宮崎大学
ニュースリリース

環境保全型の農業システムの構築に関する研究成果が発表されました

2021年08月19日 掲載

地域資源の有効利用を通じた環境保全型の農業システムの構築に関する研究成果が発表されました。
水稲作と肉牛生産をバイオガス生産により結び付けた複合システムにより、地球温暖化の一因である温室効果ガス排出量の削減と環境負荷低減効果が期待されます。
本研究成果は、「Journal of Environmental Management」電子版で公開されました。
論文の発表者には農学部畜産草地科学科川島 知之教授が含まれています。



ベトナム・メコンデルタで温室効果ガス削減効果を評価
― 水稲作と肉牛生産の複合システムによって22%削減可能 ―

<発表のポイント>
●水稲作と肉牛生産をバイオガス生産により結び付けた複合システムは、それぞれを単独で行う従来のシステムに比べて温室効果ガス排出量を22%削減可能
●この複合システムは、エネルギー消費量の削減、地域の環境負荷低減にも効果
●地域資源の有効利用を通じた環境保全型の農業システムとして、水稲作の盛んなアジアモンスーン地域での展開に期待

国際農研は、農研機構、宮崎大学、ベトナム・カントー大学と共同で、メコンデルタ農村地域において、地球温暖化の一因である温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gases)排出量の削減と環境負荷低減の効果をライフサイクルアセスメント(LCA:Life-Cycle Assessment)1)により評価しました。
ベトナム南部の農村地域では、水稲作と肉牛生産をそれぞれ単独で行う専業システムが一般的です。しかし、専業システムによる営農活動は、地域資源が有効に活用されず、環境に負荷を与えている可能性があります。研究グループは、水稲作と肉牛生産にバイオガス2)生産を組み合わせた複合システムが、専業システムと比較して、GHG排出量を22%削減できることを明らかにしました。また、バイオガス利用によりエネルギー消費量も22%削減でき、家畜ふん尿に由来し、河川等の水質へ影響を及ぼすアンモニアなどの排出量を14%低減できることもわかりました。
ベトナムを含むアジアモンスーン地域は、メコンデルタと同様に水稲作主体の農業が重要な産業です。近年、経済発展に伴う食肉など畜産物の需要も高まっており、今後は、水稲作・肉牛生産複合システムが、アジアモンスーン地域で取り入れられることにより、GHG削減目標の達成に貢献することが期待されます。
本研究成果は、「Journal of Environmental Management」電子版(日本時間2021年6月8日)に掲載されました。

【用語の解説】
1) ライフサイクルアセスメント(LCA):ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境への影響を定量的に評価する手法。
2) バイオガス:バイオ燃料の一種で生物の排せつ物、有機質肥料、生分解性物質、汚泥、汚水、ゴミ、エネルギー作物などの発酵、嫌気性消化により発生するガス。例えば、家畜ふん尿や食品廃棄物などを利用して、気密性の高い発酵槽で生産される。メタン、二酸化炭素が主成分。

研究担当者:国際農研 農村開発領域 泉 太郎
      農研機構 畜産研究部門 荻野 暁史
      宮崎大学 農学部 川島 知之



プレスリリース(2021.8.19 14:00)
https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20210819_01_press.pdf



20210819_01_01.jpg

図.専業システムと複合システムの比較

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