平成29年度卒業証書・学位記・修了証書授与式告辞（平成30年3月23日）

春の息吹が胸いっぱいに感じられる中、平成29年度宮崎大学卒業証書・学位記ならびに修了証書授与式を行いますことは、大きな喜びであります。宮崎県副知事郡司行敏様をはじめ、ご来賓の皆様、卒業生・修了生ご家族の皆様、お忙しい中多数ご参列いただき心から御礼申し上げます。また、ご家族の皆様には、お喜びのことと拝察いたします。おめでとうございます。

本日は、学士課程においては教育文化学部２３６名、医学部１８０名、工学部３５９名、農学部２５６名の卒業生に卒業証書・学位記を授与することができました。
また大学院修士課程では教育学研究科２７名、看護学研究科１０名、工学研究科１３６名、農学研究科６９名、医学獣医学総合研究科９名に学位記を授与することができました。
博士課程では医学獣医学総合研究科博士課程１８名、農学工学総合研究科博士後期課程６名に学位記を授与することができました。
さらに、畜産別科３名に修了証書の授与ができました。
以上総計１，３０９名の卒業生・修了生を送り出すことになります。

この中には各国からの留学生の皆さんも含まれています。学士課程４名、大学院修士課程２２名、大学院博士課程１５名、合わせて４１名に卒業証書・学位記ならびに修了証書を授与することができました。言葉や習慣の違いを克服して、目的を達成された皆さんの努力に心から敬意を表します。

宮崎大学の国際交流は最近大きな広がりの輪となってきました。とりわけ世界に凶悪なテロの恐怖が広がり、欧米の政治不安が広がる今日、国は異なってもお互いを認め合いながら、ともに前進する国際交流の尊さが求められています。皆さんには、帰国の後も宮崎で育んだ学問と親交の絆を大切にそれぞれの母国と日本、宮崎との架け橋になってもらうことを期待します。

この冬、韓国でピョンチャンオリンピックが行われましたが、日本選手団の主将を務めた小平奈緒選手は、女子スピードスケートの500ｍで金メダル、1000ｍで銀メダルを獲得するなどの大活躍で、全国の人々の注目を浴びました。小平選手の金メダル獲得後のインタビューも、素晴らしい内容でした。その中でも「金メダルは名誉、でも生き方が大事」というコメントは多くの人々の心を捉えました。

報道によると小平選手は、長野県茅野市出身で小さい頃からスケートにあこがれ努力を積み重ねてきたそうです。地元信州大学の結城匡啓教授の指導を受けるために、勉強して信州大学に進学してスピードスケートの理論と実践を磨きます。大学時代にすでにわが国の第一人者に成長しましたが、卒業後は地元の相澤病院に職を求め、引き続き結城教授の指導を受けながらさらに現役の選手として、スポーツ理論と実践を深めます。

その結果、ピョンチャンでは選手団の主将という重圧にもかかわらず、みごとに結果を出し目的を達成しました。地元信州の地を離れることなく、世界を目指し、飛び立った訳です。

また同じピョンチャンオリンピックで女子カーリングチームが銅メダルをしたことも、私たちに大きな感動を与えました。帰国して、北海道女満別空港に降り立ったチームは地元の大歓迎を受けました。北見市の常呂町で練習に励み、今回の快挙を成し遂げた、吉田知那美選手は故郷の常呂町に帰り「この町にいてもカーリングの夢はかなわないと思っていた。でも今はこの町にいたから夢がかなったと思う。」と感謝の言葉を述べています。

いずれの選手も地方の町に根差した活動を続けながら、世界にはばたくという目的をしっかり掲げ、自己管理を行い、努力を重ねた結果だと述べています。

地方に位置する宮崎大学に学んだ年月を大切にして、しっかり目標を立てて、これからの人生を歩んでもらいたいと思います。ＩＴ技術や交通の進歩により、世界との時間的な距離はどんどん短くなっています。日本中どこにいても世界各地に直結した活躍が益々可能になってきています。ピョンチャンオリンピックで活躍した小平、吉田の両選手の生き方に学ぶべきところは多いと思います。

さて、皆さんもご存じの上杉鷹山は1751年日向高鍋藩主秋月種美の次男として江戸藩邸に生まれている宮崎ゆかりの人物であります。上杉鷹山は15歳で米沢藩上杉家の藩主となりましたが、藩の財政立て直しのため、自ら先頭に立って倹約に務めたと言われています。しかしながら、厳しい倹約を進める一方で、積極的な地域の産業振興策も展開しています。漆の木や和紙のもとになる楮、養蚕に必要な桑の木の植樹などです。時間をかけて辛抱強くこれらのことを行った結果、領内は次第に落ち着きを取り戻したということです。

縁あって宮崎大学に学び、社会に出て行く皆さんの社会人としての成長と発展を願わない人は一人もいません。しかしながら皆さんには耐えなければならない時も、あるいは積極的に打って出なければならない時もあろうかと思いますが、日向高鍋藩ゆかりの上杉鷹山の人生も時には参考にして、生き抜いてもらいたいと思います。

卒業おめでとうございます。

平成30年3月23日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宮崎大学長　池ノ上　克