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2021年年頭の挨拶(令和3年1月4日)

2021年年頭の挨拶

 皆様、明けましておめでとうございます。昨年は、新型コロナウイルスで始まり、 新型コロナウイルスに終わった1年間でした。感染のパンデミックによって、私たちは大きな打撃を受け、社会が疲弊して暗い影が落ちています。宮崎大学の皆さんには移動の自粛を強く求め、手洗い、マスク、3密回避の重要性の意識を再度高めるように求めて、年末年始に起こる感染拡大のリスクを乗り切るようにお願いしました。皆様のご協力に感謝申し上げます。

 昨年24日に横浜港に停泊中のダイヤモンドプリンセス号の乗客から、新型コロナウイルスのPCR検査陽性が確認されたとの情報が流れたことを受けて、宮崎大学では2月10日に第1回の新型コロナウイルス危機管理対策委員会を立ち上げ、学内での感染拡大防止に入りました。まずは学内に手洗い場を増設し、53の水道蛇口を新たに設置しました。そして皆さんに機会あるごとに手を洗うよう勧めました。このことはブダペストの産婦人科医ゼンメルワイスが示した、人々の手が病原体の拡散に強く関連するとの歴史的な教えに基づくものです。加えて安全衛生管理センターの医師3人はキャンパス内のパトロールを始め直接指導に当たりました。マスクを着用し、お互いの距離を保つこと、特に食堂での感染防止に必要な対策を直接指導するなど、個人衛生を守るための厳しい情報発信を続けました。また、講義を遠隔方式やハイブリッド方式にすることや、教職員や学生の多くのサポ―トをいただきながら講義室の換気や消毒作業の徹底などをお願いしました。

 また、安全衛生管理センターでは医師による健康や心理面に関する相談業務を充実してもらい、感染が疑われる場合には保健所でのPCR検査を受けるように指導しました。

 その後も連休や夏季休暇など感染拡大のリスクが増える期間には、緊張感をもって臨みましたが幸いにも学内感染によるクラスターは確認されず、今日に至っています。

 新型コロナウイルス感染症に対する予防や治療法が確立されるまでは、手洗いを励行し、三密を避けて社会的距離を保ち、マスクを着用することなどをしっかり守って行くとともに、心理面でのケアについてもしっかり対応をしていきたいと思っています。

 世界的な細菌学者北里柴三郎は、当時猛威を振るっていた結核について、1913年に「結核退治絵解」を表して一般大衆への解りやすい啓発活動を行ったことが北里研究所に資料として保存されています。

 解説文の一部をそのまま抜き書きしてみますと、まずは「結核は怖くもあり、怖くもなし」と述べ、さらに、「喀痰が乾けば空気中に菌が飛びます。咳をすれば飛沫します。多人数の手で触れたものは危険です。客室や賑わう部屋に一番近いところを居間や病室にしたり、部屋の周りをガラス張りで2重にするのはよくない。密集雑居、過労や不摂生。煤煙と塵埃。喀痰、咳嗽は手巾又は紙片で受けて乾かぬ前に焼くか煮る。食事の前には手を洗う。食器を定めて置き煮たててからでなければ他人の物を混同せぬ。家具や衣服は各人定めて置く。体操運動戸外の遊戯」などの文章がみられます。当時の表現による絵解き文なので違和感のある部分もありますが、現在われわれが直面している新型コロナウイルス感染防止についても、充分参考となることが細かく挙げられています。感染防止の基本は今でも同じであることがよく分かります。

 これまで人類は、感染症のパンデミックに何回も遭遇したことを歴史は教えてくれています。そのたびに人々は英知を絞って対応してきました。1795年当時の上杉藩を襲った疫病である痘瘡への取り組みは多くの人々に高く評価されています。宮崎の高鍋藩にゆかりが深く、アメリカのケネディ大統領やフランスのクレマンソー首相など世界の政治家たちから尊敬され、歴史上の名君といわれている上杉鷹山のとった施策です。痘瘡の流行が藩内に起こり始めた時、家族内に感染者がいても藩の行政官には出勤の許可を出して、藩の行政が滞るのを防ぎ、人々の生活支援を積極的に進めています。当時の米沢藩の医療知識のレベルは高く、医療体制への画期的な支援も行われています。これらの事実は宮崎県民として誇りに思うところです。

 イタリアのボロ―ニア大学は1088年に正式に創立されましたが、それ以前から若者たちがそれぞれに集まって町の識者から学ぶ習慣があったことから、ヨーロッパ最古の大学といわれています。ボロ―ニアの町の人々の間には「困難に直面したら歴史に学べ」ということが、今なお言い伝えられているそうです。まさに今回の新型コロナウイルスの感染拡大防止でも歴史に学び、基本的な生活習慣を今一度見直して、新しい年を乗り切っていきたいと思います。

 宮崎大学では本年もこれまで通り、地域に貢献し、地域を活性化する大学としての役割を果たしながら「世界を視野に地域から始めよう」の本学のスローガンを推し進めていきたいと思います。

 今年もどうぞよろしくお願いします。

令和3年1月4日
宮崎大学長 池ノ上 克

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