宮崎大学
ニュースリリース

医学部附属病院で"網膜色素変性に対する遺伝子治療" の医師主導治験が実施されました

2022年01月27日 掲載

 医学部附属病院において、網膜色素変性(以下、色変と略)に対する遺伝子治療の医師主導治験(治験調整医師:医学部医学科眼科学分野 池田 康博 教授)における被験者への投与が、令和4117日に実施されました。

 色変は、網膜に存在する光を感じる細胞(視細胞)が徐々に失われていく遺伝性の病気で、約5千人に1人の頻度で見られ、失明に至る可能性もありますが、現状は有効な治療法がなく、厚生労働省から難病と指定されており、患者さんは失明の不安を抱えて日常生活を送っています。

 今回の医師主導治験で安全性と有効性が確認され、治療薬としての開発に繋がれば、患者さんの失明防止に向けた大きな一歩になると考えられます。

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宮崎大学医学部附属病院における
網膜色素変性に対する遺伝子治療の医師主導治験実施について

■発表者名
池田 康博 (宮崎大学 医学部医学科感覚運動医学講座眼科学分野 教授)

■発表の背景
色変は、網膜に存在する光を感じる細胞(視細胞)が徐々に失われていく遺伝性の病気です。約5千人に1人の頻度で見られ、青年期より発症し、やがて失明に至る可能性があります。すでに80種類以上の遺伝子異常が原因として明らかになっていますが、現状は有効な治療法がなく、厚生労働省から難病と指定され、公費負担の対象となっています。
本医師主導治験では、この難病に対して遺伝子治療という新しい治療法を応用しました。神経栄養因子であるヒト色素上皮由来因子(hPEDF)の遺伝子を搭載したサル由来レンチウイルス(SIV)ベクター(SIV-hPEDF:開発コードDVC1-0401)を色変患者さんの網膜に注射し、神経栄養因子の視細胞保護作用により、視細胞の喪失を防ぎ、視力の悪化を防ぐというコンセプトになります。眼科における遺伝子治療の治験は、国内はもとよりアジアでは例がなく、本治験が初めての試みでした(2019年当時)。
本医師主導治験(「DVC1-0401網膜下投与による網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療の第I/IIa相医師主導治験」)は、日本医療研究機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業ステップ1(2015〜2017年度)ならびにステップ2(2018年度〜)の研究費により開発を進められており、またAMED 橋渡し研究戦略的推進プログラムにおいて革新的医療技術拠点に選定された九州大学の支援基盤を活用し、治験届を2019年1月に提出していました。2019年6月に、九州大学病院にて第1症例目となる被験者にDVC1-0401が投与されており、2020年7月に宮崎大学医学部附属病院が治験実施施設として追加登録されていました。

■発表内容
治験製品であるDVC1-0401の網膜下投与の安全性を検討すること、および視機能障害の進行抑制効果を評価することが、本医師主導治験の目的となります。プロトコールでは、3つのステージ(低用量、中用量、高用量)において各4名の被験者に治験製品が投与されますが、本被験者は第11症例目(高用量3症例目)で宮崎大学医学部附属病院では第1症例目となります。被験者は、治験製品投与後の状態が落ち着いたため、1月28日に退院する予定です。今後は外来にて、注意深く経過観察していく予定となっています。
色変は、現在有効な治療法がなく、患者さんは失明の不安を抱えて日常生活を送っています。今回の医師主導治験で安全性と有効性が確認され、治療薬としての開発に繋がれば、患者さんの失明防止に向けた大きな一歩になると考えています。また、治験製品であるDVC1-0401は株式会社IDファーマ(茨城県つくば市)が開発した国産ウイルスベクターで、本邦における保険医療分野に果たす役割は大きいと考えています。

■今後の展開
最終的には12名の被験者に治験製品を投与する予定で、あと1名の被験者への投与が終了すると、1年間の経過観察を経て、本医師主導治験は終了となります。次相(第IIb相)の治験を実施し、最終的には遺伝子治療薬として薬事承認を目指す予定となっています。

・プレスリリース 2022/1/27
https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20220127_01_press.pdf

・研究者データベース
池田 康博 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100002223_ja.html

・宮崎大学医学部眼科 http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/ophtha/

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