ習慣を持つ限り、人生は豊かに開けていきます。Always feel happy、この精神を身につけて、それを自分の独創性としてより一層磨きをかけ、柔軟な精神力に育て、これからの人生を切り拓いて欲しいと思います。

 宮崎大学は、本年、歴史的な節目の年を迎えました。教育学部は140周年、農学部は100周年、工学部は80周年、医学部は50周年、最も若い地域資源創成学部は9期生を迎えます。この長い歴史の一ページに、本日、宮崎大学から飛び立っていく皆さんの名前も刻み込まれます。宮崎大学はこれからも皆さんにとって学問のルーツであり、人生の軸であり続けます。学問は、大学の外でも、仕事をしながらでも、持続することが可能ですし、また、生涯学習こそが必要とされている資質であります。母校の門戸は常に開放されています。この、歴史ある宮崎大学をルーツとして、様々なことにチャレンジし、大きな枝を伸ばし、人生の充実した果実を実らせて下さい。

あらためまして、卒業を、そして人生の新たなスタートを、心から祝福し、告辞といたします。

令和6年322
宮崎大学長 鮫島 浩

Get ADOBE READER

PDFファイルをご覧いただくためには、Adobe Reader(無償)が必要です。
Adobe Readerは Adobe Readerのダウンロードページよりダウンロードできます。

文字サイズ 標準 拡大


PAGE TOP

宮崎大学
MENU CLOSECLOSE