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Vol.3 「デザイン」や「アート」についての独断的考察

企業の方へ
2021.12.1

『お気に入りの本や音楽と旅するように、このコラムを読みながら地域を旅してもらいたい』。そんな気持ちのまにまに綴る、Capa+部門長コラム。(不定期で掲載します)

ロジカルな私が「デザイン思考」等について考えたきっかけ

私はかなりロジカルな人間です。データをベースとした分析に基づいて戦略を組み立て、理論的に説明し着実に推進する、そんな仕事を得意にしてきました。もちろん文学や音楽もとても好きですが、あくまでも個人的な趣味の世界のことです。

しかし最近、プロジェクトの構築や企業経営における「デザイン思考」や「アート思考」の重要性について考える魅力的な機会がありました。
県が主催する「森林産業オープンイノベーション創出事業」に参加して、武蔵野美術大学の3年生6名と、オンライン・対面でディスカッションしました。その中での彼らの発言には大きな特徴がありました。

~ディスカッションを通じて印象に残ったこと~
〇俯瞰的であること
 遠くから、高いところから、斜めの方向から等様々な角度から地域や産業の現状や課題を見つめる
〇表現力が極めて豊かであること
 自分の考えや課題認識を端的でかつ洗練された印象的な言葉で表現する
〇自分の中の悩みや迷いに正直であること
 現時点において答えを出せないことについてはその要因や自分の中での迷いについて真っすぐに表現する

このような思考方法や表現力をどう身につけるかについてその学生や担当の教授と意見交換をしました。
絵画や彫刻、写真等の表現の学びにおいて、「対象物をどう捉えたか」「何を伝えたいと考えたのか」「他者の表現から何を感じたのか」等々について徹底的に言語化し議論することを繰り返すとのことです。

ロジカル思考、デザイン思考、アート思考について

ロジカル思考は、その名の通り論理的に考えることで、誰もが(あるいは多くの人が)納得できる結論を導くのに適していると言われます。一方、デザイン思考は、物事の意味を問い直しながら社会の課題を解決する創造的な手法と言われます。そして、アート思考は、自分なりの考えで、課題・問題とは何かから問い直していくものと言われます。
・・・と、一般的に言われていることで分類するとこのようになります。しかし大事なのは、VUCA(※)の時代=先行きが不透明な時代にあっては、これまで延長線上で過去の事例、データの解析に基づいて対応策を組み立てるだけでは十分ではなく、「なぜこのような課題があるのか」「なぜそれを課題と感じるのか」「自分にとって或いは社会にとって幸せな状態は何なのか」等の問いを立て、俯瞰的に見つめ、自分なりの答えを創造していく力が求められているということだと思います。

※「VUCA(ブーカ)」とは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなぎ合わせた言葉。

STEAM人材について

将来の日本のためにはSTEAM人材が必要と言われています。以前はSTEM人材という表現でした。Artの「A」が加わったのは、社会課題の解決や豊かな未来の実現のためには、創造性・芸術性が求められるという点がより強く認識されたということを意味します。

SDGsの背景となっている世界的な課題の山積など、大きな転換期にあるこの時代において、宮崎の或いは日本の将来を支える人材を育成するミッションを担っている大学で、いかに自由な問いを立て、創造的な解を導き出し、そして豊かに表現し、協働して実現していく人材がたくさん育つか、私たちはとても大切な場所にいるのだと改めて思います。

文:永山 英也 Nagayama Hidenari
  Capa+部門長/宮崎大学長特別補佐

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