宮崎大学
ニュースリリース

ワクチン3回接種で"オミクロン株"に効果! ~新型コロナ"オミクロン株"に関する研究成果が発表されました~

2022年02月03日 掲載

新型コロナウイルス「オミクロン株」に関する研究成果が発表されました。

本研究により、オミクロン株は治療用抗体製剤や2回のワクチン接種では制御が難しいことがわかりましたが、治療用抗ウイルス薬やブースター接種(3回目のワクチン接種)の有効性も明らかになりました。

研究成果は、2022年2月1日に科学雑誌「Nature」のオンライン版で公開されました。
掲載論文のCo-first author(共同第一著者)として、農学部獣医学科 齊藤 暁 准教授が名を連ねています。

新型コロナウイルスについて、本学が関与した意義のある研究成果の採択が続いています!

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SARS-CoV-2オミクロン株による中和抗体回避と感染指向性の変化

1.発表者:
佐藤 佳(東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野准教授)

※研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」(注1)メンバー
齊藤暁(宮崎大学 農学部獣医学科 准教授)
木村出海(東京大学医科学研究所 大学院生)
山岨大智(東京大学医科学研究所 博士研究員)
池田輝政(熊本大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター 准教授)
上野貴将(熊本大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター 教授)
高折晃史(京都大学 大学院医学研究科 教授)
佐藤佳(東京大学医科学研究所  准教授)



2.発表のポイント:
昨年末に南アフリカで出現した新型コロナウイルス「オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)」(注2)は、全世界に伝播し、現在のパンデミックの主たる原因変異株となりつつある。
オミクロン株は、「デルタ株(B.1.617.2, AY系統)」(注3)と比較して、治療用抗体製剤やワクチンによって誘導された中和抗体(注4)から逃避する。
オミクロン株は、ワクチンのブースター接種により誘導される中和抗体や、従来株やデルタ株に有効性を示す抗ウイルス薬によって感染が阻害された。
オミクロン株は、デルタ株とは異なり、TMPRSS2(注5)依存性経路よりも、カテプシン(注6)依存性経路による細胞侵入を好み、感染指向性が変化している可能性が示唆された。


3.発表概要:
東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤准教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」は英国の研究グループとの共同研究により、新型コロナウイルスの「懸念される変異株(VOC:variant of concern)」(注7)である「オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)」が、デルタ株と比較して、治療用抗体製剤やワクチンの2回接種によって誘導された中和抗体に対して抵抗性があることを明らかにしました。

一方で、3回目のワクチン接種(ブースター接種)によりオミクロン株に対しても有効な中和抗体を誘導できること、治療薬として用いられている抗ウイルス薬がオミクロン株に対しても高い効果を示すことを明らかにしました。

また、オミクロン株のスパイクタンパク質(注8)(図1)は、従来株やデルタ株と異なり、TMPRSS2依存性経路ではなく、カテプシン依存性経路による感染を好むことを明らかにしました。
本研究成果は2022年2月1日、英国科学雑誌「Nature」オンライン版で公開されました。



4.用語解説:
(注1)研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」
東京大学医科学研究所 システムウイルス学分野の佐藤准教授が主宰する研究チーム。日本国内の複数の若手研究者・研究室が参画し、研究の加速化のために共同で研究を推進している。現在では、イギリスを中心とした諸外国の研究チーム・コンソーシアムとの国際連携も進めている。
(注2)オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)
新型コロナウイルスの流行拡大によって出現した、顕著な変異を有する「懸念すべき変異株(VOC:variant of concern)」のひとつ。現在、日本を含めた世界各国で大流行しており、パンデミックの主たる原因となる変異株となっている。
(注3)デルタ株(B.1.617.2, AY系統)
新型コロナウイルスの流行拡大によって出現した、顕著な変異を有する「懸念すべき変異株(VOC:variant of concern)」のひとつ。オミクロン株の出現まで、パンデミックの主たる原因となる変異株となっていた。また、日本においては、昨年の第5波の原因変異株となった。
(注4)中和抗体
獲得免疫応答のひとつ。B細胞によって産生される免疫システムのことで、ワクチンによって誘導される。また、治療用抗体製剤として用いられている。
(注5)TMPRSS2
Ⅱ型膜貫通型セリンプロテアーゼ(transmembrane protease, serine 2)の一種で、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を切断することで、膜融合による宿主細胞への侵入を促進する。TMPRSS2依存性のSARS-CoV-2感染を阻害する薬剤としてCamostatやNafamostatが知られている。
(注6)カテプシン
システインプロテアーゼの一種で、カテプシンBやカテプシンLがSARS-CoV-2感染を促進することが報告されている。カテプシン依存性のSARS-CoV-2感染を阻害する薬剤としてE64Dが知られている。
(注7)懸念される変異株(VOC:variant of concern)
新型コロナウイルスの流行拡大によって出現した、顕著な変異を有する変異株のこと。現在まで、アルファ株(B.1.1.7系統)、ベータ株(B.1.351系統)、ガンマ株(P.1系統)、デルタ株(B.1.617.2, AY系統)、オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)が、「懸念される変異株」として認定されている。伝播力の向上や、免疫からの逃避能力の獲得などが報告されている。多数の国々で流行拡大していることが確認された株が分類される。
(注8)スパイクタンパク質
新型コロナウイルスが細胞に感染する際に、新型コロナウイルスが細胞に結合するためのタンパク質。現在使用されているワクチンの標的となっている。



▽詳細はこちらから▽
・プレスリリース 2022/2/3
https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20220203_02_press.pdf

・研究者データベース
 齊藤 暁 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100002260_ja.html

・宮崎大学農学部獣医微生物学研究室
 https://miyazakivetmicro-lab.jimdosite.com/

Altered TMPRSS2 usage by SARS-CoV-2 Omicron impacts tropism and fusogenicity_Nature

*新型コロナウイルス感染症COVID-19は、動物由来の感染症であると言われています。
 医学獣医学総合研究科のある宮崎大学では、「獣医学」から見た"ヒトへの感染症"の研究がしやすい環境が整っています。
 東進ハイスクール×宮崎大学「AI×農業・医学×獣医学!?分野を超えた学びに迫る!」【6分】

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