宮崎大学
ニュースリリース

新型コロナウイルス感染症流行による自殺の理由の変化が明らかに ー自殺者の増加に歯止めを!ー

2022年02月01日 掲載

 医学部医学科精神医学分野 香田将英助教らの研究グループによる新型コロナウイルス感染症流行による自殺の理由の変化に関する研究成果が発表され、2022年1月31日 (米国中部時間午前10時00分) に医学雑誌「JAMA Network Open」に掲載されました。
 本研究成果は、適切な自殺予防策および政策を見つけるための新たなデータを提示する社会的意義が大きいものであり、コロナ下における精神的負荷の増大と自殺者数の増加に歯止めをかける一助となることが期待されます。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

コロナウイルス感染症流行による自殺の理由の変化が明らかに
国内データベースを用いた時系列分析自殺研究

1.発表のポイント
警察庁が集計し厚生労働省が公開している自殺統計のデータを用いて、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 流行が日本で起きた2020年1月から2021年5月と、流行以前の日本における自殺の理由の変化について分析を行った。
自殺統計原票に基づく、自殺の理由に関する7つの大項目 (家庭問題、健康問題、経済・生活問題、勤務問題、男女問題、学校問題、その他) の全てで超過死亡のある月を認めた。52つの小項目の分析から、男性では主に仕事のストレスや孤独感、女性では家庭・健康・勤務問題を動機とした自殺が増加しており、自殺の理由が男女で大きく異なった。
本研究成果は、COVID-19流行後から認められた自殺者数の増加、特に女性の増加に対して、どのような理由が増加したかを明らかにすることで、性別ごとに適切な自殺予防策および政策を見つけるための新たなデータを提示するものである。

2.発表者:
香田 将英:宮崎大学医学部臨床神経科学講座精神医学分野
原田 奈穂子:宮崎大学医学部看護学科統合臨床看護科学講座精神看護学領域
野村 周平:慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
江口 哲史:千葉大学予防医学センター環境健康学分野
石田 康:宮崎大学医学部臨床神経科学講座精神医学分野

3.発表概要
COVID-19流行が始まって以来、それまで減少傾向にあった日本の自殺者数は増加に転じた。香田 (宮崎大学) 、原田 (宮崎大学) 、野村 (慶應義塾大学) 、江口 (千葉大学) 、石田 (宮崎大学)らの研究グループは、2020年1月から2021年5月と、流行以前の日本における自殺の理由の変化について分析を行った。
警察庁が集計し厚生労働省が公表している自殺統計データを用いて分析を行った。例年に比べて統計学的に自殺者数が増えている場合を超過死亡と判定した。分析期間中の自殺者総数は29,938人であり、その内理由が判明したのは21,027人 (13,612人[64.7%]が男性) だった。7つの大項目 (家庭問題、健康問題、経済・生活問題、勤務問題、男女問題、学校問題、その他) の全てにおいて、超過死亡のある月が認められた。最も高い超過死亡割合[1]を認めた月は2020年10月の25.8% (男性6.1%、女性60.8%) だった。
小項目別では、男性は「経済・生活」で失業 (超過死亡割合の範囲[2]:42.9%) 、「勤務」で仕事の失敗 (3.4-6.9%) 、仕事疲れ (2.0-34.1%) 、職場の人間関係 (18.6%) 、職場環境の変化 (8.3%) 、「その他」では孤独感 (7.4-25.0%) 、後追い (14.3%) 、犯罪発覚等 (4.5%) で主に超過死亡が見られた。
女性では、「家族問題」で親子関係の不和(4.2-4.5%)、夫婦関係の不和(4.3- 39.1%)、その他の家族関係の不和(6.2-7.1%)、子育ての悩み(22.2-40.0%)、介護・看病疲れ(25%)、「健康問題」で身体の病気(15.4%-20.4%)、うつ病(15.1%-34.2%)、統合失調症(26.1%)、アルコール依存症(45.5%)、その他の精神疾患(18.6%)、「学校問題」では学友とのトラブル(60%)、「その他」では後追い(12.5%)などで主に超過死亡が見られた。
本研究によって、COVID-19後の自殺の理由は、性別で異なることが明らかになった。本研究成果は、COVID-19流行後から認められた自殺者数の増加、特に女性の増加に対して、どのような理由が増加したかを明らかにすることで、性別ごとに適切な自殺予防策および政策を見つけるための新たなデータを提示するものである。

[1] 推定には準ポアソン回帰モデルであるFarringtonアルゴリズムを用いた。片側95%信頼区間の上限値を超えた場合に超過死亡とし、上限値との差から超過死亡割合を求めた{(実測値−上限値) /上限値 (%)}。大項目は、過去5年間の同月およびその前後月の自殺者数と同様の状況が続くと仮定した場合の推定値を算出し、2020年1月以降の実際の自殺者数が推定値とどの程度異なるかを検証した。小項目は利用可能な月次データが2019年1月からのみのため、過去1年間のデータを用いて同様に分析を行った。
[2] 複数月で超過死亡を認めた場合は、(最小値-最大値) で超過死亡割合を記載した。



▽詳細はこちらから▽
・プレスリリース 2022.2.1
 https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20220201_01_press.pdf


・研究者データベース
 香田 将英 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100002022_ja.html
 原田 奈穂子 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100001685_ja.html
 石田 康 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/375_ja.html


・宮崎大学医学部臨床神経科学講座精神医学分野
 http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/psychiatry/

Get ADOBE READER

PDFファイルをご覧いただくためには、Adobe Reader(無償)が必要です。
Adobe Readerは Adobe Readerのダウンロードページよりダウンロードできます。

文字サイズ 標準 拡大


PAGE TOP

宮崎大学
MENU CLOSECLOSE