大学案内
新年明けましておめでとうございます。皆様、穏やかな新年を迎えられたことと心からお慶び申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
一年の計は正月にあり、と云います。私自身はマンネリや因習に陥ることなく、多くの点において維新・一新して、さまざまなことにチャレンジする一年にしたいと思っています。
昨年来、日本では与野党勢力の逆転、アメリカの政治でも第2次トランプ政権への移行と上下院共和党政権、ヨーロッパ各国の政局不安定などがありました。直近でも、韓国の政情不安、またシリアの大統領国外脱出などがあり、これらを俯瞰すると世界中で極めて大きな転換期を迎えつつあります。このような大転換の時代だからこそ、歴史に徴して現代を学び、しっかりとしたビジョンを持つことが大切です。
近代大学の始まりであるイタリア、ボローニャ大学(1088年設立)のボローニャ方式第一の要諦には「困難にぶつかったら過去・歴史に学ぶ」とあり(井上ひさし、ボローニャ紀行、文藝春秋)、また、「愚者は経験に学ぶ、賢者は歴史に学ぶ」という諺もあります。そこで人間の長い歴史と経験の集大成の一つである干支を参考に、昨今の動向を調べてみました。
2025年は「乙巳、いつし」、「きのと・み」です。「乙」は抽象文字で、昨年出した芽がまだ弱く、外部の抵抗で真っすぐ伸びていない状況、また「巳」は蛇の象形文字で、ぼつぼつ冬眠を終えて地上の新しい活動を始めようとするの意、とあります(安岡正篤、干支の活学、プレジデント社)。したがって「乙巳」は、現在は外部からの抵抗が強く伸びていないけれども、従来の因習から抜け出し、弾力的、創造的な発展を目指すことで新しい活動が進むことを意味しています(同上)。
この中で、外部の抵抗や従来の因習に関しては、個々の立場によってさまざまな見方、見解があるでしょう。それらの想定される障害などを打ち破り、『弾力的、創造的な発展を目指すことで新しい活動が進む』とは、とても明るい未来予想図を示していると言って良いでしょう。そのためには、繰り返しになりますが、まず、「想定される、あるいは出現しつつある」障害を打ち破り、その上で柔軟な発展を目指すことが肝要です。
世界的には、地球温暖化と異常気象、人口問題と食料問題、世界各地で勃発する紛争と貧困問題、環境問題等々と多くの重大課題が表出しています。これらの世界的問題に潜む障害を打破し、弾力的、創造的な発展を目指すために、われわれ宮崎大学はどうあるべきか、どこに向かうべきか、皆で方向性を共有し、協力して進んでいく必要があります。このような課題を念頭に置き、大学のモットーである、「世界を視野に、地域から始めよう」が今、求められています。
さて、今年の具体的な動きについても少し言及します。まず喫緊の課題として、第4期中期目標・計画の4年目に入り、その中間評価に向けた準備が必要となります。重要課題としていくつか列挙します。
第一に、当初設定した11のミッション実現戦略について中間評価し、実行レベルや他の外部資金状況を鑑みて見直します。また社会的インパクトとしてのケーススタディに向けた取りまとめにも着手する必要があります。担当部局には準備等、よろしくお願いします。ミッション実現戦略の社会的インパクトは、将来の第5期中期目標・計画にも大きく関わることですので、全学出動体制でやり抜きましょう。
第二に、SPARC事業、世界展開力事業、錦本町ひなたキャンパス活動、地域中核・特色ある研究大学振興強化事業、先端研究推進本部を中核としたフロンティア科学総合研究センター、産業動物防疫リサーチセンター(CADIC)、GX研究センターの総合的な活性化、国際機構の活性化など、第4期中期目標・計画の中核となる事業をいよいよ最盛期に向かうべく発展させる必要があります。それぞれ担当部局はもちろん、関連する部局も融合し、一緒に力を合わせて推進させて下さい。
さらに、体制面と経営面から、大学運営基盤の強靱化が必要です。体制面では、宮崎県内の高等教育コンソーシアムが一般社団法人化し、その中で、地域の高等教育を支え、発展させるための色々な取り組みが求められます。宮崎大学は県内の高等教育機関の中核的組織であるという認識の上で、教育に関するさまざまな問題に対応し主導する役割を果たしていく所存です。並行して、複数の国立大学法人との柔軟で緩やかな連携と、それに続く一般社団法人化も視野に入れて、基盤強化を進めたいと思います。
経営面では、第4期期間中の運営費交付金の増加がほとんど見込めない以上、外部資金の獲得に向けた努力と、産官学連携のさらなる強化が必須です。同窓会や宮崎大学基金の強化も重要です。国立大学法人の教職員は大学運営、経営を自分事としてとらえ、個々人レベルの工夫もお願いします。
また、大学基盤としては、正式な構成員である学生の活動も極めて重要です。学生諸君の活動は、教育、研究、社会貢献、スポーツや芸術文化への取り組みなど、いずれをとっても大学への貴重な貢献であり、未来への飛躍を内包するものであり、地域社会にとってなくてはならないものです。その意味からも、学生一人ひとりの取り組みを教職員も支援したいと思います。大学の構成員としての学生各位の個性的発想に基づく頑張りに期待しています。
大学の本分は教育、研究、地域貢献です。それを実施するにあたり、自由・自律の精神を持つことは必須であり、若手教職員と将来を担う学生にその精神を引き継ぎ、さらに教育、研究を楽しむ文化を醸成することが求められています。学生を愛し、学生から愛される大学、そして、宮崎を愛し、地域から評価される大学を目指します。地元から評価されない大学は生き残れない、という認識を共有することが重要です。
世界が大きく動く中、日本も宮崎も宮崎大学も大きな影響を受けます。干支に戻ると、外部からの障害によって計画が伸びていない状況があるとしても、弾力的な工夫によって障害を打破して推進すると明るい未来を得ることができる、そういう年です。社会の流れと、時代の要請を真摯に受け止め、明るい未来を目指して頑張っていきたいものです。
本年が、皆様にとっても、宮崎大学にとっても、そして宮崎の地域全体にとっても素晴らしい1年になりますよう祈念して、仕事始めの挨拶と致します。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2025年1月6日宮崎大学長 鮫島 浩
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