大学案内
本日ここに、学部卒業生、別科修了生、研究科修了生、関連各位をお迎えし、令和6年度の卒業式、学位記授与式を挙行出来ることを心から嬉しく思います。卒業生の皆さん、あらためまして、卒業おめでとう。宮崎大学を代表して、心から、祝福の言葉を贈ります。また、この日を待ち望んでおられたご家族はじめ、関係者の皆様も、さぞかしお喜びのことと存じます。重ねて、お祝い申し上げます。
今回、総計1,299名が卒業・修了を迎えました。学士課程では教育学部125名、医学部195名、工学部323名、農学部283名、地域資源創成学部82名に卒業証書・学位記を授与しました。大学院修士課程では教育学研究科17名、看護学研究科8名、工学研究科157名、農学研究科63名、地域資源創成学研究科8名、医学獣医学総合研究科6名に、そして、大学院博士課程では医学獣医学総合研究科博士課程18名、農学工学総合研究科博士後期課程13名に学位記を授与しました。さらに、畜産別科でも1名の修了生に修了証書を授与しました。
本日ここに卒業する1,299名の皆さんは、日本の最高学府である国立大学を卒業するという、大変な名誉をいただき、その上で、次のライフ・ステージに進むことになります。
皆さんが迎えようとしている社会情勢を眺めると、現在、日本、アメリカ、韓国の政治が大きく動き、同時にヨーロッパ各国の政治も不安定化しています。また、ウクライナ侵攻、ガザ侵攻、世界各地の武力衝突と、世界中で紛争が絶えません。さらに、AIを用いたICTの驚異的な進歩はわれわれの生活全般に大きな影響を与えつつあります。このように、われわれは歴史的な変革期にあることは確実です。この歴史的な維新を新社会人として迎える皆さんは、まさに、歴史の目撃者となることでしょう。そこで皆さんに、エールを込めて、いくつかのメッセージを送ります。
一つは、世界市民たれ、というメッセージです。世界を俯瞰すると、環境問題、貧困問題、人口増加問題、新興感染症など、どれひとつをとっても重要な課題であるとともに、これらは全てが連携して複雑に関与し合っています。われわれは、それを自分事として捉え、考え、対応することが求められています。そのための手段を、皆さんは既に、宮崎大学で学んだはずです。それは、自分の専門性を活かし、その活動を通して、人々の幸福に貢献するということです。
たとえ世界規模の問題であっても、その基盤にヒトの営みが関与している以上、問題の根本はわれわれの活動の積み重ねによって引き起こされています。したがって、皆さんが、世の中をよくしようと熱望する、そのひとつ一つの取り組みが、最終的には、世界規模の問題の解決に繋がる、と言えるでしょう。是非、自分の専門性の中で、世界市民としての視点を持って、できることから始め、世の中に貢献してください。
教育学部の卒業生は教育を通して、医学部の卒業生は医学を介して、農学部の卒業生は食と農林水産業の活性化をもとに、工学部の卒業生はその広い専門性の中で、そして地域資源創成学部の卒業生は地域に深く根ざすことで、すなわち自分の専門性を発揮することで、世界規模の問題の解決に向けて、一翼を担ってください。それこそが、宮崎大学のモットーである、「世界を視野に、地域から始めよう」の精神で活動する、世界市民です。さらに、マスターやドクターの卒業生は、その高い専門性と広い見識を十二分に発揮し、各界のリーダーとしての自覚のもと、様々な活動を主導していただきたいと思います。
そして、世界市民として活動するための必須の条件は、平和を維持することです。武力や経済による圧力、すなわちハード・パワーではなく、学問や文化、芸術活動を主体とするソフト・パワーを用いて、今後も、皆さんの手で平和をしっかりと維持してください。
もう一つのエールは、独創性を楽しもう、というメッセージです。大学では学問の自由が保障されてきました。この環境の中で、これまでの長い歴史によって培われ、研磨され、築きあげられてきた真理を、宮崎大学で味わうことが出来たと思います。これらの真理は、一見、古めかしく思えるかもしれません。しかし、全く「無」のところから独創的なアイデアが出ることはありません。必ず、何らかのつながり、連続性があります。大学で学んできたように、真理の一部を自分の視点で味わうことで、自分なりの個性、すなわち独創性、新規性が芽生えます。誰もが別々の個性を持っているように、個人の独創性もまた、千差万別です。独創性は、言い換えると、それぞれの個性に繋がる考え方、とも言えるでしょう。
物事を多面的に見て、自分の考えをまとめ、さらにもう一歩、二歩、三歩と深く考察することで、独創的な見方が浮かび上がってきます。大学生活の中で覚醒し始めた、それぞれの個性的な考え方、素晴らしい独創性を、これからの実社会で活かしてください。そのためには、社会で起きていることに対して、自分はどう考えるのかを常に問い続けることです。自分なりの見方の中に潜む独創性を大きく展開してください。
独創的なアイデアは、受け入れられることもあれば、受け入れられないこともあり、また、受け入れられても成功することもあれば、失敗することもあります。失敗することが多いかもしれません。「失敗したことのない人は、新しい挑戦をしなかったということである。」アインシュタインの名言です。失敗も含めて、独創性を楽しむこと、これが重要です。このようなレジリエントな精神が、人生を活き活きと生きる極意と言えるでしょう。
本日、皆さんは、大学生活に一応の区切りをつけ、新たなステージに出発します。卒業にあたり、「世界市民たれ」と「独創性を楽しもう」という二つのメッセージを贈りました。
最後に、記憶に留めてしていただきたいことをお伝えします。それは、皆さんのルーツはここ、宮崎大学にあるということです。140有余年に及ぶ本学の長い歴史の一ページに、皆さんの名前も、恩師や学友と共に刻み込まれます。宮崎大学はこれからも皆さんにとって学問の場であり、人生の軸であり続けます。母校の門戸は常に開放され、学び直しや学びがさねの機会が準備されています。この、歴史ある宮崎大学をルーツとして、様々なことにチャレンジし、大きな枝を伸ばし、人生の充実した果実を実らせて下さい。
結びに当たり、あらためまして、卒業を、そして人生の新たなスタートを心から祝福し、告辞といたします。
令和7年3月24日宮崎大学長 鮫島 浩
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