宮崎大学
ニュースリリース

成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)に関する研究成果が発表されました

2021年09月06日 掲載

成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)に関する研究成果が発表されました。
本研究成果は、難治性疾患であるATLの診療に役立つことが期待され、米科学誌「Blood Cancer Discovery」に掲載されました。
論文の発表者には医学部内科学講座血液・糖尿病・内分泌内科学分野 下田和哉教授が含まれています。



成人T細胞白血病リンパ腫の多段階発がん分子メカニズムを解明
-難治性疾患の新規治療標的候補を複数同定-

<発表のポイント>
〇 単一疾患としては最大規模の臨床検体を用いて、最新技術である単一細胞マルチオミクス解析(注1)を実施した。
〇 ひとつひとつの単一細胞から網羅的なmRNA発現データのみならず、100種類を超える細胞表面マーカー発現データや、T/B細胞受容体レパトア情報を得られる技術を駆使し、ウイルス発がんの病態に迫った。
〇 成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の原因ウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染細胞を正確に同定可能で、従来の解析では不可能だった細胞群で発現解析を可能とした。
〇 その結果、新たなHTLV-1感染マーカー、ATL進展マーカーを複数同定し、新規の治療標的候補となりうることを実験的にも証明した。
〇 本研究の網羅的解析により、HTLV-1感染やATLへの進展に伴う免疫微小環境(注2)の変化や、腫瘍細胞の遺伝子異常(注3)による微小環境の変容など、さまざまな事象が明らかとなり、今後のATL病態研究、ウイルス発がん研究の新たな方向性を提示した。

<概要>
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)研究所 分子腫瘍学分野 古屋淳史主任研究員、斎藤優樹任意研修生、慶應義塾大学医学部内科学教室(血液) 片岡圭亮教授(国立がん研究センター分子腫瘍学分野 分野長を兼任)らの研究グループは、宮崎大学医学部内科学講座血液・糖尿病・内分泌内科学分野 下田和哉教授、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座 小川誠司教授らと共同で、最新技術である単一細胞マルチオミクス解析を用いて、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染を原因とする成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の多段階発がん分子機構を解明しました。 
本研究結果は2021年9月3日(米国東部時間)に米科学誌「Blood Cancer Discovery」に掲載されました。今回の研究の主な成果は以下の点です。
(1)世界的にも最新の技術である単一細胞マルチオミクス解析を用いて、HTLV-1感染を原因とするATLの多段階発がん分子機構を解明しました。
(2)HTLV-1感染細胞を単一細胞レベルで正確に同定し、HTLV-1感染細胞のクローン拡大およびATLへの進展に伴う細胞動態の変化を分子レベルで網羅的に明らかにしました。その過程で、新たなHTLV-1感染関連分子やATL進展関連分子を複数同定し、新たな治療標的候補となりうることを実験的にも証明しました。
(3)HTLV-1感染やATL発症に伴う免疫微小環境の変化、そして腫瘍細胞の遺伝子異常による微小環境の変容などのさまざまな事象が、多くの機能解析実験と組み合わせることで紐解かれました。
これらの成果は、HTLV-1感染からATLへの進展に至るまでの非常に長い期間における多段階の発がん分子機構を網羅的に明らかにした初めての研究であり、新たに同定した感染や腫瘍化に関連する分子や、免疫環境動態の変化は診断のためのバイオマーカー(注4)や新しい治療標的にもなり得るため、難治性疾患であるATLの診療に役立つことが期待されます。
本研究は、日本医療研究開発機構 新興・再興感染症研究基盤創生事業(多分野融合研究領域)・日本医療研究開発機構 革新的がん医療実用化研究事業・日本医療研究開発機構 次世代がん医療創生研究事業・日本学術振興会 科学研究費助成事業・国立がん研究センター 研究開発費研究事業・公益財団法人 武田科学振興財団 武田報彰医学研究助成・公益財団法人 内藤記念科学振興財団 内藤記念科学奨励金・NPO法人白血病 研究基金を育てる会 公益信託日本白血病研究基金の支援を受けて行われました。



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<用語解説>
注1:単一細胞マルチオミクス解析
ひとつひとつの単一細胞から網羅的な手法を用いてmRNA発現や細胞表面マーカー発現などさまざまなデータを得ることのできる新規技術。
注2:免疫微小環境
腫瘍組織やその周囲に混在する正常組織や免疫細胞を含んだ環境。さまざまな細胞・非細胞成分から構成され、腫瘍の進行に大きな役割を果たすことが知られている。
注3:遺伝子異常
遺伝子DNAに生じた異常。
注4:バイオマーカー
病気の変化や治療に対する反応に相関し、その指標となるもの。

プレスリリース(2021.9.6)
https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20210906_03_press.pdf

国立がん研究センター プレスリリース
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2021/0906_1/index.html

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