ニュースリリース
2022年06月03日 掲載
明治大学農学部の新屋良治准教授、宮崎大学医学部の菊地泰生准教授、米国カリフォルニア工科大学のPaul W. Sternberg教授らを中心とする研究チームは、マツ材線虫病の病原体であるマツノザイセンチュウとその近縁線虫注1)種Bursaphelenchus okinawaensis(以下、B. okinawaensis)2種の性がランダムに決まる可能性が高いことを明らかにし、その研究成果は、科学雑誌『Nature Communications』に掲載されました。
生物の性は、遺伝性決定(性染色体や性決定遺伝子などを起点として性が決まる)や環境性決定(温度や個体群密度など環境依存的に性が決まる)により決まることが知られてきました。しかし、本研究チームは今回2種の線虫において、染色体の観察や詳細なゲノム解析、さらには遺伝学解析などを行うことにより、発生ノイズ注2)が性決定に与える影響が大きいことを明らかにしました。
本研究は、主として発生ノイズにより性が決定される「ランダム性決定」が遺伝性決定や環境性決定に続く第3の性決定機構であることを示していて、本研究チームは、今回得られた知見を基にして、植物寄生性線虫注3)の性を人為的に操作し、寄生線虫病を制御することを目指しています。
■補足説明注1)線虫線形動物門に属する多細胞動物。動物や植物に寄生する寄生虫の1グループとしてよく知られています。多くの線虫は肉眼では見えないほどに小さく(1mm前後)、地球上で最も個体数や種数が多い動物群の一つであると考えられています。
注2)発生ノイズ同一のゲノムを持ち同じ環境で発生をした個体間でも、その表現型は個体間で異なる現象のことです。その原因は、遺伝子の発現制御、分化や細胞の運動などさまざまな過程での確率的・偶発的な振る舞いにあるとされています。
注3)植物寄生性線虫植物に寄生し、栄養を摂取する生活史を有する線虫グループ。これまでに4千種以上の植物寄生性線虫が報告されており、世界農業生産において毎年8兆円以上の被害を生じさせています。
▽詳細はこちらから▽・プレスリリース 2022/6/3 https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20220603_01_press.pdf
・研究者データベース 菊地 泰生 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100000981_ja.html
【原論文情報】Possible stochastic sex determination in Bursaphelenchus nematodeshttps://www.nature.com/articles/s41467-022-30173-2
▼参考:謎の寄生虫「芽殖孤虫」のゲノムを解読 -謎に包まれた致死性の寄生虫症「芽殖孤虫症」の病原機構に迫る-https://www.miyazaki-u.ac.jp/newsrelease/edu-info/post-652.html
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